2020/02/12
テーマは"弱気になるな!"~シンデレラボーイとの死闘22日間~
先週の土曜日からの4日間は、「今冬シーズンの集大成だ!」と意気込んでまた城ヶ崎へ行っていました。
そして、登れませんでした!
あーあ。
これが実力なのだと実感しました。
そしてその瞬間まで、心のどこかでこのルートを「なめていた」ことに気がついたのでした。
城ヶ崎シーサイドエリアにある、シンデレラボーイ5.13a。
大岩純一さん初登のルートですが、当時はシューズが硬く、後半のパートが登りにくかったためシューズを脱いで登った、というのがこのルート名の由来だそうです。おしゃれな名前ですね。
おそらく私と同年代のこのルート。男女問わず多くの方に登られている超人気、クラシックルートです。

常夏!
昨年12/23に初めてトライし、以降通算18日。
シンデレラのトラバースパートのムーブを決めるのにも、サザンクロスのボルト3ピン目まで繋げて到達出来るまでにも10日余を要しました。
トライ開始から17日目となる先々週の土曜日、2月1日には、ついに下からつなげてトラバースを超え、"チリコンカーン"パート出だしのレストポイントまで到達出来るようになりました。
そしてその翌日にはレスト後のチリコンムーブに突入するところまで繋がり、日々少しずつではあるものの進展していました。
それまでの毎日が大小様々な学びと気付きの連続で、やればやるほどにこのルートの奥深さを知っていき、愛着と畏敬の念が増していきました。
シンデレラボーイを完登している先輩たちのアドバイスもどれも身に染みるもので、このルートを完登目指してトライするという過程で私は明らかに成長しました。
そうして迎えた、今シーズン最後のチャンスと思われる4連休。先週末ついにスプラッシュを完登したペコマと共に、またこの地を訪れました。
「必ずこの4日で、あわよくばその最初の1日目で決める!」と意気込んで・・。
しかしこの考えは到底甘かったのです。
それを思い知った4日間でした。
通算19日目となる先週土曜日。身体作りとボルダー中心のジムトレ、追加した体幹トレや調整のおかげか明らかに身体が軽く、もう「チリコンパート」までは何度やっても落ちる気がしません。RPが近いのを確信して、本気トライを1日2便に絞ります。
しかし、この最後に待ち構える核心部「チリコンパート」、そこだけでやればとくに問題になることもないこの場所こそが、シンデレラボーイにおける真の曲者なのでした。

この日は、チリコン核心の"最後の一手"となる"でかスローパー"に右手を出す一手の直前で終わります。
通算20日目となる翌日曜日は、朝2便と夕方1便の計3便の本気トライ。この日もちゃんと少し進みました。それでも、でかスローパーを叩き、振られて落ちるところまで・・。

私のムーブだと、シンデレラボーイは(主要部分のみで)全部で40数手です。でも、クライミングって本当は手数ではかれるものではありません。今更なことですがやはり「足」がとても重要で、強傾斜に耐える体幹が肝です。
つまり、頭の中で「あと一手」と思っていた部分は、本当は足位置や重心位置の移動によってより細分化され、何パートにも分かれていたんですね。
繋げてトライして、落ちてみてはじめてその事実に気付いていくのです。
テンションムーブや、チリコンカーンを登ってチリコン核心だけ練習、とかしても気付くことが出来ない、本気トライを1便出してはじめて分かるということだらけでした。
4連休3日目の月曜日は部分練習だけして半レスト。最終日に賭ける作戦でした。そうして迎えた翌日は、まず朝一便出してダメでした。疲れが溜まっているのか、広背筋の痙攣もしばらく治まらず、15時過ぎまで身体の回復を待って、そこから日没ギリギリまでの3時間でさらに3便出しました。結果、この日もまた進展して高度は上がりました。それでも完登には届かなかったのです。

このルートは何かしらを消耗するレストポイント2つを挟んで3回の核心部が登場する、とても長いルートです。トライ中何度も弱気の虫が顔を出すから、自分の中でのテーマは「弱気になるな!」でした。
しかし昨日の3トライ目が終わって地面に降り立ったとき、太陽はすでに山の向こうへ隠れ、私はといえば、完全脱力していました。
ああ、終わったんだ。最終トライが。これが実力だったんだ。
打ちのめされていました。絶望すら感じない完全脱力。文字通り「放心」していました。
すると、すでに完登している友人が励ましてくれました。こんなにかかると思っていなかったから持ってきた食糧も尽きていた私に、"ザッキー"というチョコウエハースのお菓子をくれ、アドバイスをくれました。
友人たちの優しさと、血糖値の上昇と共に、また気力が湧いてきました。
泣いても笑ってもこれでこの4日間は終了。
ならもう1便出してみるかー!
渾身のトライから30分も経たず、最後のダメ押し便を出しました。やっぱりチリコンパートまでいけました。でも流石にヨレていて、でかスローパー叩きの直前で落ちました。
出し切った。
かつ良い内容のトライが出来た。
この最終便は自信にもなりました。
さて。2/19から、有難いことに、クラブツーリズムさんという超大手さんのツアー登山のお仕事を頂き、10日間キリマンジャロに行きます。初アフリカ上陸で鰻(テンションが)です。
さらにアフリカから帰国3日後からは、これまた有難いことに11日間、カリマーのお仕事でカナダ、キャンモア!念願のキャンモア再訪でアイスクライミングです!
鰻まみれです!

河津桜満開でした。サクラサか・・なかったけど(笑)
そんなわけで、城ヶ崎の今シーズン中の再訪はもう難しいかなと思っていました。
だからこそこの4日にかけていました。
でももしかしたら、キリマンジャロ前にワンチャンあるかも(笑)。
さて。クライミングって、何でしょう。私にとってのクライミングは、自己実現という名の自己満足の極地です。
私は、ひたすら時間をかけてひとつのルートの完登にこだわるクライミングは時間の無駄だと思っていました。ある程度取り組んだら良い頃合いでケジメをつけて、実力に見合ったルートなのか見極め、そうでないならもっとトレーニングしたり、違うルートをやった方が成長出来る。それが自論でした。
「もうすぐ登れる」と思った先々週は、「この4日で登れなければこのルートの旬を過ぎる」と考えていました。
しかし今の自分は、「これが最後」と思った4日間が終わったのにまだ行こうとしていて、私が疑問視するような取り組みになっていないか?という自問自答もありました。
でも、「いや、まだトライがしたい」と思う自分がいます。というのも、このルートに取り組んできて、特に繋げてトラバースパートを突破できるようになってからの毎トライは、全て最大限の集中力で挑んできました。惰性のトライは一度もありませんでした。
そして高度が下がった日も停滞した日もなく、確実に毎日何かしらの進展をしてきました。
更にトライを重ねることでより成長できる気もしています。
だから自分の中では、まだこのルートから逃げる時期ではない、と思うのです。
十年来の憧れルートであるスプラッシュ完登を目標としてモチ鰻でこの地を訪れたペコマと、彼にくっついてきてシンデレラボーイをはじめた私。
彼はスプラッシュ完登後に通算3日くらいでシンデレラも完登し、本当に素晴らしい成果を出しました。
"キリマンジャロ前のワンチャン"は、彼と一緒には行けないかも知れません。でも、昨日どんどん暗くなる中、最終便のビレイをしてくれたペコマは、「頑張りは十分に見たよ」と言ってくれました。

みんな動画撮ってくれてありがとう!
明日はペコマと久しぶりの肉部活動。彼はずっと、自分だけでなく2人とも完登してからの、心からの「パーティ」を楽しみにしていました(笑)。完登間に合わなくて、ゴメンね。でも私はまだ頑張ります。最後の最後まで弱気にならずに頑張ります。

BJC決勝を見ながらマックスバリュで買った地物のお刺身を堪能。
クライミングは楽しいです!
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