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2018/11/2〜11/4 John Muir Trail Section Hike 〜Silver Lakes-Yosemite Valley〜 Day1

【パコつく肋骨】
10/31、目が覚めた。肋骨は・・まだぱこんぱこん言ってたorz
患部にタオルをあてて、テーピングを貼り直す。すでにテープかぶれが出来ていてヒリヒリした。
起き上がる動作、背中側にあるものを取ろうと手を伸ばす動作、立ち上がる時のプッシュ動作、全部痛かった。だめだこりゃ。

Sさんには、改めて、クライミング自体無理っぽいこと、しっかり数日休むことを告げた。
幸い、日本人クライマーや同じキャンプサイトで毎日顔を合わせている他のクライマーなど、Sさんのパートナー探しは問題なかった。
Salatheのみならず、Free Riderも行けなくなったのは本当に申し訳なかった。でもSさんはむしろすごく気遣ってくれて、それがまた申し訳なかった。

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Valleyに新しくオープンしたスタバへ行った。でも普通のスタバで、とくに面白いものはなかった。


私が本格的にレストすることになったので、そうした周りのひとたちにも肋骨骨折のことを話した。
これまでも特に隠していたわけではなかったが、話す必要もないので黙っていた。でも、みんなに話したらなんだかすっきりした。みんな優しく励ましてくれた。クライマーなら誰しも何かしらの怪我とか経験していて、お互い辛い気持ちは共有できるものだ。
ひとりじゃない、と思った。

残りの日程を可能な限り有意義に過ごすこと、それがこれからの最大目標になった。
よし、そのためにどうするかをじっくり考えよう。


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ひとりMist Trailを歩きながら、これからどうしようか、考えた。こういう1day hikeをしてValley内でダラダラ過ごすのは楽しくなさそうだった。どうせならまとまった時間がないと出来ない、もっとワクワクするようなことがしたかった。


【憧れのJMT】
Sさんは「John Muirとか、もし行くならスタート地点まで車で送って行くことも出来るよ」と言ってくれた。そうか・・憧れのJohn Muir Trail。それなら失意のレストもさぞかし充実するだろう。

pecomaはLINEで「ヨセミテにいるんだからメソメソするなんてずるいよ!」と、pecomaらしい激励の言葉をくれた。
同じく大学時代からの山仲間、変態ソロクライマーのRickyにも相談してみた。いちおう私より真面目に医者やってる整形外科医だし。
Ricky医師は、
「介達外力(直接ぶつけたのではない、間接的な力)による肋骨骨折なら、痛みの我慢できる範囲内でクライミングしても悪化はしないと思うよ」とアドバイスをくれた。

Astromanのあと悪化したけど・・っていうのは取り敢えず置いといて、この専門家のアドバイスは大きかった。
つまり、自分なりの解釈はこうだ。
「肋骨がパコパコいわないAstroman以前の状態に戻ったら、クライミングを再開しても問題ない」
それなら・・!と希望が湧いてきた。
残り滞在日数は、今日を入れてあと8日だ。
昨日はクライミングしちゃったから、今日から数えて丸5日レストしたとして、それでもし状態がよくなったら。
残り3日はまたクライミングが出来るということだ!!

そうすれば、宿題になっているButterballsとか、Tales of Powerとか、Crimson Cringeもまた行けるかも知れない。
よーし!しっかり療養するぞ!心も体も、John Muir Trail で!


【セクションハイクをプランニング】

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JMTのトレイルマップは冊子になっている。見やすいカラー刷りのテンションが上がるマップだ。

John Muir Trailは、かの有名な冒険家John Muirさんが開拓した、Californiaの絶景を次々通過するawesomeなトレイル(雑)だ。
トレッキングの聖地とか呼ばれているそうで、毎年世界中からトレッカーが集まってくる。
その全行程を歩くことを"Thru-Hike"といい、Yosemite Valleyの Happy IslesをスタートしてCalifornia州最高峰のMt.Whitneyへと至る。全211マイル(約340km)、ガイドブックでは21日間で踏破するモデルケースが紹介されている。
ただ、そんなに長い休みを取れない人も多い。ということで、部分的にJMTを楽しむ"Section Hike"という方法が一般化している。
私は今回このSection Hikeを計画してみることにした。

準備の時間も考えて、出発は11/2と決めた。せめて最後の二日くらいはクライミングしたいから、11/5か6には戻りたい。
かつ目的は肋骨の療養(?)なので、あんまり頑張るのも良くない。トレイルの状態も分からないし、重い荷物を持って歩くの自体久しぶりだから余裕を持ったプランがいいだろう。色々考えると、Silver Lakesというところからトレイルを歩いてJMTに合流し、逆走してValleyに戻ってくるプランがちょうど良さそうだった。モデルケースによれば4泊5日くらいの行程なので、3泊くらいで歩けるのではないだろうか。

早速、準備にとりかかった。
まず、はじめにやることは、Permitの取得だ。
これは、JMTに限らずover nightのトレッキングに行く際に必ず必要となる。
JMTのシーズンは6月〜10月で、この期間内だとPermitの取得は少し複雑になる。
とにかく大勢の人が訪れるため、National Park側はこれにより厳しい人数制限をしている。
数ヶ月前からオンラインで予約するか、当日直接キオスクに並んで取得するしかない。
だが、調べてみると、どうも11月からはオフシーズンということで、Permitの取得もかなりゆるくなるようだった。これはラッキーだ。

シャトルバスでValley内のVisitor Centerに行ってみた。
聞くと、予定しているスタート地点Silver LakesはYosemite National Parkの外。だからここではPermitが出せないらしい。
レンジャーのお姉さんが電話で調べてくれた結果、この時期あいているPermit StationはMammoth LakesのWelcome Centerだということが分かった。朝8時オープンだという。つまり11/2、出発日の朝にここでPermitをとってから歩き始め、ということだ。

次に、装備のなかで一番重要なものをゲットする。それが"Bear Canister"だ。

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こんなにビッグ。蓋はコインで開ける。クマが壊せないよう、専門家が研究を重ねたお墨付きらしい。

買うことも出来るが、ValleyのVisitor Centerでレンタル出来る。レンタル代は$5/week。やたら重いけど必須アイテムだから仕方ない。
これに4泊分の食料を詰め込んだ。なんだかワクワクしてくる。

他に、必須ではないかも知れないが、"準必須"くらいなのがスコップと浄水器だ。

スコップはトイレ穴を掘るためのもの。トレイルからも水場からも30m以上離れた場所に、15cm以上の穴を掘らなければならない。日本人のサイトではチタン製のものが推奨されていた。
でもValley内のMountain Shopにはプラスチック製のものしか売っていなかったので、それを買った。$2だった。
浄水器は沢の水を飲むためのものだ。煮沸すれば大丈夫だろうが、そのまま飲むのはよくない。これがあれば煮沸せず、その場で冷たい沢の水を飲むことができる。これも購入した。錠剤とか光とか、色んなタイプのものがあったが、一番軽くて安くて理解しやすい(?)濾過式のものにした。$45くらいだったと思う。


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トレッキング初日、最初の水場で記念撮影!そしてこの濾過式浄水器はこのあと意外な形で活躍を見せる。

これで必要装備は揃った!(まるでRPG!)
またシャトルバスでCamp4に戻り、パッキングを開始する。テントなど、明日の朝まで撤収出来ないものは後にして、片付けられるものからパッキングしていく。
友達になったクライマーたちが"Enjoy!"と言ってくれた。8日でThru-Hikeをしたというクライマーも、きっと楽しいよと話してくれた。期待高まる。
Mammoth Lakesまでは車で2時間半くらいかかるようなので、11/2は5時半にCamp4出発だ。Sさんは快く了承してくれ、成り行きで強強クライマー"Gachioくん"も同行することになった。

早めに夕飯を済ませてシュラフに潜り込む。
まだ時間も早いし、Camp4はいつもの賑わいを見せていた。
人々の行き交う音、笑い声。いつも通りのそれらが、この夜は心なしかより愛おしく感じられた。
明日の夜は一転、静まり返ったテントサイトで、もしかしたらたった一人で幕営しているかも知れない。
広大なアメリカの大地を一人で歩くのなんてはじめてだ。そう思ったらワクワクするし、ドキドキもした。
どんな冒険が待っているのだろうと思うと、ちょっと興奮して寝付けなかった。


【11/2、出発!】
夜明け前のValleyを後にする。2週間のスイートホームを撤収。Gachioくんが車を出してくれることになり、3人で乗り込んだ。
数日前に合流したクロヒゲさん夫妻から、「Mammoth Lakesの近くの温泉」の情報を得ていた。私をトレイルヘッドまで送り届けてくれたあと、二人はその温泉に寄って帰るというプランだった。
車を走らせ、懐かしいTuolumne Meadowsを通過、Parkのゲートを出る頃には朝日が昇っていた。
そこから先は、Valley内とは一転、"The Big America!"ともいうべき壮大な景色が広がった。

刻々と変化する景色に3人ともから歓声が上がる。これからの旅もこんな景色の中を歩いて行くのだろうか。

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Gachioくんと!

ちょうど2時間半ほどでMammoth Lakesの街に到着した。Permitは優しそうなおばさんと話して紙に記入するだけで終了した。お金はかからなかった。そこからまた30分ほどドライブして、Silver Lakesのトレイルヘッドまで送ってもらった。
ついに、はじまる。


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いってきまーす!!お見送りありがとう!温泉楽しんでねー!


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後日見せてもらった絶景温泉の写真!!(写真thx!)
これは行ってみたい!

【10.7マイルハイクから、標高3200m絶景のテント泊】
歩き始めは9時半ころ。
Mammoth Lakesの街がかなり寒かったので少し心配だったが、この頃には日も高く昇り、登っていると汗ばむくらいになった。

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初日の行程はJMTと合流するところまで。3つの大きな湖を横切るトレイルだ。2つ目の湖は大きなGem Lake!抜けるような青空が眩しい。


そろそろ3つ目の湖が見える頃。最後の湖が3つの中で一番大きい。どんな湖かなと期待していると・・・

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あれ、火星かな?


荷物は体感20kg弱といったところ。標高3000mを超えるところもあるので、持ってきていた冬用アンダーなど防寒具も多めに入れてきた。
歩荷筋(?)が貧弱なせいで、疲れより先に肩が痛くなる。ザック麻痺になっても嫌だから、こまめに座ったりして荷重を抜く。荷物を背負うときも、段差に置くなどして丁寧にやれば肋骨は問題なさそうだった。

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トレイルは明瞭で歩きやすかった。サクサク歩けて、目的のJMTとの合流点には14時ころ着いた。幕営するにはまだ早い。


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地図ではこの辺りも幕営適地となっている。焚き火跡もあった。


JMTは本来、Valleyを出発し、少しずつ高度を上げながらMt. Whitneyへと達する。それが高度順応という点で理に適っている。しかし今回は逆走コースなので、標高の高いところから低いところへと移動していく。今日は、1日で標高約1200mのValleyから一気に3000m超へ到達する。今日のうちになるべく距離を稼ぎたいのはやまやまだが、どこで寝るかは悩みどころだ。明日の行程であるDonohue Passの峠越えが今回のセクションハイクの最高到達地点。今日中にDonohue Passを超えるのはたぶん厳しい。しかしその手前で終了となると、睡眠高度は歩けば歩くほどに高くなる。


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スマホで何でも出来るご時世。JMTも専用フリーアプリがある。このアプリには水場とテン場の位置が示されており、あらかじめDLしておけばオフラインでもGPSで利用可能だ。


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あれ、いつの間に天国にいるんだけど地形図あってる?


Donohue Pass手前の最後の水場マークは標高3200mだった。時刻は17時ちょっと前。日が沈むのは18時なのでまだ歩けるが、テンバを探すにはちょうどいい頃合いだ。


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それに加えてこのロケーション!


もうここ、テンバでしょ。って即決しました。


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標高3200mの場所に水の流れる大平原。日本では見ることの出来ない、氷河が作り出した不思議な地形。


本日の行動終了、17時。行動時間7時間半。歩いた距離は10.7mile(約17.2km)。
標高3200mなので、日が落ちると流石に寒く、着込んでテントに潜り込んだ。風も少しあった。
ウインドバーナーでテントの中をあたためて、お湯を飲んで、ビッグウォール用に持ってきていたアルファ米を食べた。
干し芋とジャーキーも火で炙って食べたら美味しくてハマった。
私以外、誰も居ない。というか今日出発してから、誰にも会っていない。聞こえるのは風の音と、すぐそばを流れる水流の音だけ。
今までないくらいに心が穏やかだった。

今の私には、クライマーやクライミング環境からしっかりと距離を置いて自分を見つめ直す、こんな時間がきっと必要だったのだと思う。肋骨はまだ動いているけれど、今日1日で悪化した感じはなかった。

初日から想像以上の絶景に恵まれたJMT。明日の行程が楽しみで仕方ない。
食事を終え、寝ることにした。Bear Canisterはテントから離れたところに置いておかなければならない。
ここには絶対クマ居ないよな、と思いつつ、就寝前のトイレついでに持って出た。

明日はどんな絶景に出会えるかな。


<To Be Continued...>

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プロフィール

chippe

Author:chippe


肉好きchippeのブログへようこそ!
2006年10月 山歩きを始める。
2007年9月 クライミングを始める。
山岳同人「青鬼」所属。
「メラメラガールズ」所属。
国際認定山岳医。
「カリマーインターナショナル」アンバサダークライマー。
現在は無職、旅人。
旦那さんはpecoma。

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