2018/02/25
海谷駒ヶ岳 カネコロン 敗退記1 〜氷は生物〜 プロローグ
今年の冬は寒かった。1月、2月は上空の寒気が強く、太平洋側も冷え込んで異常に寒かった。
それが功を奏してか、標高の低いところのアイスは発達が良いようだ。
1月中はフリークライミングに勤しみながら、そんなことを思いつつアイスクライマーたちの投稿を横目で見ていた。

2月に入り、憧れのあの氷瀑のことが気になり始める。
頸城山塊、日本海側の豪雪地帯にある幻の氷瀑"カネコロン"だ。
標高は1500mに満たない、しかも南西向きの壁に、条件が揃った時だけ現れる150mクラスの大氷瀑。
春先になると村まで届く轟音をたてて崩れ落ちるらしい。
もしかして今年は凍っているんじゃないだろうか。
ふもとの村からその全景が遠望できるものの、東京からはあまりに遠いので見に行くだけで一苦労。
でも2月の3連休に、ペコマと白馬へスキーに行くことが決まっていた。
そうだ。白馬からなら、ちょっと寄り道程度に見に行ける距離だ。
ペコマに提案してみる。OKしてくれた。

2/11、白馬岩岳から関温泉へ向かう途中、糸魚川へ寄ることになった。
糸魚川シーサイドバレースキー場の第三駐車場から、その姿が良く見える。
ドキドキしながら行ってみると、なんと氷はしっかり繋がっているようだった!
しばしその巨大さに見とれていると、辺りがガスってきてすぐその姿は見えなくなった。

こうなったら、なるべく早くトライしたい。
この幻の氷瀑はいつ崩れ落ちるか分からないし、いつまた良い状態に凍るか分からない。
チャンスは逃したくない。
クライミングバム見習い期間開始を目前にしていたので、その翌週の平日にでもパートナーを探す算段をはじめた。
しかし、これには人生のパートナー、ペコマからの"STOP"がかかった。
「絶対、他のパートナーと登らないで欲しい」
はじめはどういう意味か、分からなかった。でもよくよく話を聞いてみれば、本当は、私が5、6月に他のパートナーと計画しているアラスカ行きだって反対したいと言う。これだけは譲れない。
たとえ日を改めてまた一緒に行くのだとしても、先にだれか他のパートナーと登るのは絶対にNG!だと。
そうか。
クライマーとしては、そんなの理不尽だ、と叫びたい。
でも私がこれから謳歌しようとしているクライミングバムは、家族の理解と協力あってこそのものなのだ。
それを再認識して、翌週のトライは断念した。
でもやっぱり登りたい。
登りたくて仕方ない。
次に行けるのが何年後になるか分からない。
考えあぐね、折衷案を提示した。
「なら、今シーズン一緒に行く?」
でもそれもとても身勝手な発想だった。
その提案した日程は、もともとビビアンたちと城ヶ崎へ行く予定になっていた。
だがペコマとトライするなら、もう今期その日程以外にチャンスは無い。
それをビビアンに打ち明けると、「アイスはタイミングだから」と快諾してくれた。
ああ、皆さま、身勝手な私を見捨てないでくれてありがとう。。

2/19、錫杖の帰り(?)に、またカネコロンを見に行く。
週末の降雪で全体に白くなっており、そして氷もまだちゃんとしていた。
よし!予定通り決行。
2/23に入山し、2/24に登ることが決まった。
しかし今日は天気が良過ぎ。太陽が南西向きの氷に燦々と直射日光を浴びせている。
気温は低いけど嫌だな・・。

除雪終点を確認。
あとで知ったことだが、今シーズンは2/10と2/17にすでに完登者が出ていた。
そりゃ、みんな考えることは同じだよね。

相棒ノミックの刃をpureiceに換装しギンギンに尖らせる。
アイゼンの前爪は長いほうがいいので、スティンガー のfrontpointの換えを探す。
しかし都内では店頭から売り切れ、メーカーにも在庫無し。
仕方なく家に残っていた中で一番長い爪をしっかり研いだ。
スキーも積んで、2/23夜明け前に出発。
ロングドライブの先で、あの巨大な氷はまだ待っていてくれるだろうか?
〜つづく〜
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