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東北の高校生の富士登山に参加してきました。


福島民報
東北の高校生30人、富士山登頂「一番つらかったけど、達成感」



2022年8月27日、今年もまた、東北の高校生たちが自らの意思と自らの足で富士山頂に立ちました。


東日本大震災の翌年、2012年から毎年この時期に開催されている本イベント。私は2017年から山岳医として関わらせていただき、コロナ禍で中止となった2020年を挟んで今回で5度目の参加となりました。


8_IMG_4109.jpg水ヶ塚からの富士宮側富士山


山岳医としてお客さんを山頂へ導くサポートをする仕事は、私が一番やりたい仕事ですが、「東北の高校生の富士登山」は毎度特別な感慨があります。


7_IMG_4110.jpg下山日の朝、見事な影富士!


このイベントは学校主催のイベントではないから強制ではなく、みなさん自分の意思で参加を決意し、親御さんのゴーサインをもらって申込みをします。登山用品は一式レンタルできるため、登山経験はおろか、運動経験のない高校生でも参加は可能です。そして大人のスタッフたちの手厚いサポートのもと、さまざまな思いを胸に山頂を目指します。大人と子供の境目にいる高校生たちが、みな下山後にその顔つきを変えるのもとても印象的です。


6_IMG_4111.jpg駿河湾を臨む


私がはじめて富士山に登ったのは防衛医大1年生のときの訓練(つまり強制)で、その後自分の意思で登山をはじめたのが大学4年生の終わりでした。そんな自分の高校生のころ(完全なる文化系)のことを思い返せば、本イベントに参加した高校生たちが「一生の思い出になる」「自信を増す」「自己肯定感を得る」と口々に言うのを聞くにつけ、さぞかし精神的インパクトの大きな体験であろうと確信するところです。


そうした意味で、このイベントでの山岳医としての仕事には、ただお客さんを山頂へ導く仕事とはまた違った面白さがあります。そして、毎年ここに集う精鋭スタッフの方々とお会いできるのも大きな楽しみの一つでした。


しかし今回は自分自身に不安がありました。開催の3週間前、産後2ヶ月と1週間で登った八ヶ岳編笠山では、かなりゆっくり登ったにも関わらず大きなダメージを受けました。


0_IMG_3925.jpg山岳医療パトロールの登山口での声かけ活動後、登山。編笠山頂は諦めて青年小屋ピストンで帰ってきましたが・・・

階段2段分以上の段差は骨盤が痛くて越えられず、下りもダブルストックに8割くらいの荷重をかけて一歩一歩丁寧に降りないとならないので、コースタイムをオーバーするほど時間がかかり、体力的にもこたえました。翌朝は恥坐骨部の痛みで起き上がるのも辛く、「やってしまった・・」と萎えました(笑)。


一瞬、「無理せずペコマにピンチヒッターをお願いしようか」とも思いましたが、やはり行きたい気持ちがあったので、その翌週には実際に登る富士宮ルートに事前登山に行ってみました。


編笠山を登った経験から、「何度も登っている山でも今の自分にとっては初登山と同じ」ということが分かったので、実際登る富士宮ルートがどのくらい険しいのか、スタッフとして高校生たちをサポート可能なのかを確認する必要があると思いました。
結果、編笠山よりもだいぶ段差が小さいこと、また、高所なので、登るスピードが遅くても周りの登山者とそれほど変わらないスピードになること(笑)などを確認でき、走り回ったり歩荷とかはできないけど、医療班として最低限のサポートなら可能だろうと思えました。また、3500mくらいまでは順化行動も出来ました。


編笠登山では着けるのを忘れてしまった産後ガードルと骨盤ベルトを、富士山では装着していったのも大きな違いでした。

0_IMG_4126.jpg怪我したら固定するのは当たり前!


足が「ずりっ」と滑ったりする瞬間が結構痛いのですが、ガードルとバンドでがっちり固定することで、そうしたダメージもある程度軽減できました。


1_IMG_4090.jpg富士宮ルート6合目雲海に浮かぶ雲海荘


また、授乳中なので、山中2泊の間にお乳を絞る方法も考えなければなりません。山小屋の部屋で搾ることを想定すると手動の搾乳機を使うのがいいと思い、ピジョンの搾乳機を購入しました。

1_IMG_4106.jpgピジョンの手動搾乳機。コンパクト、構造もシンプルで使いやすい。これからも山中泊で重宝するかも!

さらに、2泊もあるとさすがに水洗いとかしなければ臭くなりそうです。使うごとに軽く水洗いしたいところです。富士山には水がないので、いつもより多めに水を歩荷する必要があるだろうと思いました。そこで合計3リットルの水道水を水洗い用に歩荷しましたが、結局2泊で500ccほどで足りました。5合目登山口から宿泊する6合目の小屋までは幸いすぐなので、産後最高に重い荷物でしたがなんとかなりました。


5_IMG_4112.jpgアタック日、悪天候の1日を乗り越え、日暮れ迫る下山中。雨上がりの特大ご褒美が!


登山日は結構な荒天でしたが、高校生たちは粘り強く登り続け、途中降りたいと言い出す子もなく、最終的には30名全員が剣ヶ峰に到達しました。途中、フラフラの学生をサポートする場面では、いつものように荷物を持ってあげたり出来ないし、ダブルストックが手放せないので支えてあげることも満足に出来ず、もどかしかったです。常に隣にいた同じ医療班看護師のやいちゃんに色々お任せしてしまいましたし、私自身のことも気遣ってもらってありがたかったです。本当に感謝感謝でした。


4_IMG_4113.jpg8合目を過ぎた頃、一瞬青空がのぞいた瞬間があった。しかしこのあとまた激しい風雨に。


0_IMG_4060.jpg「今年はやめておこう」と思っていた剣ヶ峰。最後尾になった学生に付き添う形で、結局今年もやってきた。フラフラだったその子は感動して泣いていた。よくがんばったね。


3_IMG_4114.jpgでも剣ヶ峰直下のザレの下りがガクガク足にはけっこう核心だったりするのよね。


2_IMG_4115.jpg富士山頂の大火口にも感動の歓声。そういう新鮮な感動を感じづらくなっていくのが、アルパインの深みにはまっていく一因か。


逞しい顔つきになって東北へ帰っていく高校生たちのバスを見送るとき、子を持って昨年までとはまた明らかに違った目で彼らを見る自分にも気がついたのでした。


9_IMG_4107.jpg今年もなすびさん駆けつけました!疲れた子の荷物も持ってくれましたよ!


そんなこんなで、今年もとても楽しい3日間でした。お世話になった皆さん、本当にお疲れ様でした&ありがとうございました!

山岳医療パトロール始動。「東北の高校生の富士登山」開催。

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世間では変異株が猛威を振るっていますが、あらゆるイベントごとが疑問の余地なく中止となった昨年と違い、2021年は東京オリンピックをはじめ様々な"イベントごと"が試行錯誤のもと開催されはじめています。


ワクチン接種しても感染は防げない、若年者も重症化する、感染力は水ぼうそうに匹敵する、など、またも新たな難問をつきつけてくる自然の脅威に、人間社会は果たして対抗できるのでしょうか。

8_IMG_6866.jpg尾白川の不動滝


未曾有の大災害といえば、日本中にかつてない被害をもたらした東日本大震災のあとも、日本中が「自粛」して水を打ったように静まりかえっていました。
でも、早い段階から、被災した方とそうでない人々との温度差はやはりありました。当時東北にいたのでそれは強く感じていました。
今回も当時とほぼ同じ状況になっているように思います。
日夜コロナ病棟で壮絶な戦いを強いられている医療従事者からしてみれば、日本国民の危機感が不足していると感じられることでしょう。

2_IMG_7174.jpg日向山山頂


しかし人流を止めるには法的措置しかないと個人的に思います。個人の裁量に任せる方法では無理です。
法的に制圧されているわけではない世の中で人々が日常を取り戻そうとするのはごくごく自然のことと思います。
感染対策などの考えを尽くした上で行われる"イベントごと"に関しては、批判はあって当然ですが、誰にも中止を迫る権利など無いのです。

7_IMG_7244.jpgドンドコ沢の五色滝

私はコロナ病棟で働いている医療従事者ではありません。特効薬を開発出来るわけでもないし、ただただ無力な存在です。それでも、変異株に対しても重症化はほぼ確実に防ぐことができるといえるワクチンの接種率を上げる業務には貢献できます。というわけで最近は、自治体の接種会場や国の大規模会場など、様々な会場へ行ってワクチン接種業務に関わっています。


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2017年から、地域の安全登山への貢献のため、甲斐駒ヶ岳黒戸尾根ではじまった山岳医療パトロール活動。昨年から、山小屋に泊まっての活動は避け、登山口での声かけのみに活動を縮小して継続しています。
今年も北杜市の協力のもと、7月から活動を開始し、今年からは編笠山の登山口である観音平でも活動をはじめました。


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こうした活動も、県をまたいだ移動を行い、登山者と会話をするので、中止したほうが良いでしょうか?
でも、日常を取り戻そうとする動きは止めようがありません。あわせて行っているアンケート調査の結果からは、3密を避けてか、昨年よりもむしろ登山頻度が上がっているという方もいるようです。

0_IMG_6855.jpg水遊びに来た家族連れで賑わう尾白渓谷


9_IMG_6860.jpg午前中の声かけ活動後は、尾白渓谷登山道などのパトロールも行っています。軽装で険しい登山道を行こうとする方などに注意喚起をする場面も多々あります


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アンケート結果を見ると、「山は街より安全だ」と気がゆるんでしまう方も多いようです。声かけを行い、街中と同様に感染対策意識を高めてもらう活動は有意義だと私は信じています。


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また、昨年中止となった「東北の高校生の富士登山」も今年厳重な感染対策のもと開催されました。
東日本大震災被災当時幼稚園生だった高校生たちが、今年も参加14名全員で登頂を果たしました。

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一歩一歩前に進めば必ず山頂に辿り着くという貴重な経験をし、山岳のダイナミックな景観に心打たれ、さまざまな経歴の大人たちと触れ合って価値観を豊かにし・・・。そんな得難い3日間を満喫してもらえたと思います。彼らが大人になって、また未来の東北を、未来の日本を担っていくのです。

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今回は開催前から、感染対策などについてのアドバイスをさせていただき、開催中は医療班医師として、ごくごく微力ながらもお力添えさせていただきました。
開催を中止するのは簡単でも、この世情において開催を決め、遂行するのは非常に困難なことだったと思います。
どのような対策をして開催されたのか、アウトドアツアー業界においてひとつのモデルケースが出来たかも知れません。コロナによる貧困も無視できない問題となっている今、こうした活動もまた有意義なものだと思います。


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東京オリンピックでは、今大会から新種目となったスポーツクライミングにおいて選手用医療ボランティアとして参加させていただきました。日本選手はじめ、各国の選手の力強い登りは世界中に勇気と元気を与えてくれたと思います。
卓球やマラソンなど、他の種目もテレビ観戦していましたが、普段感じることのできない種類の感動をいただきました。
アスリートって、やっぱりかっこいいな。

2_IMG_6881.jpg北杜市移住計画進行中。お家が順調に出来てきています


9_IMG_7211.jpgリビングからの南アルプスの眺め。先日行ったら床暖房の設置が終わってました


0_IMG_7155.jpg外装はほぼ完了し、そろそろ足場と青ネットが外されるみたいです。ベルバーンに陽が当たるのを見るのが楽しみ!


8_IMG_7214.jpgロフトに上がれました。ここは吹き抜けになる予定で、階下のムーンボードを見下ろせる予定です


「山岳医」って、何者?"コメンテーター"とか"評論家"とか、そういう「自称」の肩書きなのは否めません。「ただの山好きでしょ」と言われても否定はできないし、「登山道に医者が居てなにか役に立つの?」と問われたら納得させられる自信もまだ無いです。でも、私には私にこそ出来ることが何かあるはず。こんなご時世だからこそ、自分なりに「山岳医」とは何か、を追求していきたいと改めて思います。

1_IMG_7173.jpgWilderness Medical Associates Japanのアンバサダーにも就任しました!WMAの講習は山のファーストエイドに非常に役に立つので、どんどん広めていきたいと思います!


そんな今日この頃。怪我と感染に気をつけて、これからも毎日を充実させたいと思います。

アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5895m)登山~山岳医として自身初の海外高所ツアーに学ぶ

クラブツーリズムさんという大手旅行会社さまのツアーでキリマンジャロに行ってきました!


知人を通じて頂いたこのお話、"山岳医"としての参加依頼です。


こんなに嬉しいことはありません!


ジャイアントセネシオとキリマンジャロ本峰であるキボ峰。天気にも恵まれ、"ザ・キリマンジャロ!"という景色を沢山見ることが出来ました。


"世界最高のトレッキングピーク"として、世界中の一般登山者やトレッカーが挑戦するキリマンジャロ、Maranguルート。特別な登山技術や道具を要しないということで、比較的簡単に登れる高山と見なされているようです。

火山であるキリマンジャロの2つ目の峰、マウェンジ峰と白首鴉。


しかし実際は少し違います。山小屋のキャパシティ等の関係から、通常行程でかなりの弾丸登山を強いられます。1000m以上の睡眠高度上昇はほぼ毎日で、更にアタック日には夜間行動からの標高差1200mの登高。しかも登頂後はそのまま一気に標高差2200mを下ります。山慣れしている人ならいざ知らず、登山歴がほとんど無い人や、そもそも運動習慣のない人、持病のある人などにとっては非常に厳しい"ハイキング"と言わざるを得ません。




山小屋でのアフタヌーンティータイム。高山病予防のため、沢山水分をとってガンガントイレに行きます。



しかし、そうした人々も多数チャレンジするのがこの山で、それ故に高山病関連疾患や死亡事故の起こる潜在的危険性が高い山とも言えます。


ミウラドルフィンズの安藤さんと!




これまでキリマンジャロのことをあまり知らなかった私は、色々と調べていくうちに「こうした登山こそ、山岳医の介入する余地があるのではないか」と思いました。今回は計5名、平均年齢65歳超のお客様方に安全に登山を楽しんでいただき、笑顔で無事帰国していただくことがミッションです。対応するスタッフは、添乗員のHさんと、高所の専門家であるミウラドルフィンズの安藤さん、そして私の3名です。「とにかく安全第一」とクラブツーリズムさんが言って下さったこともあり、これはやりがいのある仕事になるぞ、と思いました。


今回のメインガイド、Kimと。


東北の高校生の富士登山でも、高校生たちとの間には歳の差がかなりありますが、今回のお客様方とはそれ以上の年齢差があります。成田空港にそれぞれいらした際、ご挨拶しただけでは人となりもまだ分からず、はじめはどう接するのが良いか少し戸惑いもありました。しかしそんな不安はすぐに吹き飛んでしまうほど、とても優しくて楽しい方々ばかりでした。初ツアーで本当にお客様に恵まれた、というのが正直な感想です。そしてスタッフの安藤さんの明るさと添乗員のHさんのユーモア溢れるキャラクターも相まって、全員がすぐ打ち解けていったような気がします。


バス車内!


登山はやはり生易しいものではありませんでした。それでも、普段からお身体を鍛えている方や個人山行で練習してこられた方もあり、皆さんが事前にミウラドルフィンズの低酸素室で高所順応もされていました。力足らずで、全員とはいきませんでしたが、多くのお客様が登頂され、そして皆さんが元気で下山されました。帯同医としてこれ以上ない成果と思っています。


頂上台地を進む!


しかし、課題は山積みです。登山中、お客様の健康状態把握ためにも、そして今後の山岳医療の発展のためにも、様々なデータをとらせてもらいました。現場で現地ガイドの要請も聞きながら、お客様に対して難しい判断をしなければならない場面もありました。長い長い下山中、さまざまな反省点や改善点やアイデアが頭の中をグルグル回っていました。キリマンジャロ登山について、考えることはいっぱいです。


ご来光!


そうした意味でとても面白い山だと思います。この6日間は山岳医として本当に多くの学びを与えてくれました。


みなさん本当に本当に良い時間をありがとうございました!


さて、そのデータやアイデアを整理する時間も無いまま、今日からまたカナダに行きます。あと1時間後にフライト。今度はカリマーのお仕事です。カナディアンロッキーでスノーハイクやアイスクライミングの撮影です。


Canmore訪問はこれで3度目ですが、アイスクライミングで行くのは2度目、2017年のお正月ぶりです。


テンション鰻です!!お買い物もするぞ!

東北の高校生の富士登山2018に参加しました

昨年に引き続き、今年も「東北の高校生の富士登山」に医療班スタッフとして参加してきました。


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参加した高校生たち数年分の寄せ書きが詰まった横断幕!




「東北の高校生の富士登山」は、故・田部井淳子さんの想いから発足した企画で、今年で開催7年目となる一大イベントです。
元々は、東日本大震災で被災された方々を励ますためのハイキングに端を発しているそうで、次世代を担う東北の高校生たちに富士登山に挑戦してもらい、今後の日本、東北を盛り上げていって欲しいという淳子さんの願いのこもった登山企画です。



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初日は六合目まで。雲海荘と宝永山荘にお世話になりますが、女子生徒と医療班は昨年同様雲海荘に宿泊しました。




私自身は、知り合いの山岳医のつてでこの企画の帯同医師のお話をいただき、2017年から関わらせて頂いています。
2016年に他界された田部井淳子さんのことはもちろん存じていたものの面識はなく、私がはじめて参加した昨年にはそのお姿はすでにありませんでした。でも、古参のスタッフの方々が熱く語る目線の先には、プロジェクトの先頭に立って引っ張ってこられた気丈な淳子さんの笑顔がくっきりと浮かぶようで、淳子さんを知る方々の中で今も生き続けるその存在感をひしひしと感じていました。



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はじめての登山、はじめての3000m超の高所に苦戦しながらも、粘り強く頂上を目指していく高校生たち。





未だ男尊女卑の風潮が根強かった1960〜70年代において、粘り強く信念を貫き通し、女性にも困難な冬壁が登れるということを身を以て証明したパイオニアである淳子さんは私の憧れです。そして、やはり先鋭的なクライマーである旦那さんの政伸さんとお二人は、互いの登山を尊重し支え合える素晴らしい山好きご夫婦で、クライマー夫婦である自分にとって理想のご夫婦でもあります。


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高校生96名が無事山頂へ!



高校生たちが無事登頂すると、大人のスタッフの皆さんは天国の淳子さんにご報告されています。
私もこのプロジェクトのお手伝いができて本当に光栄です。



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医療バックには、patagoniaのブラックホールキューブ(誕生日プレゼント!)が便利に使えています。
サイズはミディアムかな?ボスミンなどのちょっとした注射薬に外傷セット、外用薬、吸入薬、聴診器、内服薬(鎮痛剤、抗菌薬、風邪薬、芍薬甘草湯などの漢方、抗アレ薬、ステロイド、胃薬、整腸剤、ダイアモックスなど)、エアシーネ、SpO2モニタなどを入れています。
この他に、今回は輸液500cc×2、経口補水液500cc×1、OS-1パウダー×3を歩荷しましたが、懸念された熱中症は出ませんでした。


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今回は下山時に捻挫があり、スタッフと相談の上9合目からの背負い搬送となりましたが、難しい判断でした。
結果的に大事には至らず、翌日にはその生徒さんの症状も軽快して歩行可能になりましたが、むしろ人を一人運ぶということがいかに大変かを目の当たりにしました。

今まで、搬送は実習のみで実際の山行で行ったことはありません。今回は屈強なスタッフの男性が大勢居ましたし、もろもろの状況を総合的に評価した結果こうした選択となりましたが、それでも思っていた以上に大変な作業でした。

病院など設備の整ったところでならできることが、山の中ではその半分もできないことが多い中、ケースバイケースでいかに最良の選択をするか、それを医学的な側面も含め判断するのが私たち山岳医の役目です。
傷病者だけでなく、搬送にあたるスタッフが怪我をしたり体調不良を生じるリスクについても考えなければなりません。
山岳救助では傷病者の安全より救助者の安全が優先されます。

この他にも、もっとこうした方が良かったのではないか、この判断はどうだったのか?と考えさせられる、勉強になることは数多くあり、実地経験を積むことの重要さを痛感しました。



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下山日。達成感に満ちた高校生たちの後ろにスタッフの山脈がそびえたつ





またこのイベントのもう一つの魅力は、高校生という若いエネルギーの塊と直接触れ合えることです。
普段の生活ではまず関わることのない世代たちとの濃密な三日間には新たな発見が盛り沢山です。



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行き帰りのバス車内や山小屋の夜には、経験豊富で魅力的なスタッフの方々との交流もまた濃密な時間です。



田部井淳子さんが掲げた目標は、登頂高校生1000人達成。今年で575人が登頂し、プロジェクトはまた来年へと続いていきます。
今後もこの素晴らしくも楽しい企画のお役に立てたら嬉しいです。



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名物の富士宮やきそばは鰹でなく"鯖節"がかかるのがポイントだそう



みなさんお世話になりました!
三日間お天気に恵まれて本当によかった!

WALS講習を受けてきた

Wilderness Medical Associates Japanが主宰するWilderness Advanced Life Support(WALS)講習を受けてきました。
http://www.wildmed.jp/wilderness.html

名称未設定


昨年に引き続き2度目、リフレッシュでの参加です。


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フィールドワークにて。傷病者評価中。


このコースはワールドスタンダードになっている野外災害救急法の医師向けコースです。
基礎的な医学知識や患者初期評価、ALSなどは学んでいることを前提として、更にその先にある野外救急ならではの難しさだったり工夫、頭の使い方などをディスカッションするというのが主な内容です。
山の中だけでなく、街中や病院での医療が通用しないありとあらゆる場所で、医療者として何ができるかを、WMA PresidentのDavid Johnson(DJ)に指南してもらいながら、皆んなで一緒に考える場。
ものすごく頭を使うし、朝は8時半から、夜も夕食をはさんで22時くらいまで、座学とシミュレーションをみっちり行います。


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今そこにあるもので最前を尽くすという考え方を学ぶ。


この5日間の時の流れは本当に濃密。全行程が終了した帰路では「しっかりとトレーニングを受けた」という充実感と疲労感がすごいです。2日経った今もまだ、その余韻に浸っているような感じです。
そして、前回開催からたった1年しか経っていないのに、内容はほとんど全てのカテゴリでアップデートされているという素晴らしいスピード感!DJに「毎年アップデートできるよう心がけているけど、今年も受けてよかったと思う?」と聞かれ、「本当によかったと思います!」と力強く答えました(笑)。


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尊敬するDJと!


そしてこのコースのもう一つ素晴らしいところは、山や自然、アウトドアアクティビティを愛する日本全国の医療従事者とお知り合いになれること。そして、DMATや救急医療の現場で日々Emergency Medicineに携わっている医師や看護師、救命士の方々と交流できることです。

DJ自身が38年にわたって北米でばりばり救急医をやってきた実力者。かつ、アウトドアアクティビティも幅広く嗜んでおられます。
こんなに天気の良い秋の3連休に岩登りができないなんて、普段の私ならフラストレーションが溜まりに溜まってしまうところですが、講習が楽しすぎて、ここにいるスタッフ、講習生、全ての人たちが素敵すぎて、全くと言ったら嘘ですが(笑)、岩のこともすっかり忘れてしまうほど没頭できます。


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朝は飯盛山まで走ったり!


私が認定山岳医講習を受け始めた6年前は、どちらかというと仕事よりも自分のクライミングがしたくて、大手を振って山に行けるようになりたいからとりあえず受けてみよう、くらいの気持ちしかありませんでした。
それが6年たった今では、日本の山岳医療の発展について本気で考えはじめています。その年月のなかで熱い想いを抱く沢山の同志と出会い、漠然としていたその理想がいまや実現可能なものに思えています。
そんな「変革」のほんの一端でも自分が担えるのなら、こんなにワクワクすることはありません。


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トレイルランナーの先生方にひっぱってもらえてこの美しい景色が見れました。みんなすごくいい顔!


相乗効果で、普段の診療のモチベーションも上がっています。数年前はいやいやだった病院の全科当直も、救急医療を学べる貴重な機会と思えばとても楽しいです。


ところで、講習が終わって久しぶりに出勤したら、今年の7月に参加させて頂いた「東北の高校生の富士登山2017」の報告書が届いていました。

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この富士山での3日間も、山を愛する人たちと未来に不安と希望を抱く若々しい高校生たちと交流できた、とても素敵な時間でした。活動報告や感想文などを読んでいるとその時のことが蘇ってきて、自然と笑みが溢れました。


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ディスカッション中。


改めて、私は山が大好きで、山が大好きな人たちが大好きで、そんな中で一生を過ごしていきたいと心から思いました。
「山を仕事にする=プロクライマーになる」ことは、実力的にも無理だし、そうしたいとも思いません。医師というプロフェッショナルとして山と深く関わっていくという生き方が私の道だと、今はそう信じています。
救急隊とともに現場に行ける山の医者。
何年何十年かかるか分かりませんが、必ずその未来を実現したいと思います。
今回またモチベーションUPさせてくれたWALS講習に感謝。お世話になった皆さん、本当にありがとうございました!


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講習の山場となる大規模災害のナイトシミュレーション、出陣前の集合写真!


・・・さて。とはいっても、まだまだ自分のクライミングがしたい気持ちも強いお年頃・・・ということで^^;
今週末こそは、登るぞー!!

プロフィール

chippe

Author:chippe


肉好きchippeのブログへようこそ!
2006年10月 山歩きを始める。
2007年9月 クライミングを始める。
山岳同人「青鬼」所属。
「メラメラガールズ」所属。
国際認定山岳医。
「カリマーインターナショナル」アンバサダークライマー。
現在は無職、旅人。
旦那さんはpecoma。

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