FC2ブログ

リーチについて

クライミングにおいてリーチ(身長、手の長さなど)は絶対的な武器だ。


クライミングとはホールド(岩のでっぱり)をつかんでよじ登っていくスポーツ。当然、ホールドに手が届けば登れるし、届かなければ登れない。
というほど単純なものでもないのだけど、どうにもこればっかりは、、届かないものは登りようがない。


私はクライミングを始めたばかりの頃からリーチのなさに悩まされてきた。
私は身長155cm。ペコマは身長172cm。並んで立っていても大した違いを感じないが、数字にしてみると実に20cm近い差がある。
私が勢いをつけてばしっ!と取りにいくホールドを、一緒にクライミングをはじめたペコマはひょいっと手を伸ばすだけで取れてしまった。当然、ペコマが勢いをつけてばしっ!と取りに行くホールドは私には到底取れない。


はじめて半年ほどたった頃出場したコンペ(大会)では、ペコマと同じクラスで争わなければならなかった。クライミングは他のスポーツほどメジャーではないから、余程高難度(全国大会や世界大会レベル)でないと男女別にならない。ペコマと同じ土俵で・・・?と思うと萎えたが、コンペ自体は楽しかった。


そしてある程度登れるようになってくると、今度は「リーチは問題ではない」と思うようになった。
それとともに、「リーチを問題にしたくない」とも。それは負け犬の遠吠えに似ている、と。
リーチがなければ技術でカバーすればいい。リーチがない人にはない人なりのムーヴがあり、そのムーヴが出来ないことはリーチがないことの言い訳にはならない。現にその頃、私の周りには小さくて強い女性が沢山いた。その人たちはその頃の私にとって雲の上の存在で、いつかああなりたい・・・・・なれるのか?と半信半疑だった。


今、その人たちと同じくらい登れるようになったと思う。
そして思うことは、「やっぱりリーチはある程度必要だ」ということ。
リーチのなさを技術でカバーできるような甘っちょろいレベルではもうない。リーチがあることは前提で、さらにその上を目指すレベルにきていると思う。身長と強さの比例は、上のほうではあるところで収束するように思うが、下のほうでは小さければ小さいほど弱くなるのは確実。10cmの差があるのなら、ともすれば倍以上の実力を身につけないと勝てない課題もあるだろう。


リーチがあったほうが有利なスポーツは他にいくらでもあるが、クライミングはちょっと特殊だと思う。たった5cmの差でも、同じ課題の難しさが天と地ほどに変わることがある。実際、あと2cm手が長ければ、なんてことはザラで、そのほんの少しの差が勝敗を決めることもあるスポーツだ。


そういった特性上、柔道やボクシングに重量級があるように、クライミングには”身長級”があったらもう少し公平なジャッジを下せるようになるのかもしれない。だがそれ自体がクライミングの特質というものであり、もともと岩の上に立つことが目的のスポーツだ。その人が170cmだろうが150cmだろうが、その岩の上に立てた者だけが勝者。立てないものは無価値だ。それは努力の過程を評価するのではなく、結果のみを評価するという姿勢に似ていて私は好きだ。才能があるなら努力しなくても結果は出せるだろう。結果を出すことにのみ意味があるのだ。


私はまだジムでも外でも1級というグレードを手にしたことがない。
その1級を狙うようになって思ったことは、「私はなんて不利なスポーツにはまってしまったのだろう・・・」ということだった。でも、チビに有利なスポーツなんてあるか?ないよな(笑)。それに、もうはまってしまったんだからしょうがない。


今は時間がないからボルダリングに専念しているが、私の真の目的はアルパインクライミング。将来の目標は、体力、技術、経験を身につけて、いつかヒマラヤの高峰の壁に挑むこと。スポーツクライミングを極めるつもりはない。でも、そういった将来の目標もすべて”今”の積み重ねによって出来あがっていく。私は”今”この瞬間を醜く足掻きもがきながら生きていくのが好きだ。


そして結論として思うこと。
自分に今出来ることを精一杯やっていこう。

プロフィール

chippe

Author:chippe


肉好きchippeのブログへようこそ!
2006年10月 山歩きを始める。
2007年9月 クライミングを始める。
山岳同人「青鬼」所属。
「メラメラガールズ」所属。
国際認定山岳医。
「カリマーインターナショナル」アンバサダークライマー。
現在は無職、旅人。
旦那さんはpecoma。

月別アーカイブ

ブログ内検索

カウンター