2019/04/01
2019/3/30-31 Mont Blanc du Tacul Supercouloir direct (2P目敗退)
4週間はあっという間で、好天を待ったり撮影をしたりしていたらもう後半戦に突入してしまいました。
今回はTくんとパートナーを組んで登ります。
でもこれまで一度もロープを結び合ったことがないので、シャモニでまず肩慣らしから、ということになりました。
天気予報では3/26から数日間、まとまって晴れの予報です。
TKくんとSくんはグランドジョラスへ出かけて行きました。
私たちはまずSupercouloirに照準を定めました。
SupercouloirはMont Blanc du Taculの東面にあるルートです。山頂まで抜けると850mでピッチグレードはM5+/6/,WI5。下部2ピッチ(direct start)がミックスで残りはアイス。

ルートは正にここを登ってくれと言わんばかりに深く美しく刻み込まれたガリー!
しかし天気は良いながらかなりの強風だった3/26。お昼前にあっさり、"本日ロープウェー運休"が決定してしまいました。
天気のいい貴重な今日という日が潰れてしまう・・!
2人であーでもないこーでもないと案を練った結果、まず3/27-28で入山しTriangle du Tacul(Tacul北面の壁)でトレーニング(兼Tacul下降路の下見)をしようということになりました。
ラインはTriangleのど真ん中、"Contamine-Mazeaud"というII級程度の雪壁ルート。

く・・・黒い!真ん中の白いはずの部分の面積がすごく痩せ細って見えます。岩壁右のノーマルルート(North Face)もクレバスのギャップが大きくなっています(ここは秋の登山シーズンにはハシゴが設置されるらしい)。
しかし今シーズンのシャモニの例年にないドライコンディションのせいか、"雪壁"と思って駆け上がるつもりだったその気概は強化ガラスのように硬い氷壁にまんまと打ち砕かれました(笑)。

強化ガラスの一枚板!下部はベルクシュルンドが大きく口を開けている

とくに致命的だったのは、Supercouloirのためにノミックをピュアドライ に換装したままで挑んだことでした。
歯がガツンガツン弾き返されて、リードでは一打打ち込むのに5、6回振らなければなりません。相当タイムロスしたし体力消耗しました。
学びました。ピュアドライはピュアなドライ用だと。。(当たり前だっ!)
そしてそんなカッチカチの70度程度の氷がひたすらひたすら300mほど続きます。

ルート終了点まで、標高差300mを登るのに1ピッチ50-55m程度で計7ピッチ、時間にして7時間強もかかってしまい下降は真っ暗でした。Aiguille du Midi山頂駅前で一夜を明かし、翌朝一番のロープウェーで下山しました。

上部にいくほど氷が硬くなり、スタミナも切れてきたので最終ピッチだけTくんのノミックを借りてリードしました(笑)。
下山後は、初(?)、全身でふくらはぎのみが異様に筋肉痛という不思議な体験をしました(笑)。

ステーキを焼いて回復!!
天気予報を確認すると、好天が後ろに1日長く続くように変わっていたので、十分な回復のためレストを2日間に設定。
3/30から三日間の予定で、今度こそSupercouloir目指して入山としました。
3/30は土曜日だったので、前回の教訓を活かして7時過ぎから並びAiguille du Midi行きのチケットをゲットしました。やはり整理券が発生していました。
ほぼ朝一便で入山し、北面を下降してからも回収が楽そうな場所、Supercouloir取り付きとの中間あたりにいい場所を見つけテントを設営。
準備を終えて昼前にSupercouloirへ向かいました。

雪が深くなかったのでツボ足でも問題なかった。ケーブルカー山頂駅から取り付きまで軽装なら2時間ちょいだと思います。
今回のタクティクスは、核心である1、2ピッチを初日に登ってロープFIX、2日目に朝3時からユマール開始で山頂ビバーク、3日目に北面から下山という感じで考えていました。
ギアは60mダブルロープ×2、キャメロットC4 #.3-#3×1セット、トライカムエボ1セット、キャメ#.5-#1サイズ相当のトライカム1セット、BDストッパー1番〜7番、スクリュー9本、スノーバー1本、5.5mm捨て縄約10m、アバラコフフック、アセンダー1/2ペア、スリング類としました。

軽量化のため岩ギア少なめ。

行動食は多め
Tacul登頂には、Supercouloir登攀の倍の時間がかかるとか、トポにも「4、5時間かかる」と書いてあるので山頂ビバークを前提としていました。ビバーク装備は1〜2人用ツエルト×1、各自のシュラフ、防寒具と切ったウレタンマット(パートナーはエアマット持参)、MSRウインドバーナーと100ccガス缶1個、アルファ米2パック+マッシュポテトの粉で、35Lザックと20Lザックに納めました。

クーロワールの右はGervasutti Pillarというこれまた人気の岩ルート
しかし初日、取り付きまで行ってみると、下部direct startは見事なドライ!そしてベルクシュルントが大きく幾重にもなって開いており、気をつけないと地の底まで真っ逆さま。さらに岩場までの雪壁も途中が大きく割れています。雪も腐っています。

一箇所割れ目があって緊張したリード
ということで、下部雪壁からロープを出す必要があり、そうなるとロープスケール的にも2ピッチ目までのFIXは厳しそうでした。
かつ1ピッチ目もなかなかに時間がかかり、結局1ピッチ目の途中でこの日のクライミングは終了。

初日のドライはTくんリード。ギアも少ないので短めに切って3ピッチ
15時頃登攀終了してロープをFIXし降りました。

お隣さんも気持ち良さそう

その夜はいっぱい食べて、快適なテンバで18時半には就寝。翌朝は1時に目覚ましをかけて2時行動開始予定としました。

しかし、1時過ぎにゴソゴソし出して作っておいた水を沸かし、マッシュポテトを食べてお茶を飲んだだけなのに、テントを出るとスマホの時計はもう3時半!えっ!予定より1時間半も遅れてるー!
この時少し「おかしいな」とは思いつつも、「ゆっくりしすぎたのか・・」と納得し、すぐにその違和感は忘れてしまいましたが、この違和感、デジャブ。そう、この日の午前1時を境にひっそりとサマータイムに切り替わっていたのでした!(本当はまだ2時半だった!)恐るべしサマータイム!!

何はともあれ4時半(前日までの3時半)にユマーリングを開始。5時過ぎ、前日に到達した1ピッチ目の途中から、私のリードで登攀開始しました。
はじめ10mほどでピッチを切って傾斜が変わるあたりまで。ここはまだ1ピッチ目の途中。アンカーを作ってハンギングし、ヘッドライトの光を頼りに上部を見通すと、そこから上はほぼ垂直に見えました。
さらに45m伸ばし、登っているうちに日も昇り、熱くなってきたし悪くなってきたので手袋オフ!アックスと素手を駆使して登りました。弾切れになり岩が硬そうなところでピッチを切りました。ここはまだ2ピッチ目核心の直前で、2ピッチ目終了点まではあと7m程度はあるようでした。

ここでリードを交代してTくん前進。しかし、本来氷で埋まっているはずのちょいハングチムニーにはスカ雪が詰まっているだけ。Tくんが蹴り落としたら2撃くらいで完全なドライになりました。テンションを交えつつ前進するも、抜け口で「うわー、スッカスカ!ひどい!」と嘆いています。残置ピンでいったんロワーダウン。
リードを交代し抜け口まで行ってみると、氷がつながっているはずのところはもろいリスしかないスラブに、スカスカの雪がこんもりと積もって張り出しています。ここまでのドライセクションは、登られて掘られたのであろうかかりのいいフットホールドもちょいちょいあったのですが、ここへ来てそれもなくなってしまいました。普通氷を登るからでしょう。残置ピンも摂理もありません。
頑張って突っ込めないこともなさそうで、しばらく外傾ホールドに乗ったまま逡巡していましたが、落ちる可能性もあるし、行ってしまって進退窮まる可能性も十分ありました。

仕方なく、残置ピンに捨て縄を通してここから敗退することを決めました。

敗退ポイントから見えた上部クーロワール。ここからはしばらく傾斜がゆるんでひたすらアイス。最後にはバーチカルアイスも楽しめる贅沢なルートです。後半のアイスも楽しみだったから残念。ま、ほとんど岩に見えますが・・・

下降開始時にはもう11時を過ぎていました。ルートそのものは楽しんだけど、結局"山登り"は出来なかった。下山したらより悔しさが込み上げて来た。
今回はじめてまともにTくんとロープを結んだということもあり、認識の違いとかなるほどと思うこととか色々ありました。
失ったものは何もなく、得たものはたくさんあります。
次の登山につなげよう。

本日はArgentiere駅(燃えてしまったGrands Montensケーブルカー駅があるところ)の方まで、情報収集&観光。ドリュも真っ黒!
シャモニ滞在はあと1週間。
ですが天気予報が芳しくありません。
今日を最後に、また最低でも1週間ほど悪天周期に入ってしまう様子です。
でもチャンスがあれば山に行きたいです。
それでも無理ならスキーとか、ドラツーとか、やれることは色々あるし、とにかくシャモニを最後まで満喫しようと思います!

せーぜーがんば〜
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