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フィールドアクティビティにおける女子トイレ事情 〜クライマー的、医学的観点から〜

2019092006300944f.jpeg2019年 ヨセミテにて。


生物学上れっきとした女子である筆者は、大学4年の終わりに登山に目覚めてからというもの、これまでずっと山に関わる様々なフィールドアクティビティに興じてきました。


2019092006301363e.jpeg2019年 シャモニにて。


無雪期や残雪期の山歩き、百名山ハントにはじまり、ロッククライミング、無雪期のバリエーション登山、沢登り。少しずつフィールドを広げて行き、ビッグウォール、アイスクライミングや冬季登攀、バックカントリースキーもかじり出し、ごく最近ではトレイルランニングにも興味を示して収拾がつかなくなっています。身体が最低でも2つはほしい(笑)。


IMG_8342.jpg2016年 El Capitan "The Nose"にて。


そんななか、フィールドでのトイレ問題というのは常につきまとってきました。男性ならそれほど問題にならない場面でも女性にとっては時に致命的にもなり得ます。


maekawaootaki.jpg2012年 前川大滝沢滑川大滝にて。


この記事では、私自身の経験と独断およびこのテーマに関してよく纏まっていたREIの記事(最下部に記載)に基づいて、そんな女子のトイレ事情について思うことを書きたいと思います。
そして、私は(一応)医師でもありますので、医学的な視点も附記出来ればと思います。


コンプライアンス遵守の精神に則り(笑)、舞台は"どこか海の向こうの国でのアルパインクライミング"としましょう。
もちろん"海の向こう"であっても、トイレがあるところではトイレでする(努力をする)し、止むを得ず"そこらへん"でする際には環境に配慮することが大前提です!


IMG_8335.jpg2018年 タイプラナンビーチにて。


さて。前置きが長くなってしまいましたが、ひとことでいうと排泄の面で女性は男性と比べ圧倒的に不利です。

第一の理由はもちろん、泌尿器系の形の違いです。リーチや体格差についてなら、必ずしも女性のほうが不利とは言い切れませんが、この点に関してだけは女性が絶対的に不利と言えるでしょう。

それにもちろん、社会的な問題、羞恥心なども付け加えて然るべきでしょう。コアな女性クライマーの方々はそこらへんはあらかた解決済みかと思いますが、常識的な羞恥心は無視できない問題です(笑)。

形の違いで女性が不利になるのは主に2点。1点は、排尿のしにくさという利便性の面。そしてもう1点はもっと重要、衛生面です。

女性は男性ほど排尿が容易でないし、尿路感染症にもかかり易い。これが野外女子トイレ事情の悩みのタネです。


では、みなさんどのようにしてこの"不便"を克服し、大好きなクライミングを楽しく続けているのでしょう?
以下、場面ごとに考えてみましょう。


201909200630163b8.jpeg先週の肉。あ、今更ですが写真は記事の内容とあまり関係ありません。


1."pee-bottle" 通称"ションポリ"のおはなし。

悪天候時の冬山や高所登山など、テント内で用を足さざるを得ない時があります。そんなとき男性は"それ"をひょいと取り出して、尿器、俗称"ションポリ"なるものに突っ込んでしまえばハイ、終わり。失敗することはまず無いんじゃないでしょうか(予想ですが)?


IMG_1564.jpg2019年 デナリBCにて。


しかし女性の場合そうはいきません。解剖学的に外尿道口がかなり奥の方に引っ込んでいて、かつ小陰唇と呼ばれるヒダの中に隠れています。生々しい話になってしまいますが、これは悲しくも無視できない現実です。
狭いテント内で小さな的めがけて排尿するのは生易しいことではなく、練習と慣れが必要になります。

そんな女性の尿路の構造を理解すると、テント内での排尿は、ひざまづいて、"ションポリ"を適切にあてがって、行う必要があります。

そこでまず、用意すべきマイ"ションポリ"の口は直径7cmくらいのものを推奨します。
これは私が勝手に推奨しているだけですが、外性器全体を覆えてかつ肛門は外せるくらいの大きさとなるとこのくらいです。
外性器が複雑な形状なので、これより小さいとどこかしら漏れる可能性があり、これより大きいと肛門にかかって不潔になります。

REIの記事では👉コチラを推奨していますが、私もこのナルゲン容器はおすすめします。
ただ、2.8Lは大き過ぎると思います。これの1Lタイプが日本国内でも売っていますのでそちらを推奨します。


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NALGENE:フォールディングカンティーン1L。写真は"sumally"から転載



一般的な成人の1回尿量は200cc〜400cc、1日に1500cc程度ですが、高所や寒冷地では高度順化、低体温症・凍傷予防などの観点から積極的に飲水すべきで、その場合は尿量がこれより多いかもしれませんし、ダイアモックスを内服しているとさらに多いでしょう。
ションポリの容量が500ccだと下手したら1回で捨てに行く(テントの外に出る)必要が生じます。でも2Lは多すぎ。そんなに溜め込んでいたら雑菌も繁殖しやすくなります。

それに、1L以上尿が入った重たい容器をあてがって、うまくいかないなってやっていて、もしひっくり返したら・・・。考えたくもありません(笑)。

1Lくらいが妥当なのではないかと思います。


ちなみにこのナルゲン容器のように柔らかい素材でない(ボトルタイプなど)ものを使うときは、ひざまずいてあてがう便宜上500cc程度が限界かと思います。(移し替える別容器があれば外へ捨てに行く手間も省けます)


どちらにせよ、練習なしぶっつけ本番だとテント内で悲しい思いをするので、お風呂場などで練習してから使いましょう。


IMG_0699.jpg2019年 デナリ国立公園にて。


老婆心ながら、冬に多量のアンダーウエアなどを着込んだ状態で、狭いテント内でやろうとすると意外と難しいです。なかなかうまくいかない人は、恥ずかしいでしょうが一度鏡で自分の"解剖学的構造"をよく観察して理解し、再トライすることをおすすめします。

それとREIの記事にも書いてありますが、"ションポリ"には消えないペンなどで派手に印をつけておいて、決して普通の水容器と間違えることのないようにしましょう(笑)。


20190920063016c56.jpeg今週の肉。


2. "funnel" "じょうご"のおはなし。

大便なら男女に差はないものの、女性は"大"より回数の多い"小"でさえ、下半身を露わにしなければなりません。それが吹雪の中であっても、断崖絶壁でも。とくに冬は衣類が濡れたら大問題です。背に腹はかえられないから、勇猛果敢に下半身を露出するしかありません。また、同じ理由から、通常は"羞恥心"というか男性メンバーへの"心遣い"から、女性は他のメンバーから見えにくいところまでわざわざ移動して排尿しがちです。それが安全上の問題を生ずる可能性もあります。


20190920063016847.jpeg2019年 シャモニにて。


この問題を解消すべく、じょうご型の女性用尿器がいくつか販売されています。使っている方も周りに何人かいらっしゃいます。これを"適切に"あてがって、チューブの先端を服の外へ出すことにより、男性と似た形で、ズボンをおろさず用を足せるというものです。


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REIが紹介する女性用尿器の一例※この他にも多くの類似製品が(欧米では店頭で普通に)売られていますが、国内ではみたことがありません。通販で買えます。


しかしこれもかなりの練習が必要です。また、用を足した後はこの尿器を拭くか何かして清潔に保つ必要があるでしょう。
実は私も数回これを試したのですが、あまり好きになれず使うのをやめてしまいました。理由は以下の通りです。

・思った以上に難しい。時間がかかる。
・これを使い始めるより前に、サッとズボンをおろして素早く用をすませる術を身につけてしまったため、あまり必要性を感じなかった。
・野外で使用後、尿で濡れたコレの処理も面倒。(拭くための紙とか、これを入れる袋を用意したりとか)


201909200630160c2.jpegこの間。Fairheadにて。


ちなみに、私は普通のロッククライミング(マルチピッチなど)のときはハーネスを履いたまま小用を足せます(=ハーネスを履いたままズボンを下ろすことができます)。また、小用のあとの"拭き取り"はおりものシートで代用しています。そして、この手の複雑な作業は冬季登攀中はほぼ不可能と感じます。(かつ、羞恥心はもちろん克服済みです(笑))そのため、このじょうごを自分のクライミングに取り入れるメリットはほとんどありませんでした。


ちなみに、この"じょうご"と"ションポリ"を組み合わせて使うことも可能です。
(REIの記事には、それによりシュラフ内でも出来るようになると書いてありますが、ものすごい上級者とお見受けします(笑))


20190920063012213.jpegおうち肉。


3. 冬のクライミングのおはなし。

上にも書きましたが、マルチピッチであっても、無雪期であれば、ハーネスを履いたままズボンを下ろすことは難しくありません。まだやったことない!という方は是非練習してみてください。すぐできるようになると思います。
ですが、冬季は今のところ、同じ手法で出来たためしがありません。冬のクライミング中の排尿は未だに私の悩みのタネです。
というのも、私は女性であるだけでなく、人一倍頻尿なのです・・・。そのため、壁のなかで突如として我慢の限界を超えることもしばしばです。


2019092006301692e.jpeg2019年 シャモニにて。


私は以前、2月の北アルプス明神の壁のなかで、不安定で"プア"な支点に3人サクランボ状態となったことがありました。そしてその最中にずっと我慢してきた尿意が限界を迎えました。そのとき、私はこの挑戦的なクライミングを前に、普段よりも下準備をしていて、"おむつ"を履いていました。このときはそのおむつに助けられました。というのも、その夜はサイトに帰ることができず、一晩おすわりビバークをすることになったからです。忘れもしない、谷口けいさんと登ったウィンタークライマーズミーティングでの出来事ですが・・・。
このときおむつがなかったら、私は下半身ずぶ濡れ状態で寒い一夜を明かす必要があり、足指の凍傷などは免れなかったでしょう。
いざという時はこうしたツールも役に立つと思います。


2019092006301569a.jpegおとといの岩。


これはイレギュラーな例ですが、普段のウィンタークライミングでは、私は次のような方法で小用に対応しています。

・120cmスリングでチェストハーネスをつくってそちらに荷重をうつし、ハーネスをぬいでヤッケを脱いで露わになってする。
・これらの作業は手袋をしているとかなり時間がかかる。素手になってサッと済ませてしまう方がいい場面もあるので、そこら辺は臨機応変にやる。
・少しでも尿意を感じたら我慢せず早めにするようにする。

でもシビアな登攀では、寒い環境に長時間さらされながらもなかなか排尿のチャンスが訪れないことだってザラです。
冬の登攀時のトイレはいまだに大きな大きな悩みです。はあ・・。(何かオススメな方法がある方は教えてください!)


医療従事者どうしの会話だとここで、「バルーン(尿道留置カテーテル)入れて登りたいよねー」ってところに行き着きます(笑)。


20190920063016ea9.jpeg一昨日の海岸!


4. 野外でもケアを忘れずに!尿路感染症を予防するために。

女性の尿路は常に感染の危機にさらされています。尿道が短い=膀胱までの距離が短いとか、外尿道口と肛門が近いなどの形態上の理由などがあります。男性のように尿のキレもよくないので、排尿後は拭き取る必要があります。そのままにしておくと皮膚粘膜トラブルや尿路感染症の原因となりますし、現に下着が濡れちゃうからみなさん何かしらで拭いてらっしゃるかとは思います。


IMG_8345.jpg2015年 日光月山雄滝にて。


私は1日はおりものシート1枚で乗り切り、1日の終わりにウエットシートなどで清潔にして、新しいおりものシートに取り替えています。排尿ごとに紙を使うのは資源とかゴミの問題もありますが、手が汚れたままだとそれがリスクになります。おりものシートなら、服を身につけたあとでちょちょっと吸収させればいいので、クライミングなどで手が汚れたままでも簡単安心です。


その他、陰部を清潔に保つ工夫として、長期間お風呂に入れない環境ではあらかじめ隠毛をきれいさっぱり剃ってしまうというのも有効です。最近では、主に介護が必要となったときに備えて医療用レーザーでVIO脱毛するという人が日本でも増えてきました。無駄な毛(いわゆるムダ毛(笑))がないほうが隠部は清潔に保てます。


また、何をするにもまず、手指の清潔がとても重要です。隠部を拭く時だって、手が汚れていては意味がありません。
手指を清潔にする方法として、医療関連施設でも推奨されているのがアルコールによる手指消毒です。そこで、野外の簡易トイレや山小屋などにアルコール消毒剤が設置されている場合は是非使うようにしてください。以下に正しい手指消毒方法について分かりやすく書いてあるサイトをリンクしておきましたので、時間のある人は見てみてください。完璧にやる必要はないですが、知っていて損はないと思います。


IMG_8343.jpg2016年 黒部上ノ廊下にて。


ちなみに、流水による手洗いのときもこれと同じ方法で行います。でも10秒程度の手洗いでは雑菌の除去効果は低く、アルコール消毒に軍配があがるようです。


手洗いについて詳しく書くにはもうスペースが足りないし、テーマが変わるので今回は割愛します。


少しは参考になりましたでしょうか?参照記事1は読みやすい英語なので、英語が苦手でない方は是非一度読んでみてください。
私も野外トイレ最高グレードを更新して、より快適なクライミングライフを送りたいと思います!


20190920063016d17.jpeg先週の乾杯!


参照記事1<GIRL TALK: HOW TO PEE IN THE BACKCOUNTRY>
https://www.rei.com/blog/hike/girl-talk-peeing-in-the-backcountry


参照記事2<手指消毒手順>
https://med.saraya.com/who/tejun.html

2019/7/8 Ben Nevis/ Tower Ridge (IV, 3)

Cuillin トラバースを終えて、改めて明日以降の天気を確認。しようと思ったけど電波がない!
Ben Nevisへ向かう方向へと移動し、電波があって一晩車中泊出来そうな場所に車を停めました。

野宿はできません。なぜなら"みっちゃん"が居るから!!!

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悪天候の名所、Ben Nevis。


やはり明日は午後まで天気がもちそう。で、明後日以降は帰国日まで雨です。


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4時起床。眠い、眠すぎる。

少し残っていた昨夜のポテチとワインをちびりながら、ベンネビスはそれほど大きい山じゃないしすぐ終わるだろうと結論づけました。「明日スーパーが開く時間に合わせて移動して、朝飯食って、タワーリッジ行こう!」


タワーリッジはベンネビス北壁のバリエーションの中でも簡単なルートで、グレードはたしかD(Difficult)。(前々回のブログのグレード表参照)
一応昨日と同じくらいのギアを持って、基本ずっとコンテで登るつもりで出発しました。


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朝ごはんを食べながらアプローチ。


Ben Nevis North Faceルートと呼ばれるトレッキングルートから北壁基部にあるC.I.C. hutを目指します。
ベンネビスに登頂する一般ルートは西側にある緩やかな尾根で、登山口も全く別のところにあります。


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C.I.C. hutは冬もクライマーたちのベースとして活躍します。予約制で、ググると専用サイトが出てきます。事前に鍵を借りて使用するそうです。



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水も取れます。駐車場から1時間半くらいでした。


今回登るTower Ridge取り付きはこのhutから目と鼻の先。
トポには「顕著な尾根から取り付き、あとはアイゼンスクラッチを辿るだけ!」とあります。合理的で分かりやすい!
一応クライミングシューズに履き替えてコンテで登ります。


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レッツクライミング!

でもずっと2級程度?です。
3点支持は要るけどロープは要らない。そんな感じです。
地形も単純なのでただただ上を目指せばいいだけです。


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アイゼン跡をたどって


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ひたすら登る。息が切れます


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先行が2パーティいたけど、結構どこでも登り放題なので抜きやすい


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予報は曇りで、午後から崩れるとのことでしたが晴れて来ました!


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あっという間に最終ピッチ。向こうに山頂が見えます。


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山頂は大勢の登山客で賑わっている。平日なのに!流石はイギリス最高峰!


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トップアウトすると鳥が歌っていました。


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本来の山頂・・。流石はイギリス最高峰!(標高1344m)登頂は断念しました(前日の疲れが原因)。


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こうして見下ろすとタワーリッジかっこいいね。冬はもっとかっこいいのでしょう!


さ、さっさと降りてビール飲もう!


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トレイルはこのあといったん東のコルにおり、ぐるっと尾根をまわって北東にあるピークに登ってから下山します。でも山頂の東側、コルの手前の沢地形のところにクライマートレイルと思わしきガレ道があり、トレイルをかなりショートカットしてNorth Face Trailに合流できます。行きには1匹もいなかったのに、帰りはそこかしこで羊の声がしていて、小屋までくると親子が草を食んでいました。


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小屋からはラン。15時くらいには戻ってこられました。振り返ると誇り高きBen Nevisが黒い雲を集めています。その雲がものすごい速さで流れています。すでに山頂は見えなくなっている。天気がいいうちに登れてラッキー!
("ベンネビス"はスコットランド・ゲール語で"有毒な山""頂に雲がかかった山"という意味だそうです)



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めっちゃ眠かったけど、やっぱり行ってよかったよね!(行きの運転中縁石に乗り上げそうになったのは内緒です)
下山してふもとの街Fort Williamに到着。ここは村ではなく街です。栄えてます。



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通りすがりにいい感じの宿を見つけチェックイン。さっそく繰り出しました。ウイスキー専門店やスコットランド名産品のお店などがありました。コチラのレストランで、ハギス(羊の内臓の腸詰)などのスコットランド料理を頂きました。


世界には楽しくて美しいところがたくさんあります。イギリスは日本から遠いし、近くに巨大なヨーロッパアルプスがあるしで、あまり訪れる機会がありません。私たちは人生の限られた時間とお金を費やし、そうした世界各地を取捨選択して巡るわけですが、ペコマが留学しなければ、イギリスをこんなに色々とまわることもなかったでしょう。でも、唯一ナポレオンに屈しなかった国としても誇り高く、かつ4つに分かれていてそれぞれに旗があるという、日本人には理解しがたい民族意識?みたいなものもあったり、そして山は低いけれど独特のクライミング倫理観があってその伝統(Traditional)が大切に受け継がれている、日本人クライマーも見習いたい文化があります。
イギリスは面白い国です。The UK is an interesting country!
実は、また9月にもNI(北アイルランド)を再訪してクライミングをする予定です。
この際どっぷりとイギリスを満喫しようと思います!

2019/7/7 Isle of Skye/ Cuillin Hills traverse

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Skye島のCuillin Hillsトラバースは、スコットランドで人気の岩尾根スクランブリング縦走です。
大抵の人がビバークを入れて全山縦走しますが、タイムアタックをする人もいるようです。
スコットランド在住の日本人の方に色々と情報を聞いていた中でオススメされ、行ってみようということになりました。


でも、全山行こうとしたらたぶん、車2台とか、何らかの輸送手段が必要になります。
私たちはワンデイで完結したかったので、なんとか歩いて戻れるようなラウンドトリップを計画しました。


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キャンプ場の駐車場に車を置いて海からスタート。一番北側のピーク1つを端折って降りてしまいますが、ほぼ全ピークを踏んでトレイルに合流し、車道を目指します。できる限りヒッチハイクを試みますがだめなら4マイルの車道歩きでフィニッシュ!


朝4時に宿を出て海辺のキャンプ場を目指します。

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道路で寝ている羊たちを起こして走ります。岩岩した山並みが見えて来た!


車をとめてパッキングし、6時半くらいに歩き始めました。

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ハーネスは装着して、ペコマが35L、私がトレラン用の20Lザックに、60mダブルロープ1本(ちなみにロープは37mあれば足りるそうです)、キャメロット#.3〜#1を1セットとナッツ1セット、各自クライミングシューズと水1.5〜2リットル、行動食に防寒具を携行。

はじめはトレイルを辿り、途中から外れて標高350〜400mくらいをトラバース。


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途中、鹿の大群と遭遇しながら


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一番海側のはじめのピークへ、南西斜面を適当に登ります。草付きとガラガラのガレ場を登っていくと・・


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いきなり細い尾根の上に出、切れ落ちた向こう側の景色が開けました。縦走開始です!


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朝はガスが濃かったものの、歩いているうちにどんどん視界がひらけてきました。基本ケルンなどはないけれど、よく歩かれているようで踏み跡は明瞭。クライミングパートもよく見れば登られているラインがわかります


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ザ・尾根!とでも言うべき素晴らしい岩尾根をよじ登り、走り、下ってまた登ります。はるか下の湖のほとりでは・・


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ピクニック?楽しそう!


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そして、そこかしこにビバーク跡というか、ストーンサークルがあります。この景色の中でビバークなんて最高ですね


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前方に見えているのがこのラインの核心部となるギャップ部分。尾根の地形は複雑で、通れるところは比較的限られているのでルーファイが大切です。ルーファイを間違うとリカバリーにクライミング能力が要求されます(笑)。


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こんな絶壁のギャップも結構あり、行程の後半になるほどその複雑さが増していきました。ここは懸垂で降りたあと、スタカットにしてS(Severe)のラインを登りました。


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さあ、今日は長い1日なのでガンガン行きましょう。前方に見えているピョコンとしてるのは"Inaccessible Pinacle"です。かっこいいね!


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ここは登る必要ないけど、せっかくだから登ろうよ!ということで登りました。


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「でもさ、時間大丈夫?」「23時まで明るいんだから大丈夫でしょ!だってもうあそこに見えてる尾根を降りるだけでしょ?」って言うから、なにか勘違いしてるなと思い、改めて現在地を確認。今私たちがいるところは縦走路の真ん中で、縦走を開始したのが朝9時半、今は15時!縦走路を半分くるのに5時間半かかっています。


ペコマは「えーー!今まだココなのー!?」と驚いてます。もちろん降りる尾根はまだ見えていません。単純計算で、最後のピークまであと5時間半、その後尾根を降りて車道に戻るまで早くて2時間と見積もっても、22時半になります。その時間になればこの田舎道を走る車もありそうになく、ヒッチハイクができなければさらに6.4kmの車道歩きが待っているのです!


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ということで、こっからはマきマき!ここも、赤いクライマーが登っているラインで行きたかったけど、2パーティ順番待ちしてるから仕方なく左を撒きます。


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こっからずっと歩きなら5時間半もかからないでしょ!とタカをくくっていましたが、後半のほうがむしろ地形は複雑になって行きました。途中行き詰まって、持って来たトポを参照しつつ進みます。


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こんなところも!


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最後のピークと降りる尾根を視認できてからも激しいギャップの応酬は続きます。3級程度の岩登りと懸垂下降を繰り返し、最後のピークを踏むころには結局20時半を回っていました。


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行動食も水もそろそろ尽きるけど、車には何もないね。スーパーは閉まるし、たぶん宿にも泊まれない。でもたのしいね。


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あとは何も考えずひたすら歩くだけ!


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やっと尾根を下りおえて21時半過ぎ、ハイキングトレイルに合流。そこから1時間ほど歩くとやっと車道が見えて来ました。
振り返ると、歩いて来た峰々が夕焼けに燃えていました!



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車道に出る前にちょっと休憩し、「さあ、こっから4マイル、がんばりますか!」と歩き始める。するとほどなくして車のヘッドライトがこちらへ近づいてくるのが見えました。親指を立てて待っていたら止まってくれました。ラッキー!「キャンプ場?乗れ乗れ」と、かなりちらかった巨大なバンに乗せてもらって車道歩き回避。日付が変わる前に車に戻れました。


Cuillin トラバースは楽しい!スコットランドに行く機会があったら是非登ってみてください。

アラスカ遠征一年目終了

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どーーん。
とムースがお出迎えしてくれるAnchorage空港。



アラスカからは5/25に帰国しました。
今回の遠征では得たものも失ったものもありました。ですがそれらは単純に差し引きで考えられるようなものではありません。


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今回の遠征メンバー、"Team AOONI"の3人。Talkeetna Air Taxi駐機場にて出発前。


得たものは経験だったり教訓だったり悔しさだったり、質量はないけれどそれなりの価値は見出せるもので、
失ったものは登攀ギア、氷河の上でひたすら待ち続けていただけの"時間"。


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Mt. Hunter "Moonflower Buttress"のための装備たち。


ギアについては、総額(パーティ全体)にして50万円程度とわかりやすい数字で表すことができます。かけがえのないものを失ったわけではないけれど、喪失感は大きい。
そして、"時間"は人生においてもしかしたら最もかけがえのないものかも知れませんね。


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ランディング初日。超かっこいいMt. Hunter 北壁をバックに。


パートナーたちも冗談交じりに、「なんてコスパの悪い遊びだ!」「やってられん!」と悪態をついていました。
それでも、また行きたいって思ってしまうのはやっぱり病気なんでしょうか・・・
それとも、悲しいかな、これが本当にやりたいことだという確固たる証拠なのでしょうか。


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Anchorage空港には私だけ24時間早く到着。リアルな剥製がたくさん。


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"エアビ"しやすい空港です。

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買い出し風景。Walmartはみんなの味方。


4/27、アラスカ州の玄関口であるAnchorage空港にパーティ3人全員が集合し、その日のうちにデナリ国立公園の玄関口であるTalkeetna入り、そのままセスナに乗って夕方頃には氷河の上にいました。


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ベースキャンプとMt. Hunter。


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キッチンテント。掘りまくってツエルト張りを試行錯誤。ちゃんと作らないと寒い日や天気の悪い日はキツい



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天気がよければ外で炊事!


入山直後は気持ち悪いくらいのどピーカンで、これから3週間のクライミングに思いを馳せていました。


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4/29、Moonflowerへ!


ランディングの翌々日には早速、今回の大本命であるMt. Hunter北壁"Moonflower Buttress"に取り付きます。
付き合いはそれなりに長いけれど、今回のために一緒にトレーニングを積んできたわけではない3人なので、はじめは肩慣らしを、という意識がみんなの中にありました。


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出だしのベルクシュルントはギャップが大きすぎて、リードは右から大きく巻いてトラバース。フォローはユマールハング越え。


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2ピッチ目は氷壁。


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3P目は傾斜の強い雪と岩のミックス。M4ってこたあないでしょ、という感じでした。ラインは合ってそうだったけど



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4P目、大トラバース中。はじめの4ピッチ、どれも70mロープでいっぱいでした。


この日は4ピッチ目まで試登して、終了点を構築し3泊分のアルファ米、4日分の行動食、シュラフ、ウインドバーナー、ガス缶の入ったザックをデポしました。


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4P目にデポのカリマーザックちゃん。


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懸垂下降。登攀ラインの右に、ナッツで作られた支点が50〜60mおきくらいに作られていてそれを辿った。傾斜が強い


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取り付きにて登攀ギアをデポ。積雪でロストしないよう、デブリ跡のない雪面に埋め、先に旗をつけた3mくらいの竿を用意


天気予報はカヒルトナベースキャンプにあるエアタクシーの会社のテントで聞くことができます。
それをあてにして、今回は衛星電話もラジオも借りずに氷河入りしました。しかし実際はかなりざっくりな、あまり当たらない予報しか入手できませんでした(たとえば"couple of days snow"みたいな)。


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Lisaともう一人のお姉さんが2人で2週間交代でシーズン中まわしているんだという詰所


そしてその情報に振り回される結果となり、私たちはどうやら唯一の、かつ今シーズンは私たちだけに与えられていたチャンスを逃したようだと、入山1〜2週間後にやっと気づくことになるのです。


試登を終えてベースキャンプに戻ってからは地獄のような"待ち"の日々でした。
今シーズン、Moonflower Buttress登攀を狙っていたパーティとしては私たちが一番乗りだったようですが、数日後から他パーティもぽつぽつと入山してきました。でもその頃には、ランディング初日のような青空はなく、ハンター北壁の姿もいつのまにかガスの中に消えており、「壁、見た?どうだった?」とみんなから聞かれる状態でした。
そして降っては止み、1日か2日しかもたない晴天、また降って、と、壁はみるみるうちにまっしろけになって行きました。
その雪が安定する間も無くまたストームに近い降雪がやってくる。
取り付きにデポしたクライミングギア一式も完全埋没しないかどうか不安で、雪が落ち着いたタイミングを見計らっては埋めなおしに行っていました。そしてそれ以外の時間はひたすら読書をしたり、動画をみたり、ご近所さんとお茶会をしてストレス発散したり。
運動といえば、1日1〜2回の雪かきと、数日おきにキッチンやトイレを作りなおすための穴掘りくらいでした。


これが、入山してから2週間の生活の全てです。


そうして3人パーティのうちの1人、Tくんは時間切れとなり、失意のうちに氷河をあとにしました。


その後も、通常なら訪れるはずの数日間の好天周期というものはついぞ訪れず。たまにガスが切れて壁が見えると、真っ白に様変わりした壁からはスノーシャワーがひっきりなしに落ちていました。ずっとお隣さんで、GarminのinReach Mini(衛星端末)を利用して友人から得た天気予報を親切にもいつも教えてくれていたシャモニパーティも、それ以外のMoonflower狙いパーティも、誰もが登攀を諦めるなか、これが最後のチャンスと、私たち2人は入山3週間目にやっとアタック日を定めました。


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Mt. Francisと、お隣の親切なシャモニパーティ。ガイドの夫婦で、レスト日には颯爽と滑ってた。


新たに50cmくらいの降雪があった翌々日のことでした。
朝3時に起床し朝食と準備を終えて出発。久しぶりの清々しい朝日に意気揚々と、何度も往復したアプローチを空身にスキーで約1時間。取り付きへつくと・・・


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激しく真っ白けになってしまったMt. Hunter北壁。


デポしたギアの印として立てておいた2m以上ある旗竿が、跡形もなく消えていました。
雪崩の形跡も全くない、ただただ真っ平らな雪面。
その前にギアの無事を確認した日からそれほど時間は経っておらず、その間に降った雪もさほど多くはありませんでした。
こうなることを少しも予測しなかったわけではないけれど、今回ばかりは「埋まることは絶対ない」という確信みたいなものがありました。それなのに・・
急に吐き気を感じ、(脱水かな、そんなに汗かいてないけど・・)と思いつつ水を飲んでいると、パートナーも横で「なんだか気持ち悪くなってきた」と言っている・・
ただ氷河の上で食べて寝て排泄して、3週間も待ちに待ってやっと迎えた「クライミングができる!」はずだった日の朝に、我々は山の神様から見放されたようでした。


その後もめまいと吐き気(笑)を我慢しながら、ひたすら雪面を掘り返しまくりました。
なにもかもが、あとになって思うことばかりです。
ギアを埋める時、ビーコンを一緒に埋めておけばよかった。
せめてケータイのGPSログで位置を記録しておけばよかった。
否、はじめから取り付きにデポなどしなければよかった・・・


どうしてないんだろう、と狐につままれた気分になるほどに、ギアは見つかりませんでした。
そうして私(たち)のアラスカ一年目は終了しました。


1週間くらいで気持ちの整理がついたようには思っていましたが、今の今までブログを書く気が起きなかったのも事実で、これが現実だと受け止めるのは辛いことでした。


でも、誰も死んでいないし怪我していない。
だからただの笑い話ですね。



「ギアはもう出てこない。99.9%、見つけ出すことは不可能」

そう悟った私たちは、はじめ氷河からフライアウトして街に出、登攀ギアをかき集めようかとも思いました。
でも残り日数が少なく、Anchorageまで戻る時間はありませんでした。そしてTalkeetnaで手に入るギアはデナリの一般ルート用のものだけでした。


デナリのパーミッションをとっていた私たちは、残りの4日ほどでデナリへも行きました。
最高到達地点はCamp4(14000 foot Camp)。
今回順調にいったら登ろうと思っていたWest Ribの気持ち良さそうな稜線が見通せました。


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11000 foot Campまではソリをひいて。


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かなり軽量化して行ったけど、ソリに翻弄されました。日数がないのではじめの2日は寝ずに歩いて24時間行動。


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Windy Cornerまで行ったのに、寝ぼけた頭でノートレースに怖気づき、結局11000 foot Campまで引き返して宿泊。その時点であわよくばの登頂(笑)は諦め、翌日、空身で14000 foot Campまで行きました。West Ribめっちゃ気持ち良さそう!



3週間ずっとベースキャンプにこもっていたので、3週間ぶりの外の世界がとても楽しく、山登りはやっぱり楽しいと思った瞬間でした。


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悪天予報に翻弄され、数日はやくフライアウト。3週間洗ってない髪は重力に勝つ!


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Talkeetna Air Taxiのパビリオンで荷物整理。まっちゃんが黒すぎて見えない


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1泊はタダで泊まれる、Talkeetna Air Taxiの宿泊所を利用。


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シャワー、キッチン、2段ベッドあり。みんなが置いて行った共有食料もあり


私たちは壁にデポ品を残してきてしまいました。
このゴミを回収しに行きたい、というのは建前で、本音は、やはりあの壁を登りたいという気持ちです。
素晴らしく垂直で巨大な白と黒のコントラストの中に、素晴らしく美しくひかれたラインだと思います。
実物を見て、やっぱり登りたいという気持ちが強くなりました。
来年も行きたいけれど、家族が一番大事だから、旦那さんとよく話し合って考えたいと思います。


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去年はロストバゲッジのせいでそもそもパートナーと合流すら出来なかったため、この人気ピザ屋"Moose's Tooth"も一人で来ていた。そのとき横目に眺めるしかなかった、みんなが美味しそうに食べていた念願の巨大ピザがこれだ!



さて、まだまだこれからも私の珍道中は続きます。
5/25に帰国後は、6/3から10日間仕事でヨセミテに行っていました。
つぎは来週から、旦那さんのいるイギリスへ2度目の訪問です!

2019/4/6 Aiguille du Midi Northwest Face エギーユドゥミディ 北西壁 "Vent du Dragon" (敗退)

シャモニ滞在も残りわずかとなり、やはり3日を超える晴天の窓は訪れず。
4/3から4にかけてはまとまった降雪があり、街も一晩のうちに一面雪景色となりました。

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犬は喜び庭駆け回り

4/5、4/6が本ツアー最後の好天。
1日はBreventのスキー場で普通にスキーを楽しみ、翌日は日帰りでエギーユドゥミディ北西壁のルートをやることにしました。


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こちらも一晩で白くなったエギーユヴェルテとドリュ。どちらも今回登りたかったけど登れなかった。それにしてもスキー場からの景色がコレってすごい


ミディ北西壁はそれほど人気のあるエリアではないようですが、今回選んだ"Vent du Dragon"はその中ではもっとも登られているルートだそう。そしてドライコンディションの今シーズンでも北面には氷があるので、北西壁なら東壁や南壁よりマシなのではないか。かつ、かなりの降雪があった二日後なのでアプローチ距離の長いルートはおそらくラッセル。スキー利用でないと日帰りは厳しいだろう。
もろもろ考えた結果の北西壁でした。

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ミディ北西壁へは、ミディの2つのピークをつなぐ橋から直接懸垂下降して取り付きます。
橋の南端に比較的新しいマイロンのかかったアンカーが作ってありました。そこから真下に55mでつぎのアンカーがあり。

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奈落の底へ落ちて行くよう。でも残置アンカーを使えばずっと空中懸垂というわけでなく岩伝いに降りられます。


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降雪直後なので埋まっているアンカーを掘り出したりしながら、計5回の懸垂を経てやっとルート取付きへ。

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除雪後。除雪前はこの全てが雪の中

天気の良い土曜日でいつもより早くケーブルカーが動き出し7時半には乗車できたというのに、クライミング開始時には10時半くらいになっていました。

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懸垂50〜55m×4回と30m×1回


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取り付きにて栄養補給。風が吹くと吹き上げられた雪で目が開かない


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クライミング開始

このルートはピッチグレードが3、3+、5、5、2(ヨーロッパグレード表記だがUIAAの数字とほぼ一致)とグレーディングされた5ピッチ220mのルートです。1ピッチ目私のリードでスタートしましたが、最後少し同時登攀してもらって65mくらい出し、リード&フォローで2時間ほどもかかってしまいました。傾斜はゆるいのですが締まりのない雪を除雪しながらのクライミングでスピード上がらず。実力不足でした。

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1ピッチ目終了点にて。途中途中でスカスカだけど一応氷が張っていました。おそらく上部も氷はあったのだろうと思われます

このまま詰めていっても、確実に明るいうちにはトップアウトできるけれど、ロープウェー終電16:30(はやすぎ!)まではあとたったの4時間。間に合わなくなるのは濃厚でした。ビバーク装備はないし、軽量化のためビレイジャケットも2人で1つ。ロープウェー駅が閉まって構内に泊まれなければCosmique小屋に逃げ込むという手もありますが、「明日から天気がよくないので万一ロープウェーが動かず山に閉じ込められたら・・」。万に一つの確率、とはいえ帰国は2日後だから少し不安です。

本当は、懸垂で降りてきたクーロワールをまた橋の方へと登り返し、橋をくぐって向こう側へ行けば北壁から簡単に駅へ戻れたようです。そうした下降や敗退についても、ちゃんと調べたり話し合ったりしていなかったのが良くなかった。今思えば、メインのクライミングが終わってしまって、ルートに対する情熱や集中力も欠落していたと思います。

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橋の向こうへ歩いて行けばいいらしい。隣のルートを登っているのはTくんとTKくんパーティ。


「ロープウェーから見た感じ、たぶんロープウェーの中間駅へ降りられると思う・・」というパートナーSくんの言葉に逡巡しつつも、中間駅の最終便に間に合うべく、そのプランを敢行することにしました。

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なんか今日はラペルばっかりしてる気がする

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北面の岩場をまいて降りる

しかし取り付きから懸垂と歩きで北へと下り眺めてみると、北西面からロープウェーの走っている北面へ至るには結局数ピッチのクライミングが必要そうでした。そのまま北西面を降りて行くと、急に切れ落ちた断崖に行く手を阻まれます。地形図上は等高線の間隔が広いのに切れ落ちており、少し進んでみるとそこは氷河だと分かりました。おそらく氷河がきれて断崖絶壁を形成しているのでしょう。すぐ近くに見える直下の平坦な雪原には気持ち良さそうなシュプールが幾重にも刻まれています。しかしおそらく近く見えるのは錯覚で、300mくらいはあると思われます。

ここを懸垂するのは不可能。ということで、右上に、北壁へと向かっているスキートレースを辿ってみることにしました。

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急斜面をトラバっているスキートレースを振り返る

見に行ってみるとそこには下降支点があり、北壁と北西面との間に細いクーロワールがありました。ここをくだれば、傾斜のゆるい雪原に到達できそうです。

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残置アンカー

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なるほどココに細い谷があって、こちらからなら氷河をまけるわけです。地図上でもここはほんの小さな筋。これはわからないね・・!


そして、まさに今日、おそらく今朝降りただろうトレースもついています。ここから数回の懸垂を経て40〜50度くらいの急斜面へ。そこで残置支点もなくなり、エクストリームスキーヤーによるものと思われるトレースはずーーっと横滑りしています。


さっき巻いた絶壁がやっぱり氷河の大断崖だったことを視認しつつ、高い気温ですでに腐った沢地形をツボ足で降りていきました。
アンザイレンしつつ、雪面になるべく負荷をかけないよう降りて行きますが、途中、雪壁が大きく割れたところを何度も通過しました。
かなり時間がかかり、中間駅の最終にも間に合わないのが確実となりました。
よし、がんばって歩きましょう!

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巨大な氷河の崖下に降り立つ。ガスが濃くなってきた


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街まではあと標高差1000m


氷壁のクライムダウンも交えてやっと傾斜が緩む。GPSで位置を確認しつつ、基本スキートレースを辿って降りました。

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クレバスの間を縫って

夏道からは逸れていたけど、スキーヤーは上手にライン取りし、最後の藪も巧みにスキーを履いたまま降りていました。
途中幾度か崖の上でトレースが途絶えているところあり。数メートル級のジャンプもぴょんぴょん跳んでました(笑)。この密林で・・・かなりの手練れのようです。


結局、ロープウェーで20分くらいで降りられる標高差2500m超を降りるのに7時間半ほどかかりました。降雪直後だった上に気温が高く、下りとはいえラッセルも骨でした。アンチスノープレートをつけていないスティンガーで雪団子地獄になりながら、21時頃やっとモンブラントンネルのフランス側出口前に到着しました。


ここから家まではさらに5km弱の道のりです。
親指を立てながらテクテク歩いていたら、なんと!1台の車が停まってくれました!やったー!
フランス語を話す親切な3人家族が家の近くまで乗せてくれました。ミディのケーブルカー駅前まで行きたいと告げると、「シャモニ来るの初めてなんだよね。ケーブルカーの駅ってどこかな」と言いながら、走ってくれました。
雪でびしょ濡れだったし汗臭かっただろうに・・・
受けた恩はどこかで返さなきゃなね。


ということで、22時を回る前に家に帰りつくことができました。
それにしてもすごいスキーコースだった。ミディ北壁のようなエクストリーム系ではないにせよ、際どい地形が延々続く標高差2700mものロングライン。あれを滑りきるのは技術もメンタルもかなりのレベルが求められる気がします。土地柄必然的にそうなると言うのか、シャモニのスキーヤーは当たり前のように懸垂も氷壁もこなしている。山でやりたいことを実現するために必要なすべての手段を身につけ、駆使しているだけなんですね。


因みにこの日隣の別ルートを登っていたTくんとTKくんはロープウェー駅構内のトイレでビバークとなったようでした。なんでも暖房があって暖かいんだとか。Valle Blancheへ降りる出入り口は閉鎖されてしまうけど、橋のほうから構内に入ることはできるみたいなので、緊急避難として使えるんですね。


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最終的にコチラを登り返したようだけど最後立ってるよね!


というわけで、またしても危ない橋を渡ってしまいましたが、歩いたことでここら辺の地形がなんとなく分かったのは収穫でした。
ついにイギリス、フランスと続いた6週間の旅がもうすぐ終わります。

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錚々たる面子、ガイドの方々が勢ぞろいして日本人飲み会も!

帰国したら、つぎはGWからまた一ヶ月、リベンジのアラスカ遠征へ出かけます!今回はT石くんとまっちゃんと3人で行くことになりました。
テンションうなぎです。シャモニで得た経験と悔しさを次なる氷雪壁にぶつけたいです。


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シャモニ編〜完結〜

プロフィール

chippe

Author:chippe


肉好きchippeのブログへようこそ!
2006年10月 山歩きを始める。
2007年9月 クライミングを始める。
山岳同人「青鬼」所属。
「メラメラガールズ」所属。
国際認定山岳医。
「カリマーインターナショナル」アンバサダークライマー。
現在は無職、旅人。
旦那さんはpecoma。

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