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2019/4/6 Aiguille du Midi Northwest Face エギーユドゥミディ 北西壁 "Vent du Dragon" (敗退)

シャモニ滞在も残りわずかとなり、やはり3日を超える晴天の窓は訪れず。
4/3から4にかけてはまとまった降雪があり、街も一晩のうちに一面雪景色となりました。

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犬は喜び庭駆け回り

4/5、4/6が本ツアー最後の好天。
1日はBreventのスキー場で普通にスキーを楽しみ、翌日は日帰りでエギーユドゥミディ北西壁のルートをやることにしました。


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こちらも一晩で白くなったエギーユヴェルテとドリュ。どちらも今回登りたかったけど登れなかった。それにしてもスキー場からの景色がコレってすごい


ミディ北西壁はそれほど人気のあるエリアではないようですが、今回選んだ"Vent du Dragon"はその中ではもっとも登られているルートだそう。そしてドライコンディションの今シーズンでも北面には氷があるので、北西壁なら東壁や南壁よりマシなのではないか。かつ、かなりの降雪があった二日後なのでアプローチ距離の長いルートはおそらくラッセル。スキー利用でないと日帰りは厳しいだろう。
もろもろ考えた結果の北西壁でした。

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ミディ北西壁へは、ミディの2つのピークをつなぐ橋から直接懸垂下降して取り付きます。
橋の南端に比較的新しいマイロンのかかったアンカーが作ってありました。そこから真下に55mでつぎのアンカーがあり。

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奈落の底へ落ちて行くよう。でも残置アンカーを使えばずっと空中懸垂というわけでなく岩伝いに降りられます。


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降雪直後なので埋まっているアンカーを掘り出したりしながら、計5回の懸垂を経てやっとルート取付きへ。

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除雪後。除雪前はこの全てが雪の中

天気の良い土曜日でいつもより早くケーブルカーが動き出し7時半には乗車できたというのに、クライミング開始時には10時半くらいになっていました。

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懸垂50〜55m×4回と30m×1回


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取り付きにて栄養補給。風が吹くと吹き上げられた雪で目が開かない


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クライミング開始

このルートはピッチグレードが3、3+、5、5、2(ヨーロッパグレード表記だがUIAAの数字とほぼ一致)とグレーディングされた5ピッチ220mのルートです。1ピッチ目私のリードでスタートしましたが、最後少し同時登攀してもらって65mくらい出し、リード&フォローで2時間ほどもかかってしまいました。傾斜はゆるいのですが締まりのない雪を除雪しながらのクライミングでスピード上がらず。実力不足でした。

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1ピッチ目終了点にて。途中途中でスカスカだけど一応氷が張っていました。おそらく上部も氷はあったのだろうと思われます

このまま詰めていっても、確実に明るいうちにはトップアウトできるけれど、ロープウェー終電16:30(はやすぎ!)まではあとたったの4時間。間に合わなくなるのは濃厚でした。ビバーク装備はないし、軽量化のためビレイジャケットも2人で1つ。ロープウェー駅が閉まって構内に泊まれなければCosmique小屋に逃げ込むという手もありますが、「明日から天気がよくないので万一ロープウェーが動かず山に閉じ込められたら・・」。万に一つの確率、とはいえ帰国は2日後だから少し不安です。

本当は、懸垂で降りてきたクーロワールをまた橋の方へと登り返し、橋をくぐって向こう側へ行けば北壁から簡単に駅へ戻れたようです。そうした下降や敗退についても、ちゃんと調べたり話し合ったりしていなかったのが良くなかった。今思えば、メインのクライミングが終わってしまって、ルートに対する情熱や集中力も欠落していたと思います。

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橋の向こうへ歩いて行けばいいらしい。隣のルートを登っているのはTくんとTKくんパーティ。


「ロープウェーから見た感じ、たぶんロープウェーの中間駅へ降りられると思う・・」というパートナーSくんの言葉に逡巡しつつも、中間駅の最終便に間に合うべく、そのプランを敢行することにしました。

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なんか今日はラペルばっかりしてる気がする

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北面の岩場をまいて降りる

しかし取り付きから懸垂と歩きで北へと下り眺めてみると、北西面からロープウェーの走っている北面へ至るには結局数ピッチのクライミングが必要そうでした。そのまま北西面を降りて行くと、急に切れ落ちた断崖に行く手を阻まれます。地形図上は等高線の間隔が広いのに切れ落ちており、少し進んでみるとそこは氷河だと分かりました。おそらく氷河がきれて断崖絶壁を形成しているのでしょう。すぐ近くに見える直下の平坦な雪原には気持ち良さそうなシュプールが幾重にも刻まれています。しかしおそらく近く見えるのは錯覚で、300mくらいはあると思われます。

ここを懸垂するのは不可能。ということで、右上に、北壁へと向かっているスキートレースを辿ってみることにしました。

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急斜面をトラバっているスキートレースを振り返る

見に行ってみるとそこには下降支点があり、北壁と北西面との間に細いクーロワールがありました。ここをくだれば、傾斜のゆるい雪原に到達できそうです。

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残置アンカー

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なるほどココに細い谷があって、こちらからなら氷河をまけるわけです。地図上でもここはほんの小さな筋。これはわからないね・・!


そして、まさに今日、おそらく今朝降りただろうトレースもついています。ここから数回の懸垂を経て40〜50度くらいの急斜面へ。そこで残置支点もなくなり、エクストリームスキーヤーによるものと思われるトレースはずーーっと横滑りしています。


さっき巻いた絶壁がやっぱり氷河の大断崖だったことを視認しつつ、高い気温ですでに腐った沢地形をツボ足で降りていきました。
アンザイレンしつつ、雪面になるべく負荷をかけないよう降りて行きますが、途中、雪壁が大きく割れたところを何度も通過しました。
かなり時間がかかり、中間駅の最終にも間に合わないのが確実となりました。
よし、がんばって歩きましょう!

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巨大な氷河の崖下に降り立つ。ガスが濃くなってきた


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街まではあと標高差1000m


氷壁のクライムダウンも交えてやっと傾斜が緩む。GPSで位置を確認しつつ、基本スキートレースを辿って降りました。

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クレバスの間を縫って

夏道からは逸れていたけど、スキーヤーは上手にライン取りし、最後の藪も巧みにスキーを履いたまま降りていました。
途中幾度か崖の上でトレースが途絶えているところあり。数メートル級のジャンプもぴょんぴょん跳んでました(笑)。この密林で・・・かなりの手練れのようです。


結局、ロープウェーで20分くらいで降りられる標高差2500m超を降りるのに7時間半ほどかかりました。降雪直後だった上に気温が高く、下りとはいえラッセルも骨でした。アンチスノープレートをつけていないスティンガーで雪団子地獄になりながら、21時頃やっとモンブラントンネルのフランス側出口前に到着しました。


ここから家まではさらに5km弱の道のりです。
親指を立てながらテクテク歩いていたら、なんと!1台の車が停まってくれました!やったー!
フランス語を話す親切な3人家族が家の近くまで乗せてくれました。ミディのケーブルカー駅前まで行きたいと告げると、「シャモニ来るの初めてなんだよね。ケーブルカーの駅ってどこかな」と言いながら、走ってくれました。
雪でびしょ濡れだったし汗臭かっただろうに・・・
受けた恩はどこかで返さなきゃなね。


ということで、22時を回る前に家に帰りつくことができました。
それにしてもすごいスキーコースだった。ミディ北壁のようなエクストリーム系ではないにせよ、際どい地形が延々続く標高差2700mものロングライン。あれを滑りきるのは技術もメンタルもかなりのレベルが求められる気がします。土地柄必然的にそうなると言うのか、シャモニのスキーヤーは当たり前のように懸垂も氷壁もこなしている。山でやりたいことを実現するために必要なすべての手段を身につけ、駆使しているだけなんですね。


因みにこの日隣の別ルートを登っていたTくんとTKくんはロープウェー駅構内のトイレでビバークとなったようでした。なんでも暖房があって暖かいんだとか。Valle Blancheへ降りる出入り口は閉鎖されてしまうけど、橋のほうから構内に入ることはできるみたいなので、緊急避難として使えるんですね。


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最終的にコチラを登り返したようだけど最後立ってるよね!


というわけで、またしても危ない橋を渡ってしまいましたが、歩いたことでここら辺の地形がなんとなく分かったのは収穫でした。
ついにイギリス、フランスと続いた6週間の旅がもうすぐ終わります。

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錚々たる面子、ガイドの方々が勢ぞろいして日本人飲み会も!

帰国したら、つぎはGWからまた一ヶ月、リベンジのアラスカ遠征へ出かけます!今回はT石くんとまっちゃんと3人で行くことになりました。
テンションうなぎです。シャモニで得た経験と悔しさを次なる氷雪壁にぶつけたいです。


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シャモニ編〜完結〜

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プロフィール

chippe

Author:chippe
chippeのブログへようこそ!
2006.10 山歩きをはじめる。
2007.9 クライミングをはじめる。
山岳同人「青鬼」所属。国際認定山岳医。
好きな食べ物:肉。
カリマージャパンアンバサダー。

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