2013/09/29
ヨセミテ Noseで起こったこと
9/14~9/22の日程でYosemiteに行ってきました!
結果はNose、ElCap Towerまでで敗退。
実力としては、2泊3日でやってやれないことはない感じでした。
来年は今回の反省を活かして、もう少し余裕を持って2泊3日行けるんじゃないかな。
全体を通して、私の登攀スピードは遅かった。
それがパーティ全体に焦りを生んだだろうことはひとつの事実だ。
でも、単純にそういう問題ではなく、細かいミスが色々あった。
やっぱり日本のショートルートを登っているだけでは太刀打ちできないヨセミテのでかい壁に対峙する力やビッグウォール特有のタスクに対して私たちは力不足だった。

今回のタクティクスとしては、day0に4P目までFIXし荷揚げ、day1にElCap Towerまで、day2にCamp Vまででday3に登頂の予定だった。
でもday0は昼前位に着いたものの順番待ちで1時間半近く待ってからのスタート。
なぜか誰もヘッデンを持っていかないという失態もあり結局3P目までFIXした段階で暗闇迫る中降りた。
その翌日に4P目まで伸ばして荷揚げし、下界に降りてレスト。
翌朝2時に起きてFIXロープのユマールからNoseが始まった。

私が主にてこずったのは2P目のエイドと、トポに無い謎の1Pの後に出てきた11P目(トポでは10P目)だ。
初日に登ったSerenity Crackでも苦労したのだが、クラックが閉じていてところどころ丸いポッケ状になっているところにプロテクションセットをするのがかなり難しかった。
やはり、ビッグウォールトポにも書いてあるようにオフセットカムの座りが断然良いように感じた。
でも現地では在庫切れもあり1セット弱しか持っていけず、「あと1歩乗り込めればあの良いクラックに届くのに・・!」のあと1歩のところで甘いカムに乗り込まざるを得ず、2回ほどデイジーキャッチになった。
takaは「うまくやれば普通のカムでもなんとか効かせられる」と主張していたが。
私のプロテクションセット能力が低いのだろうか。
11P目は、トポを見ると40feet(12mくらい)でDolt Towerに出る短いピッチだったのでカムを2セットに間引いていったら、なぜか50mもあるピッチだった。はじめの5mほどは問題なかったのだが、その後に現れたのが10mくらいずっと2番キャメしか効かないクラック、その上15mがずっと3番キャメしか効かないクラック、最後の20m弱はずっと4番しか効かないクラックというランナウト地獄だった。
さっさと気持ちを切り替えてノープロ、カムエイドでひたすら登っていけばよかったのだが、「12mのピッチじゃなかったっけ?」と騙し騙しロープをかけながら登って行ってかなり時間を食ってしまった。

初日にどこまで行けるかで、敗退するかどうかを決めていた。
とりあえずDolt Towerに18時までに着けなければ問答無用で降りるときめていた。
Dolt Towerについたのは16:45くらいで、遅くはあるが先へ進む条件をクリアしていた。
あと3P登れば初日のビバーク予定地、EiCap Towerだった。
でも、途中の荷揚げ時にホールバッグからかなりの水が漏れており、このレッジで荷物の状況を確認する必要もあった。
荷物をあけると、4L容器が二つも破裂していた。これじゃ敗退だ、と、私たちはビバーク準備を始めてしまった。
でもその後もう一度数え直したら、計算していたより多めに水を上げていたようで、残りの日程をこなせるだけの水が残っている事が判明した。それが真っ暗になる少し前だ。
だから翌日は4時に起きて前進しようという結論になった。
有効な目覚まし時計を誰も持っていなかったせいもあり、結局目が覚めたのは6時だったのだが。
その時点で全員に焦りが生じていた。
そんな中、初日はchippe & pecomaのつるべだったのだがこの日はtakaにリード固定でいいリズムでElcap Towerに着いた。
さあ、遅れを取り戻しつつあるぞ、これからだ!と全員意気込んでいたと思う。
私がサードでユマールで上がってきたとき、2人は次のピッチのリード準備をしていた。
この日、それまでの2Pも私がサードでユマールだった。
ビレイ点につくと、リード固定のためpecoma & takaはロープの結び替えをしている。
ビレイ中のpecomaにかわってユマールロープのFIXを解き、リードが終わり次第pecomaがすぐ出発できるよう準備する。それが私の役目になっていた。
3P目の終わりでも、同じ流れで事が進んだ。
しかしこの時だけ前の2Pと違う手順で事が進んでおり、私がユマールしてきたロープは誰にも繋がれていなかった。
ただ1か所クロ―ブヒッチでFIXされているだけだった。
そしてpecomaが私に「FIX解いて」と言う。
私はそのロープがどこにつながっているかも確認せず、「了解」とロープを解いた。
その途端、鋭い音を立てて何かが落ちて行った。
ロープが1本、どこを探しても見当たらなかった。
ここで私たちのNoseは終了した。

今回の反省点を話し合って、まとめた。
それは以下の通りだ。
・ロープの色が薄い赤とオレンジという、見分けにくい組み合わせだった。
・水容器は四角いものが潰れやすかった。ダクトテープを巻いていても容易に破裂した。トラバースの荷揚げはもっと丁寧にしないといけないし、ペットボトルのような丸型容器の方が圧力に強いようだ。
・かなり基本的なことだが、BigWallは物を落としたら終わり。人任せにせずダブルチェックを怠らない。
・ビレイ点の整理が非常にダメだった。ユマールと荷揚げをどう配置するか、ホールバッグやギアラックをどこに配置すればリードがスムーズに出来るか。もっと考えないといけなかった。
・基本的にリード固定のほうが断然効率がいい事が分かった。ギアラックをいちいち受け渡したり靴を脱ぎ履きする時間に比べれば、ロープを結び変えるだけのほうが遥かに早かった。ある程度安定したレッジに着くまではリード固定にするのが正解だろう。
他にも色々と反省点はあって、とにかく私個人の反省点はもっと簡単な場所の登攀スピードを上げる事だ。
この秋はまた遠い地の花崗岩に想いを馳せてパワーアップしたい。