2023/11/16
今年もWALSコースを見学した。

主に一般人を対象として野外災害救急法を教えているWilderness Medical Associates Japan(WMAJ)が年に一回開催するWilderness Advanced Life Support(医師向け)コースに、今年もWMAJアンバサダーとして見学という形で参加させて頂きました。
過酷な環境や災害などの状況でも「いのちをつなぐ」救急法、WMA野外災害救急法
https://www.wmajapan.com
このWALSコースは、普段一般人を対象として教えられている救急法を、医師、看護師、救急救命士といった医療従事者たちが実践体験し、最新の医学研究論文に根拠をもとめたり、各職種の臨床経験なども持ち寄りつつ医学的議論を深めていく場でもあります。
昨年は子供がまだ小さく、かつ私一人でみる必要があったので、講習の半分くらいしか見学出来ませんでした。しかし今回はペコマお母さんに来てもらい子供をみてもらえたので、全4日間ともしっかり参加することが出来ました。

富士山のお膝元、御殿場での濃密な4日間がはじまります!
このコースは、WMA Internationalの前カリキュラムディレクターであるDavid Johnson医師(DJ)が毎年来日して、彼の講義、インストラクションのもと日本人インストラクターが講習を行なってきました。しかし、今年からDJの訪日はなくなり、完全日本版WALSとして開催されることに!2016年からWALSを受講している私としては「一体どんなWALSになるんだろう?」というワクワクもありつつ、DJに会えない寂しさもありつつ。

でも毎朝"DJ time"があって、オンラインでDJのお顔を拝見できました。70代半ばでも現役バリバリです!

医療アドバイザー、インストラクター陣は精鋭揃い。完全日本版WALSも大満足の内容でした!

座学もあるけれど、フィールドで身体を動かす学びがメイン。救急現場では瞬発力が大事です。のっけからいきなり変な体勢の傷病者の評価をさせられる。

フィールドでの対応には難しい判断が沢山生じる。「ふかふかの斜面でやるCPR(心肺蘇生)には果たしてどの位の意義がありますか?」とインストラクターに問われ言葉に詰まる受講生たち。

バスケット搬送で悪路をゆく。

ちっちゃい子供は肩車搬送。

野外の重症外傷搬送に有効な様々なデバイスの見学。

「不安定な怪我の固定のポイントは?」お作法ではなく、本質的理解が伴っているから、難しい形の固定にも対応できる。

暗く寒い、負荷のかかる環境での傷病者対応。WALSでは、コース終了前日の夜に大規模災害シミュレーションがあり、そこへ向け受講生の緊張も徐々に高まっていきます。

脊椎損傷が疑われる傷病者は全例全脊柱固定!ロードアンドゴー!でもそれは都市部救急の話。野外災害救急法はそうではありません。脊椎の評価もしっかりして、リスクとベネフィットを天秤にかけ、分析的思考をすることで命を守る行動に繋げます。

WALSでは、病院では見ることのない、野外救急で役立つ様々なデバイスの紹介もあります。

「ヨットクルーズ○○日間、持っていく医療資機材は?」医療従事者向けのコースなので、持って行く薬剤の具体的な名前もリストアップし、みんなでディスカッションします。
WMAが通常開催しているWFA、WAFA、WFRというコースは、一般人向けに、医学的な内容にも触れつつかなりハイレベルな野外災害救急法を教えています。にも関わらず、このコースを受講すると誰もが同じレベルで傷病者対応できるようになるといいます。医療従事者だけでなく、現場に居合わせた人がこうしたスキルを持っていれば、都市型救急システムが機能しないフィールドにおける救命率は格段に上がります。
また、医療従事者を対象としたWALSコースは、そのカリキュラム自体を更に掘り下げるという点でとても面白いです。そして、野外災害医療、救命といったことに高いモチベーションを持った受講生が集まるので、魅力的な人たちとの出会いも毎年の楽しみです。
これからも、WMAの講習をより多くの人へ広め、自分も常に勉強を続けて、山岳医として精進していきたいと思います!