2020/06/30
涼と自由を求めて。〜2020/6/27-28 湯檜曽川本谷遡行〜
梅雨入りし、暑くなってきた先々週は西丹沢の小川谷廊下で沢初め。そして先週末は天気がどうにか二日間持ちそうだったので、泊まりの沢旅を計画しました。

今回のプランは、湯檜曽川本谷を遡行して東の稜線へ抜け、ナルミズ沢〜東黒沢下降というものでした。まだ6月下旬ということもあり、雪渓の処理が核心になるだろうと思われたので、軽アイゼンとゴルジュハンマーを持って行きました。
(あと竿も)
朝7時頃、白毛門登山口Pを出発。駐車場は満車と大盛況でした。晴れの週末に近くて良い山を楽しもうとみんなテンション上がってますね!

橋を渡り、湯檜曽川沿いの新道からアプローチ開始です。沢靴なので気にせず歩けましたが、渡渉や沼地の通過などけっこうワイルドな道でした。

新道と武能沢がぶつかるところから沢に降りて湯檜曽川床へ。アプローチ開始から1時間半ほどで出合に着きました。

河原でウエットスーツを着込んでいよいよ遡行開始です。しょっぱなからゴルジュチックで水に浸かりながら登ります。魚止めの滝は水流脇を直登できますが、さらにゴルジュ再奥には取り付くのもキツそうな急流中の滝が見えており、こちらは直登チャレンジせずに手前から右岸を巻きました。

出だしの暗いゴルジュを抜けると渓相が一気に明るくなりました。梅雨の中休みサイコー!
先へ進んでいくと、河原が広くなってテントが見えました。焚き火の匂いもします。
大きなエメラルドグリーンの釜が現れ、前方には釣り人の姿が・・!
沢屋が敬意を払い、仲良くしなければならない相手、"釣り人"です。

追い抜けずに様子を伺っていると、向こうから「高巻きしてくれ」とリクエストが。デスヨネー。
決して池ぽちゃしてはいけない緊張のへつりでした。カチを激カチして決死のクライムダウンをしました。
身体の硬いペコマは荷物を先に下ろして空身での本気トライでした。

緊張から解放され、巨大な雪渓を横目に明るい河原を進みます。この先も、通過を要するものもそうでないものも含めて多数雪渓が現れ、巨大な奇岩の見物ツアーのようでした。その自然の造形美には圧倒されっぱなしでした。

テンション"ウナギの寝床"。ペコマはプカリでスイスイ。
泳ぎの苦手な私はテンションヤツメウナギで突破。

気持ちよくてテンションウナギ!水温はウエットスーツを来ていればちょうどいい感じです。

沢が大きく左に屈曲するところで最初の雪渓通過となりました。ここが一番緊張しました。

雪渓の下をくぐり、4m滝の流心へ。ペコマが空身で先に登って、二人分のザックを荷揚げしました。
冷たい氷雪の塊である雪渓の近くは気温差から風が生まれ、冷気が染みてくるし、水温も一気に下がります。ウエットスーツを着ていても、ここの待ちだけは少し冷えました。クライミングそのものはそれほど難しくなく、水流を少し浴びながら左壁を登りました。
ちなみに行程中荷揚げはココだけ。ほか登攀にロープを要する箇所もありませんでした。

ナメ滝を越え、明るい河原歩きと小滝登攀の連続が快適です。

今回、遡行中の撮影はGoPro(Hero7)で行いました。(μtoughなどの防水カメラは沢で壊れて以来使っていません)今回は遡行前に設定を確認しなかったのもあり、撮影に時間がかかったりしてちょっと効率が悪かったです。でも防水ハウジングなしでガンガン泳げたし、画質もそれほど悪く無いうえ、超広角というのはやはり山カメラとして高評価です。

十字峡の先では渓相がまたもゴルジュチックに。しかし陽の光の届く明るいゴルジュです。

はるか下の急流を見下ろすと迫力あります。

小休止中に、iPhoneで撮影。やっぱりGoProより綺麗に撮れます。

この後も随所に雪渓が出てきて、上を歩いたり下をくぐったりしました。概して下を潜るほうがよい場面が多かったですが、ときには匍匐前進になるような天井の低いところもありました。
2段の"抱き返り滝"は超ヌメヌメで、"釣り師のへつり"並みの本気クライミングでした("ローションクライミング"と命名します)。
その後、本流が増水してはじめて水流が現れるという水門岩やツチノコの形をしたポットホールなどの撮影名所を通過しましたが、どれもGoProの"設定問題"で撮影を省略してしまいました^^;
下山後、キチンと設定を見直して実戦仕様にしたので、次からはもっと沢山写真を撮りたいですね。

赤茶けた壁の滝(やはり写真ナシ)は直登もできそうでしたが、またローションクライミングの予感がぷんぷんしたので巻きました。巻きはうっすらと踏み跡もあり、残置スリングがあって木から懸垂でした。持参したフローティングロープは15mでしたが、7.5mぴったりで川床でした。
最後の2段40m大滝を登ってしばらく進むと、送電線をくぐったころから河原が広くなり、今日の遡行が終わりを告げていることを感じられました。

14時頃二俣の快適なテン場に到着。小一時間竿を出したけど魚影もなくボウズでした。

濡れた装備を全部脱いで乾かしながら、幸せに浸ります。最近の沢でのウエアリングはこの通り、冬用ドライレイヤーをベースに、finetrackのラッシュガード上下を着て、状況に応じてその上にウエットスーツを着るといった感じです。

ビールは直ぐに冷え、乾杯の時間。

ブヨにまぶたをさされ、湿った焚き木の煙に燻されて涙が止まらなくても、幸せなんです。

ここがこの河原で一番快適なサイトだと思われますが、4テン2張り程度でいっぱいになりそうな広さでした。2パーティいたら焚き火は共有かもしれません。ほかにも数箇所張れそうな場所はありました。

枝を削って串をつくり、イワナのかわりにソーセージを焼きます。

湿っているせいで弱々しかった火も、夜が更けるころには安定してきました。こうなると大量に集めた焚き木もあっという間です。

翌朝は長い行程に備えて3時に起床しましたが、ほどなくしてかなり強い雨足で降り始めました。
とりあえずお湯を沸かし、コーヒーを飲みながらくつろいでいると、なんと野生のウサギが現れました。こんな山奥でウサギに出会えるとは思っていなかったので衝撃でした。ウサギは浅瀬を余裕で渡渉していてたくましかったです。
食事を終え、明るくなり、全ての撤収を終えても雨は弱まる気配がありません。本日遡行を続けての沢下降はあまりよろしくない雰囲気が漂ってきました。おまけに雷鳴まで聞こえてきたので、朝日岳から稜線を下るのも何となく嫌な感じです。

残念ですが、本日は最短コースでエスケープすることに決めました。
二俣から本谷を少し下流へと戻り、池ノ窪沢から清水峠を目指します。そこから国道291とついた廃道をひたすら歩いて降りることにしました。

地形図上は立派な道が示されていますが、実際はかなりワイルドです。崖っぷちのトラバース道は崩れていたりするし、たびたび出てくる大きい沢の渡渉が、雪渓通過などもあったりしてタイヘンでした。最後の最後で白樺沢を通過するときが一番緊張しました。雪渓の下は大穴で急流が轟々と音を立てています。ここで持参した軽アイゼンが活躍しました。

白樺沢避難小屋から先はまた新道に戻り、行きのアプローチに合流しました。こうして歩いた距離と遡行距離を比べると沢部分がかなり短いのが残念ですね・・。

7月の4連休や夏休みも長い沢を考えています。沢登りは自由で大好きです。次こそは釣りたい!