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2018 10/27〜28 Washington Column "Astroman" 5.11c 11pitches day1

【Astroman Day1】

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ある朝のヒトコマ。スーパーのヨーグルトは全種類制覇した。


10/27、朝7時半起床。朝ごはんはパン。というところまではこの1週間と違わなかった。だが今朝はパンを焼いたところが、ちょっとした進歩だった。買って以来ほとんど使ってこなかったパン焼き網を今回の遠征に持ってきたのだが、1週間放っておいたのをふと思い立ち、引っ張り出した。パンは焼くと香ばしくなって数段美味しくなった。もっと早く焼き網を使えばよかった。
焼き網はパンだけでなく、トルティーヤにも、マフィンにも、直接ベーコンをあぶるのにも便利だった。

Camp4を出発し、旧Awanee Hotelのパーキングに車を停める。昨日パッキングは済ませてあるので、ザックを取り出して背負うだけで出発できる。
憧れのAhwahnee Hotelは、数年前なぜか”Majestic Yosemite Hotel”という名前に変わってしまった。下品な訳をすれば「ヨセミテのマジでヤバいホテル」という感じだろうか。トイレに行きたかったので、この日ホテル内に初潜入した。そこはテーピングを巻き穴の空いたクライミングパンツを着て入るのが躊躇われるような、Camp4の雰囲気とは全くの別世界だった。都会的な高級ホテルとは違うものの、まるでハリーポッターの世界のような、重厚で豪華な空間だった。綺麗な便座にゆったりと腰掛け、シャワー以外では本当に久しぶりの温水で手を洗い、それだけで心が満たされてしまった。便利な世の中に生活していたら感じられない感動を、染み染みと味わう自分がいた。

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手前のArches Wallも巨大で迫力がある。

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左にWashington Columnが、右奥にHalf Domeが見えてきた。

Astromanへのアプローチは、Mirror Lakeへと続くTrailを左に外れて、看板のあるところから明瞭な踏み跡を辿るのがもっとも効率的だ。ただ、初日はAstromanの取り付きへ直線的に向かうことを意識して、それより少し奥の方から不明瞭な踏み跡に入ってしまい、Scramblingになってしまった。

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アプローチでも自慢のアームカバーをつけておくべきだった!

巨岩帯を登り藪を掴んだ瞬間、「ぶうん!」という羽音とともに左前腕に痛みが走った。見ると小さな蜂が怒りぶんぶん唸っている。あまりの痛さに「いてててて!!」と大声をあげSさんを驚かせてしまった。結局2箇所刺されたようで、すぐに腕は腫れ上がり、数日後には刺されたところが潰瘍になった。小さな蜂だったのに、威力はやはりYosemiteスケールということか。

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でたー!

10時50分ころ取り付きに到着すると、1パーティがちょうどEnduro Cornerに取り付いているのを遠望できた。
「うわー、かっこいい!」

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3ピッチ目のEnduro Cornerと6ピッチ目のHarding Slotが見える。


Enduro Cornerのその上にHardning Slotも見えた。そして今まさにトライ中のクライマーがかなりの距離をSlotの奥から落ちてきた。うめき声も聞こえてくる。見上げる二人に緊張が走った。

「結構かぶってるねー・・」「というかSlotはルーフに見えますね・・」
「あ、Enduro Cornerの人、もうテンションしちゃったよ・・」


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しばし見上げ立ち尽くす。


遠目にオブザベ。顕著な凹角がとぎれるところがなんだか難しそうに見える。しかも壁は直射日光に照りつけられて随分暑そうだ。取り付きは幸い、木に守られて日陰だった。強い日差しに照りつけられているだけでも体力を消耗する。先行に追いついても暑い中待つことになるので、ここでゆっくりと登攀準備をすることにした。

今回改めて分かったことだが、やはりこの時期でもValleyは暑い。日陰と日向では暑さが段違いなのだが、いいルートはなぜか多くが東・南向きときている。本気トライをするには、10月〜11月頭くらいだったら日の当たらない時間を狙うしかない。
だが丸1日かかるマルチピッチとなると時間帯は選べない。ことAstromanは南東向きで風も少なく、朝早い時間から日が当たり始めて14時くらいまでずっと直射日光に照らされる。そういう意味でも、Astromanのワンプッシュトライは非常にtoughといえる。
今取り付いているパーティは皆おそらく”Astroboy”のひとたちだ。第2の核心である6ピッチ目”Harding Slot”の手前、5ピッチ目までなら、70mロープがあれば懸垂で降りられる。そこまでで終わりにするのを”Astroboy”と呼ぶのだそうだ。Enduro Cornerをリードしていたクライマーは何度もテンションしながらようやくテラスの上へと抜けた。セカンドがフォローを開始する。
そろそろ出てもいいだろう。12時頃、ロープを結び、意を決して灼熱の日向の世界へと飛び出した。


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待ちに待った瞬間!


【Ready... Go! Astroman, Start!】

1ピッチ目は右上の大きな木まで。SuperTopoでいうところの2ピッチ目まで繋げたかったが、ロープの流れが悪くなったのでピッチを切った。かわりにSさんが2、3ピッチを繋げて登ってくれ、一気にEnduro Cornerのビレイ点まで到達した。その頃には、大きなカンテに遮られ、ラインとなる凹角は日陰になっていた。小さなレッジに立って ラインを見上げる。出だしは快適そうなサイズのクラックがパラレルにずっと伸びている。よく見ればフェイスに細かいフットホールドもありそうだった。少し傾斜が変わっていてその先は見えない。目指すテラスははるか50m頭上で、確かに遠いのだが、この時にはそれほど大した距離には思えなかった。きっとアドレナリンが大放出していたのだろう。


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うん、なんかいけそう。


小さな容器に詰め替えて持ってきた液体チョークを塗った。はじめは「マルチに液チョー持ってくる人初めて見たよ」と言っていたSさんも、もう驚かなくなっていた。私は本当に手汗がひどく、思春期にはそれが大きな悩みでもあった。今もクライマーとして悩まされていて液体チョークは手放せない。手が乾いてくるのを待って、呼吸を整えた。「いけるよ!」とSさんがエールをくれる。うん、何か行けそうな気がする。「お願いしまーす!」と気合いを入れ、離陸した。

【Enduro Corner OS!】

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テラスから足が離れるその瞬間、腹は決まった。

はじめは快適なハンドジャム。長いけどとにかく無心になって登ればどんどん高度を稼げる。持久力勝負になるので、ここでいかにギアも体力も温存するかがキーになるはずだった。フットホールドは細かいのしかなかったが、休めるところは積極的に利用した。凹角だから背中も使えた。ほどなくして、サイズが狭まった。キャメ#.75サイズ。ところどころ広がっているようにも見えるが、やはりタイトハンドでうまくきまらない。まごつく。少し声が出た。Sさんのゲキが飛ぶ。もうジャムは諦めよう。前腕が疲れてきたので迷っている暇はなかった。フットホールドはわずかな凹凸を使えそうに見えた。Yosemiteの花崗岩はつるつるなので、完全にフリクションにたよったレイバックは難しい。思い切ってレイバック体制になり、わずかな凹凸を注意深く使って進んだ。下からみたとき核心になりそうと思われた、大凹角の途切れ目は、近づいて見ればフットホールド豊富で、今ここを乗り切れば何とかなりそうだった。途端に、さっきまでうまく抜けていた余計な力が前腕にこもる。少しぎこちない動きになりながらも何とかレイバックを切り抜けた。

フットホールドが現れはじめると、思った通り、少しずつシェイクすることができるようになった。OSは目前だ、と思うと、1手1手に更に力が入った。慎重にずり上がり、5.7のチムニーに入り込んだ瞬間、ああ、やった。と思った。と同時に、ずきん、と右胸が痛んだ。そして途端、心臓の鼓動がものすごい速さと大きさでドクンドクン伝わってきた。気づけば息もひどく切れている。すごい、こんなに全力だったんだ。チムニーに挟まったまま、怖いくらいに激しい心臓の鼓動が収まるまで少し待った。呼吸も整ったので、またクライミングを再開した。あとはどう見てもWining Run。だが、そうはいってもOSトライは継続中、緊張は抜けない。チムニーから這い出る時、「さあ、これで本当にラスト」と気合を入れ直した。

テラスに上がって、思いのままに叫んだ。正直、トライに余裕はあった。でも純粋に嬉しかった。OSすべきところをちゃんとOSできたという達成感もあった。

【Day2へ、期待高まる】

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Half Domeをバックに、ガッツポーズ!

真新しいスターリンロープを終了点にFIXし、要所のギア以外は回収しながら降りた。Sさんとグータッチ。明日はSさんがやってくれるはずだ。70mロープは、はじめにピッチを切った木の脇のビレイステーションまでギリギリぴったりだった。Sさんの55mロープを連結してアンカーにFIXし、地上まで降りることができた。FIXは明日、下降したあとに回収するつもりだが、更に翌日まで延び延びになる可能性も考慮し、”Please let us leave them till around Oct. 29th .Thank you!”と書いたダクトテープを貼っておいた。
アプローチはそれほど長くはないものの、空身であれば体力温存できるので、ギア類も目立たないようにまとめて取り付き残置とし、帰路についた。

帰りは行きよりも明瞭な踏み跡を下りながらケルンをたくさん追加した。
今夜も土曜の夜で、Camp4は大賑わい。心地よい余韻に浸りながら、21時半過ぎ、眠りに落ちた。
明日は3時起床。長い1日になるぞ!

<To Be Continued...>

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プロフィール

chippe

Author:chippe
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2006.10 山歩きをはじめる。
2007.9 クライミングをはじめる。
山岳同人「青鬼」所属。国際認定山岳医。
好きな食べ物:肉。
カリマージャパンアンバサダー。

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