2019/11/24
2019 autumn 中華 黎明 Rock climbing in China Liming 中国 リーミン クライミング
「人にはナイショにしておきたい」そう言って、敢えてリア充アピールはせず黙っておく人がいます。黙っておきたくなるモノがあります。
そういうのは自分とは無縁だと思っていました。基本的に、いい情報はなるべく多くの人と共有したいものです。
登山はじめたての頃からホームページを開設し、最近は本体がブログとなりつつあるものの、すっかり「配信する人」になってしまった私。「ブロガー」に転職しようかなどという考えもふと浮かぶほど、しかし筆不精とキャパシティの低さからそれも叶わないので、ただのフリーターとして細々書くのみに留まってはいます。
そんな私ですが、今回ばかりは魔が差しました。
「あんまりおススメしないでおこうかな・・・」と・・・・。

というわけで、今回は中国黎明(リーミン)の岩場の魅力をほんの少しだけ(笑)、ご紹介しましょう!
8月にペルーを旅行中、友人からメッセージが入りました。
「11月に中国行かない?」
そのときはまさに、クレジットカードの不正使用が明らかとなったのに日本の担当デスクと電話が繋がらず、心拍数が上がり、てんやわんやしている時でした。てんやわんやしながらだったので、余り考えずに即返信しました。
「はい、行きます!」
あとで聞いたところ、本来行くはずだった某Kさんが行けなくなったため私にお鉢が回ってきたそうです。
Kさんにはもう、感謝しかありません(笑)。
私はアンテナの受信感度が低いので、ヤンショウやら巨大ケイブやらと中国のすごい噂はいろいろ聞くものの、今回行くリーミンについてはほぼ何も知りませんでした。瑞牆バムをしていた時、一緒に行く友人宅でトポを読み込み、テンションを高めていきました。
人生初の中国大陸上陸、そして人生初の砂岩クライミングです!
11月11日、他のメンバーに遅れること1日、ポッキーの日に成田から飛びました。目指すリーミンははるか西、雲南省にあって、最寄りの麗江の空港までの直行便はありません。四川省の成都で1回乗り継ぎです。それでも搭乗時間は5時間+1時間。時差も1時間なので、ダメージはほとんどありません。

成都で乗り継ぎ20時間。宿をとって1泊し、フライト前にちょっとだけ町歩きも。
この1年、ヨーロッパや南米にアラスカと、北米さえ楽に思えるような長時間移動ばかりだっただけに、今回の移動の負荷はほぼゼロといってもいいくらいでした。このメリットは心身ともにとても大きいです。
今回は全部で2週間、クライミングできる日数だけで言ったら約1週間の短い旅行です。退職からわずか2年ですでに、これが「短すぎる」と感じてしまうのだから、慣れというのは恐ろしいものです。
麗江の空港には深夜に到着しました。迎えに来てくれた宿の主人の車で西に100km、約3時間。すでに数週間前から来て暮らしている先発隊の友人の部屋をシェアさせてもらうことになっており、深夜に潜り込みました。

お世話になったお宿、千里ノ外(Faraway)Hotel。オーナーのラバンさんは優しくて穏やかな人。
翌朝は、もうすっかりリーミンに馴染んでいるその同室と、私より1.5日早く黎明に着いていた2名と合流し、ただ後ろをついて行って、隣のお店で朝食をとりました。この後数日、同じ店で朝食をいただきましたが、毎回出てくるのは同じ麺、そして量は日に日に増えていきました。

左上:朝ごはんの麺。辛いのは入れ過ぎ注意。右上:お湯とクルミとヒマワリの種はセルフサービス。左下:とある日の朝ごはん。ほっかほかバオとあったかい豆乳をテイクアウト。豆乳には砂糖をたっぷり入れてもらう。右下:夜には美味しい肉野菜炒めなどなど。
リーミンは老君山国家公園という国立公園内にあり、渓谷沿いに巨岩が林立する広大なクライミングスポットです。欧米人に人気が高く、世界各国からクライマーが集います。そしてたいてい同じ宿(2択くらい)に泊まるので、お互いの距離が近くすぐ親密になれます。一人で行ってもすぐにパートナーが見つかるというわけです。

個包装のドリップコーヒーが、ほかの国にはないものらしく大盛り上がり。
クライミングのあとは、みんなで連れ立って3つくらいある主要なレストランのどこかに食べに行きました。わたしたち日本人4人は中国語がほぼ使えなかったので、ジェスチャーと翻訳アプリでどうにか注文をとっていました。中国語の話せる人がメンバーの中に加わると、オーダーを全てお任せして円卓にただ座っていれば、多種多様な中華料理をたくさん食べられました。

毎晩大挙して押し寄せた(笑)。
ルートは、ボルトルートもあれどほとんどがトラッドです。30m級の美しいショートルートがわんさかあり、砂岩ならではともいえる「ずっと同じサイズが続く」クラックもあります。それぞれが4番までを2セットずつ持って行って、必要な時には4人全員のギアをかき集めてトライしました。#.5が7個とか、#.75が8個とかね・・・(笑)。

岩だらけ。

とにかく壁だらけ。

Faraway cornerという名の美しいコーナークラック。レイバックとワイドが多いところは世界標準。

30mの膝がめっちゃ痛いワイド、Clamdigger。友人にならって、服がズレないよう膝テーピング。FLトライでは、簡単なところでスリップしてしまい無念の1テン!2便目は後日、道端の売店で買った750円のデニムを履いて完登。

かわって、#.2サイズが肝となるAkhum-Rah.フットホールドが皆無なら・・もう、アレしかない!!
マルチピッチも沢山。逆に、というか、簡単なマルチは少なく、どちらかというと5.12や5.13を含むハードなマルチに★付きが多いです。
今回行けたマルチは、Liming Select(リーミンセレクト、LS、★5つ)の1本で5.10に収まっているSoul's Awakeningというルートのみでした。

Soul's Awakeningは気持ちのいいマルチ。

40mのピッチをランナウトしながら登りきり、ふっと一息。リーミンの谷を見下ろす。
とにかく1週間では短過ぎて、LSをちょい齧りするくらいしか出来ませんでした。
岩の質はもちろんなのですが、ここの魅力は他にも沢山あります。たとえば、Faraway Hotelの看板犬であるDing Dong(ディンドン)。彼の名前がついた美しいクラックもあります。

ディンドンクラックを登る友人と、眠りこけるディンドン。

上の写真の友人は後日見事RP!私はまだまだ力及ばず。宿題になってしまった。
彼は非常に頭が良く、人間の言葉をほぼ理解しているようでした。
そして推定8歳?なのに活発で、痛めているらしい右後ろ足をかばいながら岩場へ一緒に出勤します。道をよく知っているし、誰よりも早く登っていきます。

「The Caveのアプローチはコッチだよ」と先導するディンドン。

たまにディンドンの友達も登場。

水をもらうディンドン。朝晩は冷え込むけれど、日中はかなり暑くなる日も。
岩場につくと、私たちが登っている間は昼寝したりして適当に過ごし、夕方また一緒に宿へと帰ります。
朝晩は寒いらしく、激しくシバリングしながら身を寄せてきます。

クライマーにとってSFT(Super Friction Time)が訪れる夕方には「もう寒いから帰ろうよー」となきはじめる。
そして夕飯にもついてきて、股の間に割り込んできてじっと見つめてくるのです(鶏の骨とかが欲しい)。

ディンドンの写真ばっかり撮っている気が・・。
彼を連れていけないエリアに行く日の朝はちょっと可哀想でした。しつこくしがみついてくるディンドンを無理やり宿に押し込んで扉を閉めると、必死に扉をガリガリしながら吠え立てていました。その日宿に帰ると、ディンドンは激しく怒っていました(笑)。ごめんねディンドン。
宿には生まれたばかりのピータンもいるけど、彼はいたずら真っ盛りだし少し臭うし、ある日はう○ちをぶら下げながら駆けずり回ったりしていたので、クライマーたちからの扱いもディンドンへのそれとはちょっと違っていました(笑)。

宿の2階の屋上ですやすや眠るピータン。寝ているときはかわいい(笑)。
ごはんの話に戻りますが、ご飯は美味しくてとても安いです。ボリュームはたっぷりなので、いろんな種類を食べたければやはり大人数で行ったほうがいいです。夜にかなり豪遊したとしても、1人50元(750円)はかからない、といった感じでした。
行動食はクッキーとか果物とか。いろんなお菓子も売店で買えます。また、1のつく日にマーケットがあって、食料をいろいろ安く手に入れられるようです。残念ながら私は12日に黎明入りして20日に去ったので、マーケットを楽しむことは出来ませんでした。次はマーケットのことも考えてスケジューリングします。

ある日の行動食。クッキーはディンドンも大好き。
#4サイズのワイド、#.5サイズのフィンガー、#6まで連れていかなければならない40mクラスのルート、などなど・・・。短い間ではあったけれど、いいトレーニングになりました。
安い、近い、でかい、が三拍子揃っている此処は、何度でも訪れたくなる素晴らしい場所です。

みんなで!
決して一大観光地ではなく、こじんまりした、とても静かで、のんびりと時間の流れる場所です。
それゆえキャパシティはそれほどありません。
この環境が保たれているのは、それほど多くない観光客と、まだそれほど多くないクライマーたちがこの土地を愛し、モラルある行動を心がけているからだと感じます。
皆さんにはとくにオススメはしないですが(笑)、私は近いうちにまた、ディンドンと、再開を約束した友人たちに会いにこの地へ戻るのではないかと思っています。