2023/11/06

ヨセミテで登りまくってきました〜!
プライベートツアーとしては、
2018年秋以来5年ぶりのヨセミテでした!
大学生のとき、クライマーになる前に観光で訪れたのが最初で、クライマーになってからは、
2012年、2013年、2016年、2018年と4回登りに来ています。
2019年にはカリマーの撮影ツアーでも来ました。
というわけで、今回で通算7回目となる、とっても思い出深い場所です。

タイやジョシュアツリーにも一緒に行っているYoutuber山岳医りょうくんと合流し、今回も1歳半になる息子を連れての家族遠征です。日数は全部で19日と短めでしたが、その半分も登れない覚悟をして行ったのに、りょうくん、途中合流した父をはじめ、Camp4にいたたくさんの友人たちに手厚く支えてもらい、お陰様で10.5日ほども登らせてもらえました。

今回の遠征メンバー。私の父(じいじ)は後半戦から合流。

思いがけず沢山いた、第二、第三、第四のパパたち!

今回Freeriderに挑戦した屈強メラメラガールズ!彼女たちが父と息子を連れ出してくれたお陰で普通の観光もさせてもらえました!ありがたや!(このとき私とペコマはEl Capで登ってました(笑))
しかもそのうち4日は夫婦で登りに行けたし、1日はりょうくんとちっぺこ3人でのマルチも行けました。この場を借りて改めて、本当にありがとうございました!!
しかし、今回は序盤で体調を崩してしまったのが少し残念でした。ヨセミテ入りした日の夜から急に下痢と激しい嘔気からの嘔吐、翌日は発熱して1日中ダウンしてました。初日の夜は時差ぼけで泣き続ける息子が隣に居ても身動きできないくらい辛かった・・😅解熱したあとも食欲が戻るまでさらに数日かかり、全身持久力が必要なヨセミテのクライミングに耐えうる身体に戻るのには5日ほどかかってしまいました・・無念。

病み上がりでりょうくんとFreeblastへ行くも、荷物を背負ってフォローしたら気持ち悪くなってしまい、この日はマルチを諦めてエルキャプベースで登りました。
Heart Ledgesへと続く永遠のFix Rope。良い季節なのでBig Wallクライマー沢山いました。
私以外の大人たちも順番に体調を崩していくなか、唯一元気でい続けた我が息子。Midnight Lightningの落書きはちゃんと描き直されました。【ショートルートのクライミング】
ショートルートでは、FishcrackとThe enemaの完登が今ツアーのハイライトとなりました。
フィンガージャム、レイバックのバランス能力とフィジカルを試されるルートでした。Fishcrackのほうは、初日はりょうくんと登りに行ってリード1便、TR 1便。登れそうな感触があったので日が影ってから最終トライをしたところ、あと2手でビクトリーホールド!という最終局面で、足ジャムの大切な#0.3サイズのクラックにきめたカムが邪魔になって蹴ってしまいスリップ、その衝撃でカムも外れ、ひっくり返って頭をうつ大フォールをしてしまいました。その二日後にペコマと行き、1トライ目で、かなりギリギリのRPでした。出し切ったトライが出来て喜びもひとしお!

Fishcrackは、2018年にこれまた超出し切りトライで辛くも2撃したCrimson Cringeのお隣さんです。Fishcrack完登で、産後最高グレードも更新されました(Joshua TreeのSpider line 5.11dから1つ上がりました!)。ヨセミテ初の5.12という歴史あるルートで産後初の5.12を飾れたのは嬉しい!

The EnemaはCookie cliffにある2Pのルートで、5.9のワイド、5.11bの前傾壁ハンド、どちらのピッチも楽しいオススメルートです。初日はペコマのフォローで2P目を登り、スゴく面白かったので翌日もりょうくんを誘って行きました。2P目をリードし、これもかなりの出し切りトライで完登!最後の最後まで気の抜けないクライミングが続きましたが、粘りきれました。りょうくんもそのあとにリードして、これまた粘りのクライミングで見事1撃!二人して出し切ったトライに健闘をたたえあいました。
【マルチピッチのクライミング】
ヨセミテはどのルートも長くて素晴らしい内容なのですが、ここでしか出来ないクライミングといえば、1日で完登できるか危うい長くて厳しいマルチピッチや、壁の中で泊まりながら登るBig Wallです。
さすがに息子が大きくなるまでBig Wallは難しいかなと思うものの、やっぱりロングなルートに行きたいし、将来の目標に繋がるクライミングがしたい!
ペコマも私もマルチが大好きなので、二人で登れる日はなるべくマルチを追求しました。

夫婦でのんびりNutcrackerで肩慣らし。やはり名ルートだった!

2012年以来、11年ぶりに2人で再登しました。感慨深い・・!
Y田パパとY川パパに息子を預けて3人でマルチ!

Pat and Jack Pinnacleの看板ルートKnob Job5.10bから始まるマルチルート、The Super Slacker Highway (5.10 b/c,8P)へ。じゃんけんに勝って私からリード!

フォロー中のりょうくんとペコマ。

子供をみてもらうだけでなく、何とハーネスを持ってくるのを忘れたペコマはハーネスまで借りて登らせてもらいました。

3人はビレイ点でも会話がありワイワイ楽しい。
私と夫は"El Capitanをフリーで登る=Freeriderを登る"という目標を、2016年のThe Nose完登以来温め続けています。今回は、その下部8pほどのみを登って"Mammoth Terrace"に至るマルチピッチルートである"Freeblast"に行くことが目標のひとつでした。

りょうくんとちっぺこ3人で子守を交代して登っていたので、残りの日程でペコマと登りに行ける日を、1日はEast Buttress、1日はFreeblastにあてることにしました。
East ButtressはEl Capitanの東の端の最も低くなっているところを登ってトップアウトする合計11Pのルートで、私は2018年に他の友人と登っていますがペコマは初です。
2018年の時は、前衛壁であるSchultz's RidgeのThe Moratoriumという4Pのルートから繋げて登る形で行ったので、今回も同じく、合計15PでEl Capitanの頂上を目指すロングなプランで行くことにしました。

The Moratoriumは美しいコーナークラック。
7時登攀開始予定で、前日に確認しておいたケルンから前進するも、誤った右上へ導かれる踏み跡を辿ってしまい大幅にタイムロス。結果、登攀開始は1時間半も出遅れてしまい、時間に追われるハードスタートとなりました。

今回は奇数ピッチをリード。
The Moratoriumは、5.10d、5.10d、5.11b、5.9の4Pのルートです。私は前回、1&2P目をOSしていて、今回は前回フォローだった核心の3P目をリードさせてもらいました。しかし残念なことに、レイバックに使う大事なコーナークラックから激しく染み出しており、意を決して離陸してみましたが、ズルズルとフォールしてしまいました。時間もないのでそのままエイドアップ。2018年の時もやや濡れてた記憶があり、このルートは状態核心なところがあるのかも知れないです。次回リベンジしたいと思います。

The Moratoriumのトップアウトは12時20分。子供を見てもらっているし、なるべく遅くなるのを避けるため、タイムリミットを12時に設定していました。でも、い、行きたい・・・。ペコマには「降りよう」と言われたのですが、結局押し切って行くことに。しかし、5.10のマルチとはいえ、決して簡単ではなく、各ピッチの長さも常に日本の倍以上なのがここヨセミテのクライミング。

遠目には傾斜がゆるく見えるEast Buttressですが、実はかなり立っていて露出感も満点です。

ルートは立体的で合理的、最後まで登りごたえも抜群です。この5.9の7P目は5.10あってもおかしくないと前回も思ったのを思い出した。

そしてやっぱり日が暮れた。
日本で登り込みもできていない弱々の私たちに、タイムロスを挽回できるほどスピーディに登れるはずもなく、あと2Pほどを残して真っ暗に。最後はヘッデンクライミングでトップアウトしました。そして、El Capitanの核心は、クライミングよりも下降なのです。道を間違えば、ゾッとするような巨大ツルツルスラブの餌食に・・。5年ぶりで記憶もあやふやななか、真っ暗で分かりにくい下降路を何度も行ったり来たりし、どうにか無事帰れましたが、日付が変わりそうな時間になってしまいました。

ここから何回もFixを懸垂。このポイントに辿り着くまでが本当に難しい!
それなのに、りょうくんはご飯作って焚き火して待っててくれた!朝から晩まで父と一緒に息子をみてくれ(朝はおしっこうんちまみれ息子のオムツ替えからはじまったそうな・・)、あったかい和風パスタまで・・・。感謝感激!りょうくんに子供ができたら恩返ししようそうしよう。

日に日に巨大化するファイヤー。この夜はりょうくんが待ちすぎて相当酔っ払っててやばかった。
そして、その二日後、ヨセミテ最終日が、ちっぺこFreeblastの日でした。前回の残業の反省を胸に、最終日で外食しようという計画もあるし、明るいうちに降りるため「何があっても15時下降開始」と決めました。登攀開始は7時。結局明るくなるの待ちとか準備とかで7時20分頃登り始めました。
私からスタートのつるべで登ります。

1P目、5.10c,60m強。かなーり面白くて登りごたえも抜群なピッチです。ミスって4番と5番をおいていったら最後ランナウトして怖くて時間かかってしまった。

2P目&3P目、5.11b→5.7→5.10c、60m弱。出だしの5.11bのトラバースはかな〜り悪いと思います。私はフォローでエイド突破。

4P目、5.11b/c、Freeblastの核心ピッチとなるスラブ。ものすごい露出感で美しすぎるスラブ。しかしそこへ至るまでの5.10dのピトンスカー地獄もかなりキビシイ。今回はマスターカムのオフセットカムは1セット弱、トーテムの黒、青、黄色も1セットだったのですが、ピトンスカーしかないので2セット欲しかった。。スラブは1箇所、出来そうで出来ないところがあり、ワークは1回のみで抜けました。

露出感満載なのでランナウトが怖くて心が折れそうになりながらのトップアウト。でも、RPは出来そうな気がする。絶対またやりたい!と思うピッチでした。

途中敗退可能なようにバックロープを持参。こういうビレイ点の整理整頓、久しぶり。感覚が戻ってくる。

5P目、5.11a、ふたつめの核心ピッチ。時間が迫っていたのでフォローの私はユマールで抜けましたが、1箇所悪そうなところがあり、ペコマもそこで苦労していました。こちらもとっても面白そうなので次回やりたい!

6P目、5.9、フィンガーからステミングやレイバックなどの立体的で面白いピッチ。セカンドが到着してちょうど15時になるところだったので、あと2Pで終了ですが、決め事を守り下降開始することにしました。
とりあえず、明るいうちに抜けることは普通に可能そう、ということが分かりました。セカンドははじめフォローしていて、途中からユマールに切り替えたのですが、割り切ってはじめからユマールしていればもうちょっとスピードアップ出来たかも知れません。

しかし、ここからもすんなりとは帰れませんでした。4P目と5P目を繋げて70m強おりたら、ロープが重すぎてひけず、二人分の体重をかけて大苦戦。どうにか結びコブが手元にきて、ロープもだいぶ軽くなってホッとしたのも束の間・・・ずっと強風にあおられキンクも激しかったロープは程なくしてびくともしなくなってしまいました。泣く泣く、ジョシュアから大活躍してくれていた我らがハミングバードプロドライ70mとお別れし、そこからは80mロープ1本で下降しました。

1P目を2回に分けて降りたけど、さいご微妙に地面に届かず少しだけクライムダウンしました。最後から2回目の懸垂ではひいたロープがクラックの奥深くでスタックして登り返し、というおまけつきでした。

ヨセミテに来ると、毎回自分の弱さ、ちっぽけさを痛感させられます。2012年にはじめて来た時は、ただただ恐ろしく、何も出来ず、悔しさと惨めさで美しい景色を前に泣きました。「この場所で楽しく登れるようになりたい!」それがモチベーションとなって、ここまで来たように思います。そして、ヨセミテは「クライマーの聖地」と言われるだけあって、訪れ、クライミングするだけで心が浄化されていき、日常のしがらみから解き放たれて、全身がただのクライミング馬鹿になります。今回もそのヨセミテの魔法でただのクライミング馬鹿に戻れた私は、やっと心身ともに出産前の自分を取り戻せたような気がしました。

そして、同時に、出産後から今までの自分は、あまりに豹変して違う人間になっていたと気づきました。毎日子供のことばかりで頭がいっぱいで、脳みそがとろけ、子供の世話を焼く自分にしか価値を見出せず、ペコマのこともだいぶ蔑ろにしてしまっていたと思います。出産前は「子供中心の生活なんてあり得ない、私とペコマの生活あってこそ」と思っていたのに、こんなにも人は変わるのか、というほどに価値観が激変していました。ちょっと健全じゃなかったかも知れない。

でも、このヨセミテでそれも良い方向に変わっていきそうです。私はもっと進化できるし、もっと幸せになれる、ペコマと子供と一緒に。そういう自信が湧いてきました。ああ、ヨセミテ、来てよかった。また行きたい。お金ためよう(笑)。

クライミング馬鹿すぎる仲間たちと!
かな〜り長くなってしまったので、一旦終わります。
次回は移動やキャンプのことなど、ヨセミテライフについてまだまだお伝えします!