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今年もWALSコースを見学した。

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主に一般人を対象として野外災害救急法を教えているWilderness Medical Associates Japan(WMAJ)が年に一回開催するWilderness Advanced Life Support(医師向け)コースに、今年もWMAJアンバサダーとして見学という形で参加させて頂きました。


過酷な環境や災害などの状況でも「いのちをつなぐ」救急法、WMA野外災害救急法
https://www.wmajapan.com

このWALSコースは、普段一般人を対象として教えられている救急法を、医師、看護師、救急救命士といった医療従事者たちが実践体験し、最新の医学研究論文に根拠をもとめたり、各職種の臨床経験なども持ち寄りつつ医学的議論を深めていく場でもあります。


昨年は子供がまだ小さく、かつ私一人でみる必要があったので、講習の半分くらいしか見学出来ませんでした。しかし今回はペコマお母さんに来てもらい子供をみてもらえたので、全4日間ともしっかり参加することが出来ました。


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富士山のお膝元、御殿場での濃密な4日間がはじまります!


このコースは、WMA Internationalの前カリキュラムディレクターであるDavid Johnson医師(DJ)が毎年来日して、彼の講義、インストラクションのもと日本人インストラクターが講習を行なってきました。しかし、今年からDJの訪日はなくなり、完全日本版WALSとして開催されることに!2016年からWALSを受講している私としては「一体どんなWALSになるんだろう?」というワクワクもありつつ、DJに会えない寂しさもありつつ。


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でも毎朝"DJ time"があって、オンラインでDJのお顔を拝見できました。70代半ばでも現役バリバリです!


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医療アドバイザー、インストラクター陣は精鋭揃い。完全日本版WALSも大満足の内容でした!


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座学もあるけれど、フィールドで身体を動かす学びがメイン。救急現場では瞬発力が大事です。のっけからいきなり変な体勢の傷病者の評価をさせられる。


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フィールドでの対応には難しい判断が沢山生じる。「ふかふかの斜面でやるCPR(心肺蘇生)には果たしてどの位の意義がありますか?」とインストラクターに問われ言葉に詰まる受講生たち。


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バスケット搬送で悪路をゆく。


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ちっちゃい子供は肩車搬送。


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野外の重症外傷搬送に有効な様々なデバイスの見学。


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「不安定な怪我の固定のポイントは?」お作法ではなく、本質的理解が伴っているから、難しい形の固定にも対応できる。


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暗く寒い、負荷のかかる環境での傷病者対応。WALSでは、コース終了前日の夜に大規模災害シミュレーションがあり、そこへ向け受講生の緊張も徐々に高まっていきます。


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脊椎損傷が疑われる傷病者は全例全脊柱固定!ロードアンドゴー!でもそれは都市部救急の話。野外災害救急法はそうではありません。脊椎の評価もしっかりして、リスクとベネフィットを天秤にかけ、分析的思考をすることで命を守る行動に繋げます。


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WALSでは、病院では見ることのない、野外救急で役立つ様々なデバイスの紹介もあります。


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「ヨットクルーズ○○日間、持っていく医療資機材は?」医療従事者向けのコースなので、持って行く薬剤の具体的な名前もリストアップし、みんなでディスカッションします。


WMAが通常開催しているWFA、WAFA、WFRというコースは、一般人向けに、医学的な内容にも触れつつかなりハイレベルな野外災害救急法を教えています。にも関わらず、このコースを受講すると誰もが同じレベルで傷病者対応できるようになるといいます。医療従事者だけでなく、現場に居合わせた人がこうしたスキルを持っていれば、都市型救急システムが機能しないフィールドにおける救命率は格段に上がります。

また、医療従事者を対象としたWALSコースは、そのカリキュラム自体を更に掘り下げるという点でとても面白いです。そして、野外災害医療、救命といったことに高いモチベーションを持った受講生が集まるので、魅力的な人たちとの出会いも毎年の楽しみです。

これからも、WMAの講習をより多くの人へ広め、自分も常に勉強を続けて、山岳医として精進していきたいと思います!

2023/10/18〜11/5 ファミリーYosemite遠征の記録その2〜全般まとめ

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ちょっと無理しての、1歳半の子連れヨセミテ旅。今年春のジョシュアツリー遠征の時より半年分成長したので、楽になった部分と大変になった部分とがありました。総じて沢山の人に助けてもらえたので、とても楽しく豊かな19日間になりました!


【事前の諸手続き】
・パスポート取得(息子の分も今年春に済)、国際運転免許証取得(今年春に済み、1年有効)、ESTA申請(今年春に済み、2年有効)
・海外旅行保険:アメリカは医療費が莫大なので必須です。カスタマイズできてリーズナブルに組んでくれる担当さんを知人から紹介してもらい今回も申し込みしました。治療救援者費用3000万円、損害賠償1億円など(私はゴールドカードに付帯の保険もあるのでそれと合わせてカスタマイズ)。クライミングする人はもちろん登攀活動OKの特約も。


【成田までの移動】
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北杜市の家から成田までは車移動で、成田に車を停めて出国します。今回も今年の春同様、スーパーパーキングを予約しました。出発ロビーの乗降場まで人が来てくれて車を持って行ってくれ、帰りは持ってきてくれます。とっても便利なうえ、長期で停めるなら安いです。今回は19日間で7,800円なり。

↓スーパーパーキング↓
https://super-parking.net/


【飛行機】
今回もZIPAIRで行きました。U-6という6歳以下の子供用のリーズナブルな料金設定があり、デフォルトでチャイルドシート付きの1席を用意してくれるZIPAIRは、LCCながら子連れ向きです。しかも、LCCなので預け荷物はもちろん有料なのですが、ベビーカーなどの子供を運ぶためのもの1点とチャイルドシート1点は無料で預かってくれるんです。今回はチャイルドシートが今年春の時よりも大型になり持っていくのがかなり大変そうだったので、レンタカーのほうでチャイルドシートをレンタルしてうちのは置いていきました。なので、ドイターのKid Confort II(背負子)のみ無料で預かってもらいました。


今回はサンフランシスコ国際空港にしました。ヨセミテから一番近い空港はフレズノ・ヨセミテ空港で、ヨセミテまで車で2時間半ほど、一方サンフランシスコからは最短4時間かかるうえ道がかなり混むので、フレズノ空港のほうが運転は断然ラクです。でも、成田からの直行便がないので、今回はやめました。


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成田空港第一ターミナル5Fにキッズスペースがあります。ここでアメリカ人のお兄ちゃんたちに遊んでもらった後から息子が「イエーイ!」と言うようになりました。


行きの飛行機は成田21時半発という遅い便だったのですが・・・。


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ゲート内のお店はなんとほとんどが17時半には閉まっていて、中で夕飯食べようと思ってたから焦りました。マックとスタバと一風堂のみかろうじてあいていたので、(ペコマは喜んでたけど)1歳の息子にも一風堂の白丸を食べてもらうことになりました(息子も喜んで食べてました・・)。


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ZIPAIR機内、行きはハロウィン仕様になってました!


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機内に飲食物持ち込みは可能なのですが、酒類はダメなんだって!知らずに買っちゃった。そして、笑っていられるのはここまでだった・・・(笑)

この日息子は成田へ向かう車内でもお昼寝ほぼ無し、からの、おんぶしても抱っこしてもいつも寝ている20時を過ぎても寝ず、そして飛行機に乗ったあとは何故か大暴れで泣き続け、9時間におよぶ格闘技耐久戦となりました。興奮とか、眠すぎて疲れすぎて眠れなくなっちゃったとか、色々あったのだと思いますが驚きました。今年春のジョシュアツリーのときはそれほど大変ではなかったのですが・・。


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最後の最後でやっと数時間だけ寝てくれたものの、サンフランシスコに到着する頃には両眼の下にがっつりクマを作って疲労の色濃い1歳児でした。よく頑張ったね・・・(泣)!


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帰りの機内はすでにクリスマス仕様でした!そして息子はちゃんと寝てくれました!格闘技はありませんでした!やった〜!


【レンタカー】
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春のジョシュアツリー遠征でロサンゼルス入りした時は、一番安いレンタカーにしたらとても嫌な思い&損をしたので、今回は1番安いのはやめました。最終的に、ちっぺこ、りょうくん、息子(チャイルドシート)、私の父で5人になるし、荷物もあるので大きめの車を借りました。


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サンフランシスコ国際空港は空港内の電車でカウンターまで行けて、手続きもスムーズ。やはりレンタル時にEVを勧められたのと(もちろんお断りしました)、カリフォルニア州の法律でフルカバーの保険に入る必要があるとのことでカウンターで追加料金の支払いがありました。借りた車はとっても快適でした。けっこう大きい車ですが、道幅が広いので運転も問題ナシ。


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サンフランシスコからヨセミテへほぼ真東に向かうルートではサンマテオ橋を渡るのですが、行きは無料で帰りは7ドルかかるっぽいです。後日レンタカー会社経由で請求がくるかな。


【前泊】

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私たちは空港16時着、りょうくんは17時着の便で、サンフランシスコからヨセミテは片道4時間かかるので、今回は途中の街で1泊することにしました。オークデールという、道のりのほぼ真ん中ら辺にある街で、以前も利用したことのあるMotel 6に宿泊。1部屋1泊約150ドルでした。時差ボケと行きの飛行機での息子との死闘による寝不足とで体調最悪なので(笑)、さっそくビールで乾杯したあとすぐ寝ました。


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息子は日本時間でいつも寝ている20時(サンフランシスコの朝5時)くらいになったらやっとスッと眠りにつきました。時差ボケまっしぐらです。


【ヨセミテCamp4滞在】

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2023年10月時点では、受付はすでに無人となっており、First come first servedで、自分であいてるクマボックスを見つけてサイトを確保したらオンラインで受付支払いするシステムになってました。1人1泊10ドルです。週末は満杯になるのですが、幸い私たちは平日入りだったので苦労せずトイレの横のサイトをとれました。1回の受付で連続7日予約でき、7日経ったらまた更新します。


Camp4は、東側に敷地が拡張され、新しくシャワートイレ棟(トイレの中があったかい!)も建ち快適さが格段にアップしていました。

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シャワーは3ブースほどありますが、部屋によって当たり外れ(?)があるので注意です。お湯はしっかり熱めのが出ました。

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11月になると西側(旧サイト)が閉鎖された(去年もそうだったみたい)ので、東側のサイトにお引越ししました(ヨセミテ入りした10/19時点では東側は人気らしくいっぱいでとれませんでした)。

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旧サイトの方はシャワー無いし、クマボックスも錆びついてて開け閉めが大変でしたが、新サイトのクマボックスはとても楽に開け閉めできて、それだけで感動しました。

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というわけで、息子はジョシュアツリーのときよりは多めにシャワーも浴びられました。朝晩は冷え込むので、あたたかい日中に浴びました。


【買い出しと自炊】

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スーパーはヨセミテ内にも2箇所あり、その他売店もありますが、やはりWalmartなどと比べると割高です。ヨセミテ入りする前に街のWalmartで買い出しして、たまに肉などの生鮮食品とかビールを切らして買い足したりする時だけヨセミテ内のスーパー(Village Storeが最大)を利用してました。

2_IMG_9043.jpg「酒が足りん!」


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10月中旬から11月頭の滞在では、Camp4は朝方に最も冷え込み、一番寒い日は-3℃ほどまで下がることもありました。しかし日中陽が入ると途端に真夏のように暑くなります。それでも、レタスやトマト、チーズ、ベーコンなどの生鮮食品は悪くならず1、2週間もちました。


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肉!!(リブアイ)は2回ほど焼きました。やっぱり柔らかくて美味しい。

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日本から持参したもので活躍したのは、カレールー、鍋キューブ、出汁パック、醤油などでした。塩コショウなども、現地スーパーだと大きすぎるサイズしか手に入らなかったりするので、荷物に余裕あれば持参するのが吉です。ちなみに、飲み水はサイト内で汲み放題です。


【子供用品】
ジョシュアツリーのときは40日間だったこともあるし、子供がまだ10ヶ月くらいだったのもあって、ミルクとパウチの離乳食に大量のおむつ、おしり拭きが恐ろしく嵩張っていましたが、今回はかなり少なくてすみました。
Lサイズのおむつ1袋(64枚)、お尻拭き5パック、ミルクはもう飲まないので無し、ベビーフードも、ほぼ大人と同じものを食べられるのでレスキュー用に少しだけ持参しました。というわけで、子供用品のかさはだいぶ減りました。

前回ロサンゼルス空港では税関での荷物チェックがなく完全スルーだったのですが、今回サンフランシスコでは荷物チェックに見事当選し、係の人に「肉製品は入ってないか?」と聞かれました。念の為持参するベビーフード全て肉類の入っていないもののみ(魚介系のみ)にしておいて良かったです。一見肉が入っていなさそうなメニューでも、風味付けのためにチキンエキスが入っていることが多いので注意です。ちなみに粉ミルクには豚由来タンパク質とかが入ってますが、未開封ならOKのようです。(ベビーフードは未開封でも肉類NG)


【電源】
今回私は10000mAhと5000mAhのモバイルバッテリーを持っていき、ソーラーランタンとソーラーパネルを持参しました。
でも、テントサイトのトイレなどにけっこう電源があるのと、車もUSBスロットが沢山ついていたので充電にはあまり困りませんでした。ソーラーパネルはジョシュアツリーでは重宝しましたが、ヨセミテは谷底で日のあたる角度も刻々と変わるので、ソーラーパネルは使いずらい印象でした。

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そして、置いておくと嬉々として持っていってしまういたずらっ子が居るのでした・・・


【焚き火】

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焚き火はほぼ毎晩楽しみました。時にお隣のロシア人と、スコットランド人と、火をシェアして盛り上がりました。
父はプロの演奏家なのですが、今回はベビーシッターで退屈しないよう、ギターを持参して弾いてもらいました。
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音楽があると人との距離がより縮まる気がします。

【気候、その他】
私たちが滞在した10/19〜11/4は1日だけ夕方から夜にかけてにわか雨があったのみで、それ以外の全日が晴れでした。非常に乾燥していて喉も痛くなるし、焚き火は面白いほど燃えまくってました。リップクリームは必須、花崗岩が眩しいのでサングラスもあった方がいいと思います。

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朝は7時半くらいまでかなり寒いので、レスト日などは、陽が入って暖かくなるまで、Camp4の道向かいにあるYosemite Valley Lodgeのフードコート(Base Camp Eatry。朝6時半からやってるらしい。何も頼まなくても大丈夫。トイレの洗面所でお湯が出て顔洗ったら最高に気持ちよかった)のテーブルを陣取ってくつろいでいました。


【観光など】

今回、我々は街の観光は一切しませんでした(笑)。まあ、何度も来ているし、今回は日数も限られているので余裕がありませんでした。息子とトレッキングも行きたかったけど、レスト日はレスト日で何かと忙しく、結局行けないまま終了・・・(1日は発熱で死んでたしorz)。

0_IMG_4753.jpg父と息子は、メラメラガールズ女史たちが連れ出してくれたので街観光できたみたいでよかったです(^^;) ありがたや〜!


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レスト日には無料のシャトルでValley内を散策。


6_IMG_5889.jpgギアショップも冷やかし。

ずっと自炊でしたが、最終日のみ、Yosemite Valley Lodgeにあるレストラン(The Mountain Room)で食事しました!

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Camp4の道向かいなので歩いて行けるからお酒も飲めます。やはりTapは美味しかった!


というわけで、貴重な19日間の遠征はこれにて終了!残りの岩シーズンも大好きな北杜市でめいっぱい満喫したいと思います!

2023/10/18〜11/5 ファミリーYosemite遠征の記録その1〜クライミングまとめ

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ヨセミテで登りまくってきました〜!
プライベートツアーとしては、2018年秋以来5年ぶりのヨセミテでした!
大学生のとき、クライマーになる前に観光で訪れたのが最初で、クライマーになってからは、2012年、2013年、2016年、2018年と4回登りに来ています2019年にはカリマーの撮影ツアーでも来ました。
というわけで、今回で通算7回目となる、とっても思い出深い場所です。



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タイやジョシュアツリーにも一緒に行っているYoutuber山岳医りょうくんと合流し、今回も1歳半になる息子を連れての家族遠征です。日数は全部で19日と短めでしたが、その半分も登れない覚悟をして行ったのに、りょうくん、途中合流した父をはじめ、Camp4にいたたくさんの友人たちに手厚く支えてもらい、お陰様で10.5日ほども登らせてもらえました。

9_IMG_9027.jpg今回の遠征メンバー。私の父(じいじ)は後半戦から合流。

9_IMG_5742.jpg思いがけず沢山いた、第二、第三、第四のパパたち!


0_IMG_6361.jpg今回Freeriderに挑戦した屈強メラメラガールズ!彼女たちが父と息子を連れ出してくれたお陰で普通の観光もさせてもらえました!ありがたや!(このとき私とペコマはEl Capで登ってました(笑))


しかもそのうち4日は夫婦で登りに行けたし、1日はりょうくんとちっぺこ3人でのマルチも行けました。この場を借りて改めて、本当にありがとうございました!!


しかし、今回は序盤で体調を崩してしまったのが少し残念でした。ヨセミテ入りした日の夜から急に下痢と激しい嘔気からの嘔吐、翌日は発熱して1日中ダウンしてました。初日の夜は時差ぼけで泣き続ける息子が隣に居ても身動きできないくらい辛かった・・😅解熱したあとも食欲が戻るまでさらに数日かかり、全身持久力が必要なヨセミテのクライミングに耐えうる身体に戻るのには5日ほどかかってしまいました・・無念。


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病み上がりでりょうくんとFreeblastへ行くも、荷物を背負ってフォローしたら気持ち悪くなってしまい、この日はマルチを諦めてエルキャプベースで登りました。


7_IMG_5944.jpgHeart Ledgesへと続く永遠のFix Rope。良い季節なのでBig Wallクライマー沢山いました。


3_IMG_5703.jpg私以外の大人たちも順番に体調を崩していくなか、唯一元気でい続けた我が息子。Midnight Lightningの落書きはちゃんと描き直されました。


【ショートルートのクライミング】

ショートルートでは、FishcrackとThe enemaの完登が今ツアーのハイライトとなりました。

6_IMG_5763.jpgフィンガージャム、レイバックのバランス能力とフィジカルを試されるルートでした。


Fishcrackのほうは、初日はりょうくんと登りに行ってリード1便、TR 1便。登れそうな感触があったので日が影ってから最終トライをしたところ、あと2手でビクトリーホールド!という最終局面で、足ジャムの大切な#0.3サイズのクラックにきめたカムが邪魔になって蹴ってしまいスリップ、その衝撃でカムも外れ、ひっくり返って頭をうつ大フォールをしてしまいました。その二日後にペコマと行き、1トライ目で、かなりギリギリのRPでした。出し切ったトライが出来て喜びもひとしお!


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Fishcrackは、2018年にこれまた超出し切りトライで辛くも2撃したCrimson Cringeのお隣さんです。Fishcrack完登で、産後最高グレードも更新されました(Joshua TreeのSpider line 5.11dから1つ上がりました!)。ヨセミテ初の5.12という歴史あるルートで産後初の5.12を飾れたのは嬉しい!


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The EnemaはCookie cliffにある2Pのルートで、5.9のワイド、5.11bの前傾壁ハンド、どちらのピッチも楽しいオススメルートです。初日はペコマのフォローで2P目を登り、スゴく面白かったので翌日もりょうくんを誘って行きました。2P目をリードし、これもかなりの出し切りトライで完登!最後の最後まで気の抜けないクライミングが続きましたが、粘りきれました。りょうくんもそのあとにリードして、これまた粘りのクライミングで見事1撃!二人して出し切ったトライに健闘をたたえあいました。


【マルチピッチのクライミング】

ヨセミテはどのルートも長くて素晴らしい内容なのですが、ここでしか出来ないクライミングといえば、1日で完登できるか危うい長くて厳しいマルチピッチや、壁の中で泊まりながら登るBig Wallです。
さすがに息子が大きくなるまでBig Wallは難しいかなと思うものの、やっぱりロングなルートに行きたいし、将来の目標に繋がるクライミングがしたい!
ペコマも私もマルチが大好きなので、二人で登れる日はなるべくマルチを追求しました。

9_IMG_5647.jpg夫婦でのんびりNutcrackerで肩慣らし。やはり名ルートだった!

1_7EA1AFFC-C838-4001-A6B2-E76A6BDCEB7E.jpg2012年以来、11年ぶりに2人で再登しました。感慨深い・・!


Y田パパとY川パパに息子を預けて3人でマルチ!

2_IMG_5720.jpgPat and Jack Pinnacleの看板ルートKnob Job5.10bから始まるマルチルート、The Super Slacker Highway (5.10 b/c,8P)へ。じゃんけんに勝って私からリード!


1_IMG_5725.jpgフォロー中のりょうくんとペコマ。


0_IMG_5727.jpg子供をみてもらうだけでなく、何とハーネスを持ってくるのを忘れたペコマはハーネスまで借りて登らせてもらいました。


0_IMG_6349.jpg3人はビレイ点でも会話がありワイワイ楽しい。



私と夫は"El Capitanをフリーで登る=Freeriderを登る"という目標を、2016年のThe Nose完登以来温め続けています。今回は、その下部8pほどのみを登って"Mammoth Terrace"に至るマルチピッチルートである"Freeblast"に行くことが目標のひとつでした。

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りょうくんとちっぺこ3人で子守を交代して登っていたので、残りの日程でペコマと登りに行ける日を、1日はEast Buttress、1日はFreeblastにあてることにしました。


East ButtressはEl Capitanの東の端の最も低くなっているところを登ってトップアウトする合計11Pのルートで、私は2018年に他の友人と登っていますがペコマは初です。2018年の時は、前衛壁であるSchultz's RidgeのThe Moratoriumという4Pのルートから繋げて登る形で行ったので、今回も同じく、合計15PでEl Capitanの頂上を目指すロングなプランで行くことにしました。


5_IMG_5907.jpgThe Moratoriumは美しいコーナークラック。


7時登攀開始予定で、前日に確認しておいたケルンから前進するも、誤った右上へ導かれる踏み跡を辿ってしまい大幅にタイムロス。結果、登攀開始は1時間半も出遅れてしまい、時間に追われるハードスタートとなりました。

4_IMG_9050.jpg今回は奇数ピッチをリード。

The Moratoriumは、5.10d、5.10d、5.11b、5.9の4Pのルートです。私は前回、1&2P目をOSしていて、今回は前回フォローだった核心の3P目をリードさせてもらいました。しかし残念なことに、レイバックに使う大事なコーナークラックから激しく染み出しており、意を決して離陸してみましたが、ズルズルとフォールしてしまいました。時間もないのでそのままエイドアップ。2018年の時もやや濡れてた記憶があり、このルートは状態核心なところがあるのかも知れないです。次回リベンジしたいと思います。


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The Moratoriumのトップアウトは12時20分。子供を見てもらっているし、なるべく遅くなるのを避けるため、タイムリミットを12時に設定していました。でも、い、行きたい・・・。ペコマには「降りよう」と言われたのですが、結局押し切って行くことに。しかし、5.10のマルチとはいえ、決して簡単ではなく、各ピッチの長さも常に日本の倍以上なのがここヨセミテのクライミング。

2_IMG_5918.jpg遠目には傾斜がゆるく見えるEast Buttressですが、実はかなり立っていて露出感も満点です。


1_IMG_5920.jpgルートは立体的で合理的、最後まで登りごたえも抜群です。この5.9の7P目は5.10あってもおかしくないと前回も思ったのを思い出した。


0_IMG_5922.jpgそしてやっぱり日が暮れた。


日本で登り込みもできていない弱々の私たちに、タイムロスを挽回できるほどスピーディに登れるはずもなく、あと2Pほどを残して真っ暗に。最後はヘッデンクライミングでトップアウトしました。そして、El Capitanの核心は、クライミングよりも下降なのです。道を間違えば、ゾッとするような巨大ツルツルスラブの餌食に・・。5年ぶりで記憶もあやふやななか、真っ暗で分かりにくい下降路を何度も行ったり来たりし、どうにか無事帰れましたが、日付が変わりそうな時間になってしまいました。

9_IMG_5925.jpgここから何回もFixを懸垂。このポイントに辿り着くまでが本当に難しい!


それなのに、りょうくんはご飯作って焚き火して待っててくれた!朝から晩まで父と一緒に息子をみてくれ(朝はおしっこうんちまみれ息子のオムツ替えからはじまったそうな・・)、あったかい和風パスタまで・・・。感謝感激!りょうくんに子供ができたら恩返ししようそうしよう。


8_IMG_6013.jpg日に日に巨大化するファイヤー。この夜はりょうくんが待ちすぎて相当酔っ払っててやばかった。


そして、その二日後、ヨセミテ最終日が、ちっぺこFreeblastの日でした。前回の残業の反省を胸に、最終日で外食しようという計画もあるし、明るいうちに降りるため「何があっても15時下降開始」と決めました。登攀開始は7時。結局明るくなるの待ちとか準備とかで7時20分頃登り始めました。

私からスタートのつるべで登ります。

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1P目、5.10c,60m強。かなーり面白くて登りごたえも抜群なピッチです。ミスって4番と5番をおいていったら最後ランナウトして怖くて時間かかってしまった。


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2P目&3P目、5.11b→5.7→5.10c、60m弱。出だしの5.11bのトラバースはかな〜り悪いと思います。私はフォローでエイド突破。


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4P目、5.11b/c、Freeblastの核心ピッチとなるスラブ。ものすごい露出感で美しすぎるスラブ。しかしそこへ至るまでの5.10dのピトンスカー地獄もかなりキビシイ。今回はマスターカムのオフセットカムは1セット弱、トーテムの黒、青、黄色も1セットだったのですが、ピトンスカーしかないので2セット欲しかった。。スラブは1箇所、出来そうで出来ないところがあり、ワークは1回のみで抜けました。


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露出感満載なのでランナウトが怖くて心が折れそうになりながらのトップアウト。でも、RPは出来そうな気がする。絶対またやりたい!と思うピッチでした。

3_IMG_6038.jpg途中敗退可能なようにバックロープを持参。こういうビレイ点の整理整頓、久しぶり。感覚が戻ってくる。


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5P目、5.11a、ふたつめの核心ピッチ。時間が迫っていたのでフォローの私はユマールで抜けましたが、1箇所悪そうなところがあり、ペコマもそこで苦労していました。こちらもとっても面白そうなので次回やりたい!


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6P目、5.9、フィンガーからステミングやレイバックなどの立体的で面白いピッチ。セカンドが到着してちょうど15時になるところだったので、あと2Pで終了ですが、決め事を守り下降開始することにしました。
とりあえず、明るいうちに抜けることは普通に可能そう、ということが分かりました。セカンドははじめフォローしていて、途中からユマールに切り替えたのですが、割り切ってはじめからユマールしていればもうちょっとスピードアップ出来たかも知れません。


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しかし、ここからもすんなりとは帰れませんでした。4P目と5P目を繋げて70m強おりたら、ロープが重すぎてひけず、二人分の体重をかけて大苦戦。どうにか結びコブが手元にきて、ロープもだいぶ軽くなってホッとしたのも束の間・・・ずっと強風にあおられキンクも激しかったロープは程なくしてびくともしなくなってしまいました。泣く泣く、ジョシュアから大活躍してくれていた我らがハミングバードプロドライ70mとお別れし、そこからは80mロープ1本で下降しました。

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1P目を2回に分けて降りたけど、さいご微妙に地面に届かず少しだけクライムダウンしました。最後から2回目の懸垂ではひいたロープがクラックの奥深くでスタックして登り返し、というおまけつきでした。


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ヨセミテに来ると、毎回自分の弱さ、ちっぽけさを痛感させられます。2012年にはじめて来た時は、ただただ恐ろしく、何も出来ず、悔しさと惨めさで美しい景色を前に泣きました。「この場所で楽しく登れるようになりたい!」それがモチベーションとなって、ここまで来たように思います。そして、ヨセミテは「クライマーの聖地」と言われるだけあって、訪れ、クライミングするだけで心が浄化されていき、日常のしがらみから解き放たれて、全身がただのクライミング馬鹿になります。今回もそのヨセミテの魔法でただのクライミング馬鹿に戻れた私は、やっと心身ともに出産前の自分を取り戻せたような気がしました。


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そして、同時に、出産後から今までの自分は、あまりに豹変して違う人間になっていたと気づきました。毎日子供のことばかりで頭がいっぱいで、脳みそがとろけ、子供の世話を焼く自分にしか価値を見出せず、ペコマのこともだいぶ蔑ろにしてしまっていたと思います。出産前は「子供中心の生活なんてあり得ない、私とペコマの生活あってこそ」と思っていたのに、こんなにも人は変わるのか、というほどに価値観が激変していました。ちょっと健全じゃなかったかも知れない。

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でも、このヨセミテでそれも良い方向に変わっていきそうです。私はもっと進化できるし、もっと幸せになれる、ペコマと子供と一緒に。そういう自信が湧いてきました。ああ、ヨセミテ、来てよかった。また行きたい。お金ためよう(笑)。


4_IMG_5961.jpgクライミング馬鹿すぎる仲間たちと!


かな〜り長くなってしまったので、一旦終わります。
次回は移動やキャンプのことなど、ヨセミテライフについてまだまだお伝えします!

プロフィール

chippe

Author:chippe


肉好きchippeのブログへようこそ!
2006年10月 山歩きを始める。
2007年9月 クライミングを始める。
山岳同人「青鬼」所属。
「メラメラガールズ」所属。
国際認定山岳医。
「カリマーインターナショナル」アンバサダークライマー。
現在は無職、旅人。
旦那さんはpecoma。

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