2021/08/13
山岳医療パトロール始動。「東北の高校生の富士登山」開催。

世間では変異株が猛威を振るっていますが、あらゆるイベントごとが疑問の余地なく中止となった昨年と違い、2021年は東京オリンピックをはじめ様々な"イベントごと"が試行錯誤のもと開催されはじめています。
ワクチン接種しても感染は防げない、若年者も重症化する、感染力は水ぼうそうに匹敵する、など、またも新たな難問をつきつけてくる自然の脅威に、人間社会は果たして対抗できるのでしょうか。

未曾有の大災害といえば、日本中にかつてない被害をもたらした東日本大震災のあとも、日本中が「自粛」して水を打ったように静まりかえっていました。
でも、早い段階から、被災した方とそうでない人々との温度差はやはりありました。当時東北にいたのでそれは強く感じていました。
今回も当時とほぼ同じ状況になっているように思います。
日夜コロナ病棟で壮絶な戦いを強いられている医療従事者からしてみれば、日本国民の危機感が不足していると感じられることでしょう。

しかし人流を止めるには法的措置しかないと個人的に思います。個人の裁量に任せる方法では無理です。
法的に制圧されているわけではない世の中で人々が日常を取り戻そうとするのはごくごく自然のことと思います。
感染対策などの考えを尽くした上で行われる"イベントごと"に関しては、批判はあって当然ですが、誰にも中止を迫る権利など無いのです。

私はコロナ病棟で働いている医療従事者ではありません。特効薬を開発出来るわけでもないし、ただただ無力な存在です。それでも、変異株に対しても重症化はほぼ確実に防ぐことができるといえるワクチンの接種率を上げる業務には貢献できます。というわけで最近は、自治体の接種会場や国の大規模会場など、様々な会場へ行ってワクチン接種業務に関わっています。

2017年から、地域の安全登山への貢献のため、甲斐駒ヶ岳黒戸尾根ではじまった山岳医療パトロール活動。昨年から、山小屋に泊まっての活動は避け、登山口での声かけのみに活動を縮小して継続しています。
今年も北杜市の協力のもと、7月から活動を開始し、今年からは編笠山の登山口である観音平でも活動をはじめました。


こうした活動も、県をまたいだ移動を行い、登山者と会話をするので、中止したほうが良いでしょうか?
でも、日常を取り戻そうとする動きは止めようがありません。あわせて行っているアンケート調査の結果からは、3密を避けてか、昨年よりもむしろ登山頻度が上がっているという方もいるようです。



アンケート結果を見ると、「山は街より安全だ」と気がゆるんでしまう方も多いようです。声かけを行い、街中と同様に感染対策意識を高めてもらう活動は有意義だと私は信じています。

また、昨年中止となった「東北の高校生の富士登山」も今年厳重な感染対策のもと開催されました。
東日本大震災被災当時幼稚園生だった高校生たちが、今年も参加14名全員で登頂を果たしました。


一歩一歩前に進めば必ず山頂に辿り着くという貴重な経験をし、山岳のダイナミックな景観に心打たれ、さまざまな経歴の大人たちと触れ合って価値観を豊かにし・・・。そんな得難い3日間を満喫してもらえたと思います。彼らが大人になって、また未来の東北を、未来の日本を担っていくのです。

今回は開催前から、感染対策などについてのアドバイスをさせていただき、開催中は医療班医師として、ごくごく微力ながらもお力添えさせていただきました。
開催を中止するのは簡単でも、この世情において開催を決め、遂行するのは非常に困難なことだったと思います。
どのような対策をして開催されたのか、アウトドアツアー業界においてひとつのモデルケースが出来たかも知れません。コロナによる貧困も無視できない問題となっている今、こうした活動もまた有意義なものだと思います。

東京オリンピックでは、今大会から新種目となったスポーツクライミングにおいて選手用医療ボランティアとして参加させていただきました。日本選手はじめ、各国の選手の力強い登りは世界中に勇気と元気を与えてくれたと思います。
卓球やマラソンなど、他の種目もテレビ観戦していましたが、普段感じることのできない種類の感動をいただきました。
アスリートって、やっぱりかっこいいな。




「山岳医」って、何者?"コメンテーター"とか"評論家"とか、そういう「自称」の肩書きなのは否めません。「ただの山好きでしょ」と言われても否定はできないし、「登山道に医者が居てなにか役に立つの?」と問われたら納得させられる自信もまだ無いです。でも、私には私にこそ出来ることが何かあるはず。こんなご時世だからこそ、自分なりに「山岳医」とは何か、を追求していきたいと改めて思います。

そんな今日この頃。怪我と感染に気をつけて、これからも毎日を充実させたいと思います。