2016/02/16
戸台での出会い

先週末、山登魂のイサミくんと戸台で登った。
予報通り土曜の午後から雨が降り始め、途中から強雨となった。
それが一晩中続くものだから、翌朝には戸台川が増水し濁流となった。

少し雨が弱まるのを待って下山を開始したら、行きにあった渡渉点は水没。かわりに行きにはなかったはずの悪い渡渉点が幾度となく現れて行く手を阻む。
上流側の堰堤まで辿り着くとゴールも近いように思われたが、右岸に渡渉しなければならないのに、出来ない。
広い沢床はことごとく濁流に呑まれ、無傷で渡れそうなポイントは見当たらなかった。
左岸にもピンクテープがあったので行ってみようかとも思ったが、地形図にない道だし下流で渡渉できる保証はない。
意を決し、濁流に突入しての渡渉を試みる。しかし水深が腿まで来た段階で撤退。
足をとられて流される図が容易に想像できた。流れが速い!
イサミくんとスクラムを組んで、再度突入。しかしやはり撤退。あと少しで胸まで浸かるところだった。
未だ見ぬ憧れの上ノ廊下って、水量が多い時とかこんなかんじなのかな。
すでに冬山の下山ではなく、増水した戸台川の遡行を試みているかのような様相だ。
そんなこんなで、結局左岸を行くことにした。

ここも印こそあれど結構な崖。そして行く手には第二の堰堤。そこを渡渉出来なければいよいよ閉じ込められることになるだろう。
そんな楽しいやら悲しいやらの不思議な心境でたぷんたぷんになったザングツをひきずり歩いていると、そこに思いがけない"出会い"が待っていた。

とったどー!!
この先の堰堤を越えなんとか渡渉出来たので、この立派なおかしらと共に無事家へ帰ることができた。

というわけで、それからというもの彼と毎日一緒にお風呂に入っている。

それにしてもこんなに素晴らしい姿で残っているものを見たのは初めてだ。角が立派なのは言うまでもなく、繊細な顔面骨の細部に至るまで綺麗に残っている。

顔面骨の扱いは私の専門である形成外科の生業とするところだ。人間と似た部分や人間でいうとどこに当たるのかよく分からないところまで、どんなに見ていても見飽きない。ここが眼窩下神経孔?茎状突起が美しい・・!鼻骨がやたら長いなぁ。などなど。
繊細なパーツが多いため、100均で細かいブラシをいくつか買ってきて丁寧に洗っていくと、その美しい解剖に見惚れてどんどん愛着が湧いてきた。

ネットで骨格標本の作り方を検索すると、大抵は小動物が対象で、それも肉を溶かすところから始まっている。今回のケースは天然の掃除屋バクテリアが細部に至るまで綺麗に肉の処理をやってくれているので、私がすることは最後の仕上げだけ。多少骨折しているところもあるので最終的にはニスか何かで補強して仕上げようと思う。
名前はまだない。
とりあえず"やまのかみさま"ってことにしておく。
快くゆずって(?)くれたイサミくんにも感謝!
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