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2018 2月27日〜28日 錫杖岳 前衛壁 2ルンゼ 登攀 プロローグ、1日目

<プロローグ>

「壁の中でビバークしましょ♡」(by Sくん)


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2月中旬から、クライマーなら誰もが憧れる"Climbing Bum"(まだあと1ヶ月は"見習い")生活を満喫している。
5〜6月にはアラスカ遠征を控えているし、調子にのって平日も山、休日も山って予定を詰め込んだら、家にいる日は洗濯と次の山行のパッキングに終始し、がんばって時間作ってジム1、2時間、で、また長距離ドライブに出発!
みたいな息つく暇もない感じになってしまった。。(見習い期間中にしっかりスケジューリングも学ばないとね)


2月最終週も平日パートナーSくんと三日間くらいでどこかに行こうと計画していた。
だが、直前になって、最終日3月1日は天気が荒れることがわかり、二日の日程で錫杖にしようということになった。


先々週にハイパーな方と入山したとき、1ルンゼも2ルンゼもとても状態が良さそうに見えたので、もしかして北東壁右ルンゼもいい感じなんじゃ・・と淡い期待がありつつ、Sくんは「2ルンゼに行きたい!」と言う。
そこへきて、上記発言。
しかも「2ルンゼって、ビバーク前提で登られてるみたいじゃないですか」なんてシレっとのたまう。

え?そうだったっけ?

そんなのよく知ってる青鬼の変態二人と、あともう一人くらいしか聞いたことないけど・・って思ったら、出て来た記録はやっぱりその人たちくらいなものだった。
でも確かに某変態さんたち(参考記事)いうところの"ホテル錫杖"には泊まってみたい気がする。
それに先々週、ハイパープロフェッショナルな方も何やらおっしゃってたな・・

「ハンターいくなら継続の練習しといたほうがいいっすよちっぺさん!」 (by hyper TK)

右ルンゼがダメでも、北東壁のどれかに継続するってプランは面白そうだし、ビバーク装備を担いで登る練習はしたい。

ということで、2日の行程で"2ルンゼ〜北東壁(右ルンゼ)"って計画をいちおう組んだ。


だが、平日パートナーのSくんも私とほぼ同じような生活をしているみたいで、25日の日曜日もかなり遅くに下山したようだ。
それでまた翌日夜発では辛かろうと、27日朝に東京を出発することにした。

プランはこう。

27日:東京発→入山→2ルンゼ登攀→ホテル2ルンゼ(仮名)チェックイン→5P目FIX→泊
28日:2ルンゼ後半部登攀→北東壁へ→右ルンゼもしくは左ルンゼもしくはグラスホッパー→下山→東京

的な。


うん、なんだかワクワクしてきたぞ!


久しぶりに本気軽量化を考える、この楽しい時間。


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ビバーク装備は、共同装備として
1〜2人用ツエルト×1、小さいジェットボイル×1、ガス缶小×2、ライター1。
ほかに各自、
マットとシュラフ。私はサーマレストのウレタンマット(ほぼ新品)を背面長に切って持参し、シュラカバとドイターの夏用シュラフ。(+ビレイジャケット、ミトン)
Sくんはパタのエンカプシルダウン!+半シュラ!というセレブリティな組み合わせにエアマット。

食事は、
アルファ米に粉スープとブレンディ。+行動食多め(アーモンドとカキピーとレーズンのMIXに、えいようかん3本、バーなど)。

湿雪のラッセルも考慮して、グローブは本気登攀用とオーバー手、替えのクライミング用グローブの3つを持参した。


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登攀具は、
約60mダブルロープ×2、アルパインヌンチャク×10、キャメロットC4を#4まで1セット(2〜4はUL)、DMMナッツ1セット、大きいトライカム適当に間引いていくつか、EVO 1セット(核心Pで大活躍)、ハーケン3枚(使わず)、イボイボ2本(使わず)、ミニアイスフック×1(ホテル2ルンゼで大活躍)、スクリュー12本(LSL17cm×4、LSL13cm×4、LS10cm×2、BD17cm×2)、捨て縄3m×1、長スリ各自、ビレイ具等各自、いちおうアバラコフフック(兼スクリュー通し)と小さなヤスリ(右ルンゼを見据え)・・。


そして、そして、カネコロンのためにギンギンに研いだままのノミックとスティンガー・・!(右ルンゼに着く頃にはきっとまんまる☆)


これまで2年弱くらい使って来て常々「小さいな」と思っていたascendionist 35Lでしたが、ハーネスはけば冬の1ビバークくらいは十分パッキングできることが今回判明しました。なにごともやってみないとわからないね。


ぎりぎりになっちゃったけど、ホテル2ルンゼは無事予約とれました!(?)
2月27日、始発で八王子駅まで来てくれたSくんをpick upして、いざ錫杖へ!


<1日目>

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なんかめっちゃいい天気!すぎ!


駐車場には9時半ころ到着。予定より早く出発できそうだ。
ストックわかんで行きましょうと話していたが、Sくんわかん忘れ。
でも駐車場でちょうど下山して来た知り合いのクライマーに遭遇し、トレースはバッチリという情報を得る。やったね!


10時歩き始め。
アプローチはこの時間ですでに腐り雪。2ルンゼは若干北東向きだから大丈夫かな・・

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ちょこんとした槍が萌きゅん。


トレースばっちりにつき、11時頃にはクリヤの岩屋でいらない装備をデポ、11時半ころ取り付きに到着し、12時には登攀準備完了できた。


「攀船記でゆずっていただいたので・・」



と、奥ゆかしいSくんは、核心の6P目のリードを譲ってくれるという。
遠慮なく登らせてもらうことにし、奇数ピッチ担当となったSくんリードで登攀開始した。


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1P目

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1P目抜け口

1P目は左の凹角にラインをとって氷を登る。氷の発達もたぶん良さそうだし草付きも凍ってる。雪田にあがったところの潅木でビレイ。
そのまま2P目の雪田をあるいて3P目と思しき氷化した凹角の直下に至る。
フォールラインに入りたくないけど、プロテクションをとれるところが見当たらない。
仕方なく、懸垂用なのかな?と思われる汚いスリングをちょっとどけて、ピナクルとスクリューでビレイ点とし、Sくんを迎えた。


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2P目雪田。あまり日が当たらないのでそこまで腐ってはいない。


つづく3P目、順調に氷瀑を登っていくSくん。姿が見えなくなってからもしばらくロープが伸びて行き、ほどなくして3m分くらい短い青ロープのほうがいっぱいとなった。


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ビレイ解除し、「いっぱーい」(フォー!コールは使用せず)と言いながら数メートル登るとロープの動きが止まった。
すぐに「どうぞー」のコール。
フォローを開始した。

快適に氷を登っていると、10mくらい登ったところで右壁に割と立派なラペルステーションをみつける。
あまり気にせずフォローをつづけ、ふっと「見覚えのある」ような景色の脇を通過した。

数メートル登ったところで、「ん?」と思い見下ろすと、あれ。右下方に見たことのある洞窟状がある。
誰かさん(参考記事)がベルグラへの乗り移りに苦労してプアプロガチフォールしてたあの場面にものすごく似てる・・・

気がするけど、きのせいだよね!
(4P目は偶数ピッチ担当者にとっては初日一番の核心部かなと思って楽しみにしてたし!)


きのせいだよね!
(だってもしそうなら3P目が短すぎるし!)


って思いながら登り続けたら、こんもりと積もった雪塊の向こうで隠れるようにビレイしてるSくんの姿が見えて来た。


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ちっぺ「Sくん、もしかして・・・・・もしかした?」

S「・・・・・・はい、もしかしました・・・すいません・・・」

ち「あ、いや、全然いいんだけど・・。あれ、やっぱり?(笑)」


なんと楽しげに思われた4P目というものがなくなってしまっていた!氷はりすぎ?
狐につままれた気分で、16時頃には無事ホテルにチェックインとなった。


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ホテルの部屋を見て開口一番、

ち「うわっ!なにこれスゴイ!✨」

思わず歓喜の声をあげた。きっとこれを見たら誰もがそうするだろう。


2畳くらいの部屋が二部屋もあり、ゆうゆう立って過ごせるほど天井も高い。
なんなんだこの空間は!!
これは泊まらなきゃ損!ていうか、むしろ1泊じゃもったいない!!

感動さめやらぬ中、荷物を預けて、

ち「えーっと、じゃあ、FIX行っちゃっていい?」
S「もちろんです!」

と、オーダーが逆転したけど私が5P目を行くことになった。
明日のオブザベもできるしちょうどいいか。

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空身で快適なIV級くらいの氷を登って行き、最後は岩が露出したいやらしい腐り雪地帯を草つきも使って登って終了。
はじめ、6P目のラインがわからなくてどっちに行こうか?と迷ったほど、6P目は岩岩していた。
思っていたのと全然ちがう・・

すでに枯れている、前腕の半分くらいの太さしかない灌木の根元に汚いスリングが巻かれている。

なにこれ。これで懸垂とかしたわけ?(笑)

クラックに#4と#.75を極め、その"(笑)"な木も使ってビレイ点とした。

ふたたびよくよく見上げると、やっとラインが見えて来た。


なるほど・・・
クラックを使って登って行って、最後はあの恐ろしげなつららの下から恐ろしげなベルグラに乗り移って、そしてハング越えするのね・・・!


なにこれやばい!登れんの?すげーすげー!


興奮しながらFIXロープを設置し、ホテルに戻った。


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部屋につくと、Sくんによって荷物が整理され、壁ビバークおきまりのFIXも張り巡らされ、非常に快適な空間が作り上げられていた!

うわー泊まれるの楽しみだー!

テンション高め、かつ万事予定通りに初日を終了した。

2日目の記録につづく!

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プロフィール

chippe

Author:chippe


肉好きchippeのブログへようこそ!
2006年10月 山歩きを始める。
2007年9月 クライミングを始める。
山岳同人「青鬼」所属。
「メラメラガールズ」所属。
国際認定山岳医。
「カリマーインターナショナル」アンバサダークライマー。
現在は無職、旅人。
旦那さんはpecoma。

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