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2018/11/2〜11/4 John Muir Trail Section Hike 〜Silver Lakes-Yosemite Valley〜 Day2-3

【Donohue Passを超えて】
11/3、4時半起床。少し寒いが、ぐっすり眠れて頭はすっきりとしている。心配された高所障害も全く出ていないようだった。
起き上がり、シュラフに入ったままの状態でまずバーナーに火をつけた。座ったまま微睡んでいるとテント内はすぐに温まった。シュラフを出る決心がつき、テントを出てBear Canisterを取りに行く。風はなく、辺りは静まり返っていた。

テントに戻ると今度は湯を沸かす。ひとりだと全てがマイペースで良いので気楽だ。朝ごはんはスーパーで買ったドライマッシュポテト。いくつもフレーバーがあって、お湯だけでマッシュポテトになる。安いし軽い。カロリーは1袋で約440kcalと、山の朝食にちょうどいい。

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でも作り方は大切。まず器に熱湯を注ぎ、そこへかきまぜながら少しずつ粉を入れていく。そうすることでしっとりとした美味しいマッシュポテトになるのだが、この逆順、つまり粉にお湯をかけるやり方では大抵うまくいかない。
しかし、朝から芋だけで440kcalを摂取するのは意外と大変だった。
この日は1袋分作ってしまったのに、食べきれず半分残した。そのせいで軽くなるはずの荷物がむしろ少し重くなったかも知れない。
ゆっくり準備し、テントを出たのは6時。それでもまだ辺りは真っ暗だった。

ここのところどんどん日が短くなっていて、明るくなる時刻は6時半を過ぎている。
テントを撤収していると、不意に人の声が聞こえた。同時に、揺れるヘッドライトの光がどんどんと近づいてくるようだった。
真っ暗なので顔は見えないが、どうやら15Lほどの小型ザックを背負ったトレラン風の2人組だった。スピードを保ったままの彼らと挨拶を交わす。一体どこから来て、どこまで行くのだろう。テント泊装備は持っていないように見えた。2人はそのまま足早に通り過ぎて行った。


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6時半過ぎ、私も出発した。東の空は今まさに昇らんとする太陽の陽で赤く燃え上がっていた。


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日がすっかり昇った頃にDonohue Passを通過した。ここから先はYosemite National Park内となる。

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稜線上には万年雪の残る高峰の姿が。

今日の行程は基本的に下りだ。当初の予定ではTuolumne Meadowsの手前で幕営するつもりだった。でも昨日予定よりだいぶ歩いたせいで、それだと今日の行程がかなり短くなってしまう。しかし問題なのは、「Tuolumne Meadowsの半径4マイル以内ではキャンプ禁止」というルール。Tuolumneの4マイル圏内に入ってしまったら最後、Meadows内の有料キャンプ場に泊まるか、通過して更に4マイル以上離れた、翌々日のキャンプ予定地まで行くしかない。でも昨日の感じなら、それも十分可能そうだ。

それに、昨日は念のため水を3リットル担いでいた。昨日1日歩いてみて、大体アプリの示す通りに水がとれることが分かったから、今日は思い切って1リットルに減らしている。
とりあえず行けるところまで行ってみるとしよう。

【休日で賑わうTuolumne Meadows】

標高約3370mのDonohue PassからTuolumne Meadowsまでは標高差約900mの下りになる。Tuolumneを通過することを考えると今日の行程は20マイル(32km)で、昨日の倍になる。得意な下りはスピードの稼ぎどころ、快適なトレイルを駆け下った。

岩場をひとしきり下りきって谷底へ。そこは、さながら尾瀬だった。

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尾瀬の歌を口ずさむ。


氷河が削り出した谷は、水流が削り出す日本のそれと違って広大で平らになる。
こんな谷底の大平原も国内では見られない珍しい光景だ。

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1時間に1回くらいは、ちょうどいい段差を見つけて座り、数十秒ザックの負荷を抜く。2時間に1回くらいはザックを下ろして補給する。そんな感じでマイペースに歩き続ける。この”1時間に1回くらいの数十秒レスト”がなかなか効率的で、大したタイムロスにならない割にその後のペースは上がる。こういうちょっとしたレストやウエアの着脱などは、誰かと歩いているときは「好きな時にいつでも」というわけにはいかず、時としてそれがスピードダウンに繋がる場面もある。ひとりの気楽さはこうした面でもプラスに働くところがある。

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景色に感動しながら楽しく歩いていたら、お昼頃にはTuolumne Meadowsに到着した。朝すれ違って以降人には会わなかったが、このエリアへ近づくにつれ急に人気が増した。土曜日だからか、観光客やトレッカーが沢山いた。人里に降りてきた、という気分だった。

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次々あらわれる巨岩。

はじめてクライミングでヨセミテを訪れた6年前、1週間滞在して以来のTuolumneは何だか懐かしかった。一番印象に残っているのはFair View Domeだ。Regular Routeという5.9、12ピッチの素晴らしいマルチがある。だがこの道中でその姿を見定めることはついにかなわなかった。


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快活そうな老夫婦が、大きいザックに興味を持って話しかけてくれる。
“2日前までValleyでクライミングしてたんだけど、今はBackpackingしてるの!”
簡単に説明したらそうなった。そして、ただそれだけのことなんだと気が付いた。
怪我をしたからとか、そんな理由は些細なことで、どうでもいいことだった。

【Cathedral Lakes、絶景のテント場へ】
Meadowsを無事早い時間に通過、本日の目的地であるCathedral Lakesまであと4.4mileの標識が現れた。時刻は13時過ぎ。十分明るいうちに着けるだろう。
最後の3マイルはまた登りだ。といっても至極緩やか。ここら辺でやっと、持参した1リットルの水を飲みきった。最後の樹林帯では、アプリで「水場」と表示されているところでも干上がっているポイントがあった。
Cathedral Lakesから3.5kmのポイントで、豊富な水流にあたる。テン場から一番近い水場はまだ上にあるのだが、ここで念のためまた1リットルを補給した。


多くのトレッカーとすれ違い、会話をした。大荷物を見て”JMTかい?Niceだね!”と言う人や、”もしかしてLakesで泊まるの?”と尋ねる人。その誰もが、”Cathedral Lakesはamazingだったよ!本当に!きっとsuper gorgeousな夜になるね!”と口を揃える。やたらと期待を持たせてくれるじゃないか・・。早く行ってゆっくりしたい!と思うと、歩速は自然に早まった。

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特徴的な形のCathedral Peaksがあらわれはじめる。

16時ちょっと前、テン場から約1kmのところにある最終水場にたどり着いた。しかし・・ここで不安が的中。沢は枯れていた。沢床は比較的面積がありしっかりとした水流だったはずだが、水音は皆無、湿り気すらない。
しかしさっきの水場までは往復5kmで、今から行くには遠すぎる。仕方なく、トレイルを外れて少し沢筋を遡ってみた。すると、数メートル上流に氷を発見した。

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テン場は湖のほとりの様だが、地図にもアプリにも水場マークはない。ここで水を作って持って行くのが無難だろう。ザックを下ろし、水作りをはじめた。

ナイフで氷を割って、呼び水を入れたウインドバーナーで温める。ここで濾過式浄水器が活躍した。松の葉や砂だらけの氷が溶けた水を、溶かしてすぐに浄水器に詰める。浄水器があるから煮沸する必要がなく、ガスの節約になる。そして浄水器の口からナルゲンボトルへ移し替える。これにより、人力で取り除くのはほぼ不可能に等しい大量の葉や砂も綺麗さっぱり除去することが出来た。

水2リットルを作るのに20分とかからなかった。合計3リットルの水を担いでまた歩き始めた。最後の登りだ。
この時間になると、もうあたりに人の気配はなかった。

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着いた。ここが今日のテン場だ。またしても一人っきり。
静かな湖の向こうで、白い花崗岩の大岩峰が悠々と虚空を支配している。
今夜もここら一帯、ざっと5km四方くらいの贅沢な空間を独り占めだ!


【湖と針峰、夕日にコーヒー】
17時、行動終了。本日は行動時間10時間半、移動距離は32kmだ。靴の中が蒸れてかかとの皮膚が少し痛い。靴下はもう少し薄手のものでも良かったかも知れない。

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湖のほとりにテントを張った。本来、JMTには”キャンプ指定地”なるものがあって、そこ以外の場所でテン泊してはいけない。だが地図(縮尺が大きすぎる)に示されている位置はざっくりだし、実際に囲いや看板があるわけでもない。シーズンオフで人が居ないのもあって細かい位置は分からない。適当に、あまり環境に影響がなさそうな場所を独断で選定した。

ここも標高約2900mと高めではあるが、昨日のテン場よりは暖かいし風もなかった。だーれも居ないから、大空の下で伸び伸びと着替えをする。楽だしとても気持ちが良い。

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防寒仕様にすっかり着替えたら、テントの外にマットを敷いてコーヒーのための湯を沸かした。食べきれなかった今日分の行動食をつまみながらCathedral Peaksを見上げる。湖畔には小鳥がつがいで居て、熱心にずっと地面をつついていた。

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熱々のコーヒーを舌の上で転がしながら、1日が終わりを告げる刻、その空色の変化を楽しむ。地平線に近づいた太陽光が複雑に屈折して生じたその橙色が飛行機雲を深く染め上げてゆく。刻々と変化するその様子をただ見つめるだけの時間。感覚が研ぎ澄まされ、頭は冴え渡る。でも心は穏やかだ。Wifiルーターを持ってきたものの、ずっと圏外。それでいい。こんな景色を見せてくれようとして、岩のことばかり考えていた私に、何らかの力が働いた。そう信じ込んでしまうほどに、この景色とこの時間は得難いものだった。


【Valleyへ】
翌朝、11/4は4時に起きた。昨日より30分早く起きて、30分早く出るつもりだった。昨日のペースで歩ければ、昼過ぎにはCamp4に戻れる。そうして5日、6日、7日と三日間をクライミングにあてられる。心なしか肋骨のパコつきも少なくなっているようだった。

今朝は昨日ほど寒くなかったからか、起きてすぐテントを出られた。朝一でもよおして、トイレ穴を掘ろうとスコップを地面に突き立てる。地面は凍っており、植物の根も張っていて硬かった。次の瞬間、まだ一打目だというのに、ぼきっという音をたててスコップはあっけなく折れた。

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やっぱりプラスチックじゃ駄目らしい。ま、$2だったし、いっか。
その後は、折れたスコップの先と石とを上手く使って何とか用事を済ませた。

今朝はマッシュポテトも随分うまくいった。あらかじめ熱湯を注いだ器に、粉を少しずつ振り入れながらかきまぜる。やはり半分くらいを残して丁度いい量のマッシュポテトが出来上がった。テント撤収をすませると、昨日より30分以上早く出発できそうだった。
しかし、何故だろう。すでに空が白み始めている。時刻はまだ5時半で、昨日は真っ暗だったはずだ。

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だがこの時は、11月第1週日曜日の午前2時に人知れずサマータイムが終わり、スマホの時計も自動的に1時間ずれるという事実を全く知らなかった。
そして日に日に日の出時刻が遅くなっているのも相まって違和感の域を超えず、気づけば朝焼けの美しさの前にすぐさま忘れてしまった。

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今日の行程は、Happy Islesまで17.5マイル。はじめに標高差150mほどのCathedral Passまでの登りがあり、一旦下ったあとに再度同じくらいの高度を登り返す。その後はYosemite Valleyの谷底まで標高差1600mを一気に下って行く。

Valleyが近づくにつれて、景観はこれまで見慣れていたものへと変わっていった。大きな山火事跡を通過すると、Half Domeの後ろ姿が見え始めた。

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此処まで来ると、もう冒険は終わったという感じがした。そうなると「のんびりひとり旅」は、ただの「下山作業」になった。ペースはどんどん早くなり、ザックを下ろす回数も意識的に少なくした。周りにトレッカーが現れ始めたらもう、自分のペースでは歩けない。今日何時までに着ければ、あれをして、これをして・・と雑念だらけになった。
そんな調子だから、最後のMist Trailの下りは一番キツかった。数日前も一度ぐるっと歩いており、知っている道だというのに矢鱈と長く感じられた。

Happy Islesのバス停が見えると、ほどなくしてバスがやってきた。空身の観光客たちが続々駆け寄って行く。何故かつられて私も走ってしまった。

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バスは休日を楽しむ人たちで大にぎわいだった。

【スイートホームに帰還】
Camp4へ戻ると、ボルダーをしていたGachioくんたちに会った。Silver Lakeで別れてからたった3日しか経っていないとは何とも不思議な感じだった。
その後、夕方になって他のクライマーたちもSさんもCamp4に戻ってきた。
みなこの3日間も変わらずクライマーで居て、クライミングをしていたんだな。当たり前のことがどれも新鮮に感じられる。
ツアーは泣いても笑っても、あと3日。たとえ明日の朝、まだ肋骨がパコパコしていても、私はもうくよくよしたりしないだろう。

今回、John Muir Trailへ行く決断をしたのはとても良かったと思う。小さなことがどうでも良くなったし、怪我をするたびに訪れるメンタルとの戦いに勝利するためのヒントを得られた気がする。そしてTuru-Hikeをしてみたいという気持ちもより一層強くなった。更に、この体験が私にとって特別なものになったのは、「一人だった」ということにあるだろう。シーズンオフで”solitude”を満喫出来たことが、自然との一体感をより強くしたと思われる。
ありがとう、ビッグアメリカの大自然。残り3日間も精一杯楽しむよ!

<JMT編完。「最後の三日〜Yosemiteまとめ」につづく>

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プロフィール

chippe

Author:chippe


肉好きchippeのブログへようこそ!
2006年10月 山歩きを始める。
2007年9月 クライミングを始める。
山岳同人「青鬼」所属。
「メラメラガールズ」所属。
国際認定山岳医。
「カリマーインターナショナル」アンバサダークライマー。
現在は無職、旅人。
旦那さんはpecoma。

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