2018/03/01
2018 2月27日〜28日 錫杖岳 前衛壁 2ルンゼ 登攀 2日目、エピローグ
<1日目の夜>楽しい楽しい夜のはじまり♪

手前側の部屋は2畳ほどの縦長。

洞窟内には氷柱が発達しており、ラッキングにはアイスフックが大活躍(笑)でした!
氷も雪も取り放題(あんまり綺麗じゃないけど)。テントじゃないからお湯こぼしても問題無し!

はまり込んで天井を見つめてると、ここが垂直な壁の中だということを忘れて不思議な気持ちになる。
というかこれハーネスつけてる必要全くないし!ということで、このあとハーネスも脱いで完全リラックスムードになりました。

消耗品の買い足しで最近週1くらいで行ってるカモババで見たことのないアルファ米を見つけたので、今回試食。
キムチビビンバも海鮮ビビンバも美味でした。
今まで食べたことあるアルファ米の中で一番美味しかった。具沢山だし。
韓国の商品みたいで、注水線(だよね?たぶん)がハングル。お値段490円とちょっと高級ですがグルメさんにはオススメですよー。
山の話に花咲かせ、食事も終わったところで最後のお湯作り。
静かに燃えるジェットボイルを見つめながら、FIXしに行った時見た壁の様子を思い返しつつ脳内オブザベーションする。
なんか登れそうな気がして来たな・・。楽しみ。早く登りたい!

ちなみに左奥の部屋はこんな感じで3畳くらいある。こちらを寝室にしました。天井も高くて普通に立てる。広い分温まらず、夜はちょっと寒くて何度か起きた。
<2日目>
※ネタバレ注意。オンサイトが気になる方はお気をつけください※

本日も快晴!
明るくなると同時にユマール開始しようということで、5時起床目標に。
結局寒くてそれより少し早く起きて煮炊きを開始した。
6時半ころ、Sくんのユマールから本日の登攀開始となった。

あのベルグラに日が当たるとちょっとやだな・・と焦りながらフォロー。
フォローしながら6P目を見上げると、あれ、昨日見たときより威圧感が減っている。壁も寝てみえるし、フットホールドも見て取れた。
クラックはやはり所々ジャミングも使えそう。核心はベルグラへの乗り移りか・・?
S「いけそうですよ、これ、岩の部分は寝てるし、スタンスもありそうだし。なんとかなりますよ!」
ち「確かにね!おっしゃー楽しみになってきたー!」

ギアを選定。スクリューは全部で12本あるけど、間引いて6本に。岩用ギアは全て持った。
よっしゃ、いくぜ!ミックスなんてまともにやったことないけど、これまでやって来たことがどれほど通用するか楽しみだ!
そしてさようなら・・・・ギンギンのピュアアイス!
ここは荷揚げすることとして、空身でクライミングスタートした。
出だしはクラックとフェイスにフッキング。フットホールドはフェイスに、研いだ前爪の先をひっかけ立ち込む。
このクラック、トライカムEVOがバチ極き。
適度にランナウトするものの、プアプロじゃないのでつっこめる。
凍土のつまったクラックにガンガン打ち込みかなとか思ってたけど、丁寧にホールドを削り出してフッキングのほうが効率がいい。
ハングにつっかえながら、ワイド登りも駆使してずりずり。
ときにはハング下の薄い氷に「たのむよ!」と声かけしながら全体重をかけ乗り込み。
高い足へのハイステップの繰り返しとなった。

少し行くと、さいご1cmくらいが入りきってないハンガーボルトが見えた。
ボルトあるんだ!!(このピッチは記録あんまり読んでない)
もちろんボルトにもクリップし、更にカムも極めて、足が悪くなるセクションへ。もう、しびれてたまらない。
でも技術もメンタルも上手くコントロールできている。
細かすぎる足を選ぶと崩壊する。前爪ピンポイントのスメアも使い、2本目のボルトへ。ついにベルグラが目前となった!
ちょっとよれてくる。ここでクラックにハンドジャム。ばちぎき!ふー、休める。
悪い体制で上を見上げると、ハングから恐ろしげな氷の槍がいくつも飛び出していた。
体勢をあげるまえに、枝払い。だいぶ綺麗になりスペースを確保できたところで、つららの根元まで乗り上がった。

ここからベルグラへの乗り移りが一番緊張した。
ついに凹角をはなれ、垂直の空間へ飛び出していかなければならない。
出だしのベルグラは3mくらい。つららの根元に短いスクリューを2本固めどりしたら、氷が厚くなる数メートル先まではプロテクションはとれない。かつ、絶対落ちられない。緊張した。
背後のつららは、ちょっとくらい体重を預けても大丈夫そう。
背中を使って体勢を安定させながら、クラックにフッキングした右アックスをきかせつつありったけ左アックスをのばし、やさしく「カツカツ」とベルグラを削ってホールドを作った。そこにフッキングしテスティングする。氷は薄いけど、強度は十分ありそう。
ゆっくりと、重心を左手の方へ移動させて行く。少しずつバランスが悪くなり、体幹に力がはいる。振られたら落ちるので背中も使ってゆっくり動く。
重心が完全に左に移った!そこからはもう、一気にいくしかなかった。
安定できるところまで、氷に余計な負担をかけないようやさしく打ち込みながら駆け上がった。
数メートルで氷は安心できる厚さに。やった!
傾斜は寝た。もう、慎重に登れば落ちることはないはず。でもまだしばらく氷は続いているようだ。
しかし、次のピッチはスクリュービレイだ。
残弾が少ない。スクリュー2本を残そうとしたら、最後のマントルはランナウトしてしまった。
しかもなぜか、落ち口で氷が消え、スカスカの雪面になってしまう。
緊張しながら、しっかりアイゼンの前爪を打ち込んでマントル。締まりの悪い雪面に這い上がった。
やった!
最終ピッチの氷壁が目前となった。なるべくフォールラインをさけて右のほうでビレイ点を設置。
解除コールをした。
やったー!嬉しい!
こんなに素晴らしいピッチを登れたぞ!ひゃっほー!

槍穂連峰と自撮りを試みたけどちゃんと入りきってない。
去年までは怖さのほうが勝っていたドライ。今年はまだ山も数回目だけど、全てをコントロールできている中でクライミング出来た。
フッキングもなんとなく、きいてそうなのときいてなさそうなのがわかるようになってきた。
パンプもあまりしないし、してきても回復できる。
これはこの冬シーズン、フリーをある程度頑張ったからだ。持久力はかなりついたし、ロングルートのなかで回復する術も身につけた。アイゼンでは足置きがフラットソールと全然違うけど、股関節を上手く使えば傾斜は殺せる。
ワイド登りも、ジャミングも、今までやってきたフリークライミングが色々と活かせた。
やっぱりクライミングは最高に楽しい。
終了点ではアドレナリンが垂れ流し状態だった。

フォローのSくんもサクサクと上がって来た。荷物担いでるのに流石です。こうしてみると立ってるなあ。谷底まで見通せてしまう高度感が素晴らしい。

ついにあと1Pとなった!目の前の氷壁はかなり幅があるが、左半分は見事なベルグラだし、登れるラインは限られている。Sくんがリード開始。しかしルーファイに難儀している。私はといえば、ビレイを開始すると猛烈な眠気が襲って来て身体を起こしているのも辛い感じになった。なんだこれ・・。落氷を避ける姿勢をとっているふりをしつつ、ザックに突っ伏して半分寝る。
氷壁を10mくらい登ったところで、「上まで抜けられないかも」とSくん。
途中でピッチを切ることになった。

いきなりチャンスが回って来た、"8P目"。フォローしてみると、なかなかにこの氷、立っている。
下から見て思っていた感じよりもだいぶ立っている。完全にバーチカル。な上にラインも複雑で、弱点らしい弱点もない。
まだ1Pしかまともに登って居ないというのに、全身がだるく、荷物が重く感じた。
見上げてラインを確認。左はぶったちベルグラ。右も複雑な形状をしている。いくとすれば完全に垂直な、直上ライン。小さく凹状になっているので足を広げれば少しは傾斜を殺せるか・・。

リード開始すると、やはり荷物が重く、後ろにひかれる感じがした。思った以上によれているようだ。アドレナリン出すぎて反動がきているか。腕がパンプする。アックステンションが何度もよぎった。でも、まだいける。このパンプはコントロールできる。
お正月のタイでも、ガバのどっかぶりは鍛えたし、こういう時は過呼吸気味にして血中酸素濃度をあげれば回復してくることは経験済みだ。この冬はフリーを頑張った。それが去年の冬シーズンとは明らかに違う点だった。
せっかく6P目をオンサイトできたのに、ここでアックステンションしたら悲しい。
ランナウトした状態でどうにもならなくなっちゃうようなことにはたぶんならない。
核心を超えてからも、入念にレストしながら、氷への打ち込みもブレブレになりつつ何とかトップアウトした。
やっぱりマントルはすかすかの雪面。
最後は締まらない雪をラッセルして太い灌木に達した。
はあーーー疲れた!

12:51、登攀終了。2人ともピークに達したときには13時半近くなっていた。
継続なんて言ってたけど、たった3Pにだいぶ時間がかかったなあ。もう、2ルンゼでお腹いっぱいだよ。
じゃ、だめだね。
まだまだ修行が必要。次はもっと登攀スピードを上げられるようにしないとね。
さて、暗くなるまであと数時間。最後までがんばろう!
しばし話し合い。明日には天候が荒れるし、今日中の下山は変化なし。とすると、これからまた何かを登る時間はないだろう。でも、2ルンゼの懸垂も7ピッチもあるならそれなりに時間がかかる。6P目ビレイ点みたいなおそろしげな灌木で懸垂するのも嫌だし、北東壁右ルンゼも見に行きたい。方角を確認し、とりあえず北東壁のほうへ行ってみようということになった。
もしラッセルに時間がかかるようなら、15時半までには2ルンゼの懸垂を開始できるよう戻って来ることにすればいい。

雪は思いの外腐っていなかった。順調にSくんがすすみ、あとに続く。北東壁上部と思われるオープンバーンに出た。geographicaで位置を確認しつつ、たぶんここからまっすぐ懸垂すればグラスホッパーかなとあたりをつけた。

掘り出したハイマツの根元で懸垂。木はたくさんはえてる。

向かって右手にみえているのがP4かな。

予想は的中。グラスホッパーの終了点の残置スリングに、60mいっぱいで辿り着いた。ぎりぎりぴったり!計算通りだね!(嘘)
ここからたった3ピッチで地上だ。気が楽になる。
けど気を緩めず、行動食とお湯をとって体力回復につとめる。

グラスホッパーは見事に結氷していた。左ルンゼも立派だった。
しばらく人が入っていない雰囲気があったけど、残置アバラコフはちゃんとあった。
こうして考えると、2ルンゼと比べて、3ルンゼってものすごく短いんだなあ。
そして2ルンゼの下降は、恐ろしげな残置で7ピッチもかけておりるより、北東壁から降りるのが正解ムーブじゃない?(笑)

右ルンゼも見事だったけど、2P目の出だしがどうかな?といった感じだった。初登、第二登の年(2007年)と比べても形が違う。
毎年微妙に形が違うらしい。こちらもいつか登りたいな。
<エピローグ>
今冬4回目の山行にして、やっと「完登」できました(敗退つづきだったもので)。
とても充実した山行となりました。
反省点は、
・登攀スピードの遅さ
・雪の処理が苦手
・フォロー力の低さ(馬力がたりない)
・山慣れが足りない(経験値!)
一緒に登ってくれたパートナーに感謝!そして留守担当の人生のパートナーにも感謝です。
まだまだがんばります(^ω^)ノ♪
コメント