2018/11/29
2018 秋 Yosemiteツアー 〜旅のTips〜最後の三日〜
今回4度目のヨセミテですが、備忘録的に、そしてはじめて行く方にも分かりやすい様に改めてまとめてみます。【Yosemiteでの生活Tips―交通、キャンプ、買い出しなどなど】
1. 交通
・空港:今回ははじめてFresno Yosemite Int. Airport(FAT)を利用しました。

空港は綺麗で、メタセコイヤの森もある。
San Francisco空港(SFO)を利用する方も多いと思います(私も3回目まではそうでした)が、渋滞がなくても車で4時間はかかるので、特に帰りの運転がいつも核心です。でもFresnoからならほぼ1本道で約2時間。渋滞もほとんど無いのでとても快適です。
アメリカン、ユナイテッド、デルタなどが乗り入れています。
国内乗り継ぎにはなりますが、それを加味しても断然楽でしょう。
今回はアメリカン航空でLos Angels乗り継ぎ。乗り継ぎ時間込みで15 時間でした。

アメリカン、安いけどアイスとか出てきたし、日本語吹き替えの映画メニューも豊富だし、全体的に満足でした。
田舎の空港ですが(だからなのか)、とても清潔で、がら空きで、小さいので各設備がコンパクトにまとまっていてとても利用しやすいです。たぶん海外旅行初心者にはもってこいです(むしろLAX乗り継ぎが核心になるか?)。レンタカーのカウンターも並ぶ必要なし、スタッフも感じ良かったです。

また、帰りは早朝便だったので、前夜に空港入りして1ビバークしたのですが、上記の理由から超快適に過ごせました。チャージステーションも貸切状態でした(笑)。
まあ、空港が空いていたのは、とりもなおさず。Camp4ががら空きになるほどにクライマー以外の観光客がYosemiteから居なくなる時期だったというのも大きいでしょう。
・車:レンタカーが断然便利です。アメリカではガソリンスタンドで日本のクレジットカード(正確には、アメリカ国内の住所登録のないカード)が使えません。日中に有人のスタンドで給油しておくのが一番簡単でしょう。Valley内の移動は、朝7時から22時まで無料シャトルバスが運行しているのでこれも相当使えます。
2. キャンプ

キャンプは楽しいな〜。
・Camp4の受付:これまでは、初日の夜はHalf Dome Village(旧Curry Village)に1泊。翌朝超早起きしてキャンプサイトをとるためCamp4前のキオスクに並ぶという、過酷で半日潰れる作業を毎回やっていました。
でも今年はラッキーなことに10月から”Self-register”、いうなれば”無法地帯(笑)”になっていました。自分であいているサイトを確保したら、キオスクに備え付けの封筒に必要事項を記入してお金を入れ投函するだけ。24時間いつでもOK、並ばなくていいのが最高!

だけど10月中旬まではCamp4がぱんぱんだったので、この「サイトを探す」という作業が結構ハイレベルでした。
まずFood Rocker(通称クマボックス)を片っ端から開けて空いているところを探す。でもどこも空いていないから、今度はテントをたたんでいる人を見つけて即交渉に行く。でも大抵「次は友達が使うんだよ〜」とか言われて断られる。朝のお茶してる人に「どっかあいてるとこ知らない?」って聞いても「いやー、分かんないけどたぶんいっぱいだよ」って言われ。最終的にはとりあえず適当にテントを張って、”ちょっとこのクマボックスの隅っこだけ貸してくれない?”とシェアを交渉する感じになります。
10月後半にもなるとキャンパーがほとんど居なくなるので、サイトもがらがらになり、楽勝です。
ちなみにこのself regi方式になるのは例年11月からだそうで、今年は何故か早かったみたいですね。
・Camp4のクマボックス:10月の終わりに新しくなりました!

綺麗になってギーギーいわなくなったし、ロック方式も変わって指を挟みそうになることがなくなりました。かつ背が高くなったので奥まで見渡せ、出し入れ楽チン。とっても使いやすくなりました。
・焚き火:Fire circleがあるのでガンガンやりましょう。これがなきゃキャンプの醍醐味が半減です。しかも焚き火好きな隣人がいると全て任せっきりで火にあやかれます。小川山じゃそうはいかないよね。

うちのサイトは主に赤いジャンパーの彼のお陰で朝からこのクオリティでした。朝は冷えるので本当に有り難かった(笑)。

彼が来てからというもの、全て彼任せとなった。彼は小枝や段ボールなど必要としない。最初から巨大な薪だけを組み上げて、そこへ謎の液体をぴゅーっとふりかけ一瞬でどっかーん!とやるのだ。私の出る幕は無いと悟ってからは、肉だけスタンバイして「早く焼きたいな〜、焚き火まだかな〜」って待っていた。
国立公園なのでもちろん薪は(というか何も)拾っちゃいけません。Valley内のスーパーで$9で買えます。でも隣人が勝手に拾ってきて勝手に燃やしてたりはまぁします。
・シャワー:レスト日はシャワーを浴びます。Half Dome Villageにシャワーがあります。一応、有料です。それほど混んでいないし、ボディソープ、シャンプー完備。電源もとれるので髪が長い人はドライヤー持っていくと良いです。
・洗濯:Housekeeping Campにランドリーがあります。夜遅くまでやっています。この時期Housekeeing自体はシーズンオフで泊まれませんが、ランドリーだけがあいています。10月中は、洗濯1回$1.5、乾燥機10分25セントでした。それが11月になったらどちらも倍の値段に変わってました!だからやめました(笑)。

1ドル札のみ使用可能な両替機があって、25セントコインにかえて使います。
3. 買い出し
・アウトドアショップ:Fresnoの街にREIがあります。ガス缶、ホワイトガソリン、ギア、ウエアなど大体のものはここで揃います。クリフバーなどの行動食類は高いのでスーパーで買いましょう。Parkから一番近いOakhurstという小さな街にも小さなマウンテンショップがありますが、品揃えはあまり良くありませんでした。
Park内、Half Dome Villageにもマウンテンショップがあります。こちらも大抵のものは揃いますが、消耗品など観光地価格になります。
・スーパー:Fresnoには格安スーパーWalmartがあります。

Walmartはどの店舗も内装(トイレの位置とか)、商品の配置が全く同じなので分かりやすい。
生鮮食品も日用品も安いです。ちなみにWalmartのオリジナルブランド”Great Value”は全部が全部安かろう悪かろうってわけじゃなく、激安で質のいいものもあります。

白パンとかピーナツバターとか美味しい。
でもGVのチーズは、"チーズのようでチーズじゃないもの"なので、Protein 0gです。など、気をつけたほうがいいものもあります。

オレオの種類が豊富すぎ!
VonsはSafe Wayと同じ系列のスーパーです。生鮮食品売り場の肉や魚が特にオススメです。会員価格でお買い物できる"Safe Wayカード"は店員に言えば何の手続きもナシに即「ハイ」ってくれるので、絶対Getしましょう。
また、Oakhurstの街には訳あり商品取り扱いスーパーがあり、野菜などが更に安く手に入ります。

レジが終わると店員さんが「あなたは今日(ここで買い物したことで)○×ドル得したわよ!」って言う謎のシステムあり。

朝はパンかトルティーヤ。たまにベーグルとかマフィンも♪

夜の主食はパスタとコメを隔日で。かけるだけのトマトソースが、夜遅くなった日など便利だった。

レスト日の朝限定パンケーキ。ちなみに、写真左端に写りこんでいるが、包丁を買ってはいけない。なぜなら「北米には切れる包丁は売っていない」が大原則だからだ。分かってたのにまたやっちゃったよ・・
街での買い出しは上記の通りですが、日々の買い出しはValleyのYosemite Villageにあるスーパーでした。何でもあります。

ところで、アメリカはお肉が安くて美味しいです。分厚くて巨大で調理するのが躊躇われるかも知れませんが、スライスして焼いてもいいと思います(焼き過ぎは禁物)。是非ご賞味ください!

アイスはカロリーがやばいから登れた日だけ!
・薬屋さん:今回、思った以上にキズパワーパッドや絆創膏類を消費し、持って行ったものは使い切ってしまったので現地調達する必要がありました。さらに肋骨まで折れて痛み止めも全然足りなくなったので薬屋さんに行ってみました。品揃えは確かにスゴイですが、結論から言うとWalmartなどのスーパーでも十分足りるしその方が安いです。ちなみにPark内のスーパーには絆創膏微妙なのしかありませんでした。
4. トポ
クライミングトポは多数あります。SuperTopoの"Yosemite Valley Free Climbs"が一番スタンダードでしょうか。ただ、Separate Realityとか、載っていないエリア/ルートもあります。Big Wallのルートも載っていません。
一番テンションが上がって、Big Wall含め人気ルートがまとまっているのは、コレでしょう!

この10月に新版が発売されました。カラー刷りで写真も綺麗でモチ鰻です!
この他に、SuperTopoのBig Wallルート集"Yosemite Big Walls"やBoulderのトポもあります。
5. その他
なんかあるかな?こんなもんか。
それでは本編(?)をお楽しみください。
【最後の三日】
11/5の朝、目が覚めた。ゆっくりと起き上がってみた。深呼吸をしてみる。肋骨はパコパコいっていない!

ヨーグルトが美味しくて、Valleyのスーパーにあるやつは全種類制覇した。
Sさんは、最後は私が行きたいエリアに行ってくれるという!何から何まで有難い!!
遠慮せず、Nabisco Wall、Crimson Cringe、Tales of Powerをあげた。

Cookie Cliff、"Nabisco Wall"遠景。
Nabisco Wall(計3ピッチ)は1P目のWaverly Wafer(5.11a)、2P目のButterballs(5.11c)が宿題になっている。3P目のButterfingers(5.11a)は、前回SさんのあとのFLトライで登れていたが、ボルダリーなフェイス系。対してWaverly WaferはOWからのfingerセクションが核心っぽいし、Butterballsは真っ向勝負のfingerだ。どちらも日本じゃなかなか出来ないクライミングだからまたやりたい。特にButterballsは、掴みかけた気がするフィンガージャムの技術をもう一度触って復習したい。
Crimson Cringeは恥ずかしながらもともと名前すら知らなかったルートだが、前回Sさんのトライを見ていて登りたくなった。スーパークラックが日本のヨセミテと言われるゆえんになったルートということで、やはり登っておきたい。
そしてTales of Powerは2年前から憧れていたルートだった。だが、今回1度行って間近でルートを見た時、想像以上に圧倒された。

Separate Reality を通り過ぎてTalesの下降点に立った時、奈落の底へ落ちるような気がした。
実際、かなりかぶっている上、とりつきのテラスも延々スラブ状に傾斜している。そのためクラックに中間支点をとりながら下降しないと取り付きには降りられない。はじめはそうとは知らず壁を蹴りながら降りたが、結局取り付きには触れることも出来なかった。その後登り返してまた振って・・など散々苦労して、登る前に力を使い果たした。

Tales取り付きからロストラムがよく見える。
ロケーションも、クラックの美しさも、かぶり具合も威圧的ですごい。これは絶対に登って帰りたいルートだった。
でも、私の頭の中にはすでに帰国後のことも浮かんでいた。Yosemiteで玉砕して日本で使い物にならないんじゃダメだ。
だから、肋骨を悪化させないためにも「1日2便まで」と決めた。それ以上はやらない。登れなかったら実力が足りなかったと思って来年以降またやればいい。
また、とりつく順番もたぶん重要だった。どうやらワイドムーブとロープ操作が一番肋骨に来るみたいだった。それで、ワイドとユマールがどちらも出て来るTales of Powerは最終日、と決めた。

今回の大きな収穫は、「フィンガーって楽しい」「ワイドって楽しい」と思えるようになったこと!
結論からいうと、どのルートもその日1便目で登れた。
この頃になると私たちの行動パターンもこなれていて、暑い時間に真っ向勝負をかけるのはやめた。早朝と14時半過ぎからのトライに限定して、お昼はCamp4で優雅に過ごすのだ。その作戦も功を奏した。また、汁手の私の感触では、夕方よりも朝一の方が良かった。たとえタイムアップでルートに陽が当たり出しても、岩自体がまだ冷たいので、陽が陰ってすぐの午後よりもだいぶ良い感じだった。
とくにここ数年で一番出し切ったトライになったのがCrimson Cringeだった。かなり早い時間から陽が当たり始めるルートなので、トライ中はずっと照りつけられていた。かつ、前回のTRトライは痛すぎて途中から各駅停車エイドだった。ムーヴもプロテクションもほとんど覚えていない。

"テーピングはズレるもの"だと思って諦めるしかない。
核心であるはじめのフィンガーを超えたあとも、その後のハンドセクションは長いだけでなく、少しかぶっているしレストポイントもない。ぬめってめくれあがったテーピングはジャムの邪魔するし。ランナウトせざるを得ないセクションながら、もういつ落ちてもおかしくない必死さ。重心が下がり、スメアした左足が滑り、ハンドがずり落ち、激しく肩で息をする。
そしてそこを抜けても、まだ終わりじゃない。最後のフレーク部分はムーヴを起こすのすらはじめてだ。
Sさんの、「レイバック」「ニーバーきめたらもう落ちる気がしない」という言葉を信じて突っ込むが、すでに前腕にも太ももにもふくらはぎにも体幹にも余力というものが残っていない。ニーバーががっつりきまっても落ちそう。レイバックも超全力。
身体張力が使えない。フリクションというフリクションを駆使して留まる。
きっとものすごく滑稽にもがき苦しんでいたと思う(笑)。
だから最後のノブを掴んだ瞬間、「やった!やった!」と叫んだ。

せっかく撮ってもらったのに自分が小さ過ぎて見えない・・(笑)。

Tales of Powerは、下半分はアプローチ。上半分のシンハンドが核心なのだが・・・、うん。たぶん「サイズ問題」だと思う。

中間のテラスでテーピングを剥がす作戦が良かった。前日のCrimsonの傷もあったので、どちらにせよ1便が限界だったかも。
こうしてYosemiteの3週間半は終わった。

このピザ美味しかったなー!
最終日も真っ暗になるまで登った後、Half Dome Villageで、このツアー最初で最後のピザを食べ、シャワーを浴びた。
Parkを出る前、Camp4へ寄り、まだあと数週間滞在する仲間たちに別れを告げた。
いつものように走る道すがら見えたEl Capの黒い影には、いつものように無数のヘッドライトの星たちがきらきらと瞬いていた。

<完>
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