2013/07/16
クライミング中の事故~私の事例
最近、フリーの岩場での事故が相次いでいます。こうした事故報告を共有し、事故原因について考察することはクライマーとしてとても重要な事だと思います。
実は私自身も、JFAのニュースに取り上げられるか、最悪今この世に居なかった可能性もあるような、ほぼアクシデントなインシデントを起こした経験があります。
これだけブログやらHPやらをやっておきながら、今振り返ってみて全然記録が無いので、自分自身としても恥ずかしく消し去りたい過去だったのかも知れません。
でも「こんなこともある」という一例としてみなさんのお役に立てたらと思い、自分のためにもリマインドすることにしました。
前後の記録を見返してみて、たぶんインシデントを起こしたのはこの日。
2008年10月25日 小川山 妹岩。
クライミングをはじめてから1年後。
クラックをはじめて半年後の出来事でした。
龍の子太郎(5.9)をアップで2Pつなげて登った。

登った後1P懸垂下降し、1P目の終了点についた。

1p目の終了点は写真に写っている2本の木のうち、上の木(青矢印)のところ。1枚目の写真の赤矢印の木とこの写真の赤矢印の木は同じもの。
しかし、ロープを引いている最中に末端の結び目をほどいていなかったことに気がつく。
すでに結び目は手の届かない高さ(5mくらい上)に上がってしまっていた。
仕方なくロープの途中にエイトノットを作ってロックカラビナでビレイループにつなぎ、そのロープでリードして結び目まで行くことにした。
ペコマにビレイしてもらい結び目まで行き、結び目をほどいた。
そしてどうにかして(たぶんカムエイドで?)1p目の終了点までクライムダウンした。

図のロープは分かりやすいよう色分けしてあるが、本来は1本のロープ(おそらく50mロープだった。懸垂で2P一気に降りることは不可能だったので1Pずつ降りた)。
今、図の緑ロープの末端の結び目はほどけたので、1P目の終了点にセルフをとり、再びロープを引き抜いた。
そして、自分のビレイループとつながっているロープでそのままロワーダウンすることにした。
この時、あろうことか誤って緑ロープを1P目終了点にクリップしたのだ。
(ちなみに1P目終了点は有る程度安定して立てる場所であり、この時点で終了点に荷重はかかっていない)
そして、下でビレイしていたペコマに「テンション!」とコール
→1P目終了点を通って自分と接続されているロープにぐっ、とテンションがかかったのを感じた。
→セルフビレイをはずした
→完全にロープに体重を預けた。
この後何が起こったかはお分かりだろう。
私はフリーフォールした。
「えっ?・・・えっ??」
とわけもわからず、1秒後には何と、写真の赤矢印の木にひっかかって止まっていた・・・!
こうして奇跡的にほぼ無傷で生還することが出来ましたが、起こった事は余りに恐ろしいことでした。
私はこの時のフリーフォールの感触がいまだに忘れられない。
そして自分の余りの愚かしさと、「死」が余りに身近に迫っていたという事実の恐ろしさにショックを受けて数日間立ち直れませんでした。
今でも覚えているのですが、まず1P目の終了点からロープ末端をほどきに行こうと決めた時、
「いつもと違うことが起こっているので、何かミスをする可能性が高い。だからまずは落ち着こう。そして色々と慎重に行動しよう」
と自分に言い聞かせていました。
ロープの途中に結び目を作っているのでロープが折り返されていて間違え易いということも分かっていました。
それなのにクリップするロープを間違えました。
かつ、テンションがかかるはずのないロープに、何だかテンションがかかったような感触を感じたのも覚えています。
そして、そのロープに完全にテンションを移す前にセルフビレイを外してしまった。
うろ覚えですが、たぶんセルフが短く、テラスも安定していたのでロープに完全にテンションを移すのが少々やりにくい状況だったのかも知れません。
この写真を見る限り、赤矢印の木にひっかかる確率は相当低いと思うし、もし落ちていたら助からなかった?(下地は悪いし10m以上の高さがある)
本当に運が良かったとしか言いようがないです。
これ以降私はダブルチェック以外に自分で何回もチェックする癖がつきました。
あと、ルート上にある木にはやたらとロープやらギアやらが引っ掛かって煩わしいですが、この「木には物が引っ掛かりやすい」という性質故命が救われたので、余りその性質に文句を言わなくなりましたw
皆さんはこんな愚かしい事しないと思いますが、実際に起こった一つの事例として考える機会になれば幸いです。
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