2007/07/12


医者はみんな同じ格好をしている。
白衣を着て聴診器をさげて、端正なみだしなみを心がけ、女性でも派手に着飾っているひとは余り見かけない。
・・だが。
医者には医者のオシャレのポイントがあるのだ。最近病棟をまわっていて、そんな風に思う。
まず白衣。
全ての医者が毎日着るものだから、こだわりが生まれるのはごく自然なことだろう。今学生の私たちは、全く何のこだわりも無く一張羅の汚い白衣を毎日着ているけれど。
白衣だって安くない。何の変哲もなく見える白衣だが、白衣へのこだわりは殆どの人が持っているように思う。よく見ると名前の刺繍がしてあったり、アクセントのラインが入っていたり、どこぞの白衣ブランドのロゴがくっついていたりする。半袖白衣、長袖白衣などあるけれど、微妙にデザインの違うものが幾種類もある。ただの白い服ではない。白衣ひとつをとっても、充分にこだわれる。
さらに聴診器。これも誰もが持っているし、どれも同じに見えるけれど、誰もが持っているものだからこそオシャレのしどころなのだ。いろんな形や色のものがあって名前の刻印などもしてくれる。注文すればハートマークの刻印だってしてくれるのだ。聴診器の格にもピンキリがあって、安いものは5000円程度だが高いものだと何十万の世界になる。
そしてそして、腕時計。ここには充分すぎるくらいこだわれますね。ここだけは唯一、神聖なる病棟にあって派手にすることを許されている場所のような気がする。
最近、先生方の左手薬指と左手首を無意識にチェックするようになってしまった自分がいる。人によるけれど、意外と腕時計にはこだわりが無い、という人も多い。全体的に男性より女性のほうが腕時計にかける意気込みはアツいようだ。
これら以外にも、オシャレのしどころは色々ある。みなある程度型にはまった中で出来る最大限のオシャレをしているのだ。
しかし意外と、足元のオシャレ度はかなり低い。つぶれたサンダルを履いていたり擦り切れたローファーをひっかけていたり、無頓着な人が多い。こちらもオシャレ意識は女性のほうが高いようである。何分靴は、病棟を一日中歩き回ることを考えたら歩きやすくて疲れにくいもの、という機能性のほうが重視されるのだ。
最近わたしの周辺の学生どうしで、「ボールペン」オシャレがはやっている。BSLを回っていると、医者と一緒に製薬会社の売り込み説明会に参加することがある。その際製薬会社は決まって、売り込みする薬の名前が入ったボールペン(たいてい3色)を手土産にやってくるので、説明会に参加した回数分だけボールペンが増えていく。先生の中には、胸ポケットに7本くらい3色ボールペンが入っているひともいるくらいだ。
そして最近わたしたちがするのが「ボールペントーク」。ふつうのボールペントークはおそらくこうだろう。
「ドクターグリップって書きやすいよね」
「わたし、ゼブラのやつがすきー」
しかし私たちのボールペントークはこうである。
「ディオバンいいよね」
「セイブル書きやすいよ」
「第一三共製薬はダメ」
※ディオバンは降圧薬、セイブルは糖尿病薬
また、今日友人がうらやましいオシャレ道具を持っていた。
持針器。
持針器はハサミのような形をしていて、手に持って閉じるようにするとカチカチっとなって固定される(写真参照)。ふつう針を先につけて皮膚など縫うための道具。持針器はそこら辺に落ちているものではなく、ふつうあるのはオペ室くらいで、私物として持つことはまず無い。でも研修医などはよくこれにトランスポアという名前のテープを通し(写真参照)、白衣のすそをかませて逆さにぶらさげて歩いている。
これはガーゼをテープでとめたりとかいうこまごました作業の多い研修医にとって実用的。そしてこれも一種のオシャレ。だよね。
ナースの中にはピンク色の持針器をぶらさげている人もいた。ここまでくればもう完全にオシャレだ。
ピンク色のはさておいて、普通の持針器だが、その友人の話によると、じつはmy持針器をgetするチャンスがあるのだという。それは、CVカテを患者さんにいれるとき。
CVカテは中心静脈カテーテルの略で、首かソケイ部から管を通す。この手技一切をやるのに必要な道具がセットになってるキットみたいなのがあるんだけど、この中に使い捨ての持針器があるらしいのだ。
それで研修医は、CVいれ終わったらキットの中から持針器を持ち出して自分のものにする。わたしもいずれgetして、白衣にぶら下げて歩きたい。
病棟でのファッションチェックが最近のマイブームです。