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Huaraz まとめその1 〜2019 ペルー旅行記その11〜

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プラサデアルマスはみんなの憩いの場。私もヒマな時はここで日向ぼっこ。


"南米のシャモニ"とは誰が言ったかワラスシティ。
登山の前後、計1週間ほどをこの愉快な街で過ごしました。


今回は、ワラスまとめその1。Huarazの街での暮らしについて紹介します。


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プラサデアルマスにいるアルパカおばさん。


1.治安
観光地であり登山基地であり、大都市ではないワラスは、リマやクスコと比べれば治安は良い方だと思います。街の雰囲気は"田舎町"という感じで、しつこい呼び込みや"日本人と見れば声を掛けてくる度"も低いです。もちろん深夜早朝の不要な外出や人通りの少ない路地の通行はしていません。
治安とは別ですが、中心地を離れると野犬がヤバいです。対して都市部にいる野良犬はみな大人しくて可哀想になるくらい弱々しいです。

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夜が更けても人通りは多い。


2.交通手段
登山口や少し離れた観光スポットなど、歩いて行けない場所へはcolectivoが便利です。colectivoはハイエース〜マイクロバスくらいの大きさの乗合バスで、主に地元民の足です。行き先によってcolectivoの乗り場(バス停ではなく主にただの道端)は違うので後述の観光案内所で聞けばOK。(他の記事も参照)

行く場所によりますがs/1〜s/20(32円〜640円)という値段感覚で移動できます。(スペイン語オンリー)
市内を移動するだけであれば徒歩で十分な規模です。ちなみにタクシーは一度も利用していません。(タクシーアプリUberはサービス圏外です。)

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トゥクトゥクも全然必要ないレベル。


3.観光案内所 iPeru

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公共機関なのか?ちゃんとした施設で、いわゆるビジネスアワーだけ開いている感じです。他の街でも見かけました。英語を話せるスタッフが何でも即答で答えてくれます(笑)。何度もお世話になりました。


4.登山情報
・Casa de Guias
Plaza de Armas(プラサデアルマスと読む。どの都市にも同じ名前の広場があり、その都市の中心地となる)の北に、Guinebra(ヒネブラ)公園というクライマーのモニュメントがたっている広場があります。この一帯は登山、トレッキング、クライミング関連施設が集中しています。登山用品もこの一帯で調達できます(英語はできたりできなかったり)。

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そこにあるのがカサデギアス、登山学校です。登山者やクライマーの入山管理、情報提供などを行なっています。登山される方は入山前に必ずお立ち寄りを。英語OK。
(アルパマヨの記事に詳しく書いたので割愛)


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登山用品の売店やツアー会社が立ち並ぶエリア。8ozガスカートリッジs/23など。


・California cafe
プラサデアルマスの少し南にあるカフェです。オーナーがカリフォルニア出身なんだとか。wifiサクサクのお洒落カフェで、古い登山雑誌やマップなどを自由に見られます。ここにも登山情報、パートナー募集用の掲示板があります。英語OK。

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オシャレでくつろげる店内。朝8時からやってる。


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登山、クライミング問わずパートナーを探している人多数。そうと知っていればもっとワラスで時間を取ったのに・・。岩場も色々あるみたいなので行ってみたかったですね。


・その他旅行会社のデスク
このヒネブラ公園一帯を中心として、街の至る所にツアー会社のオフィスがあります。話を聞くだけでもOK。もちろんツアーに参加するのもアリでしょう。Laguna69やParon湖などなど、人気のトレッキングルートは山ほどあります。前日くらいまでに申し込めばOKという割と気軽な感じのようでした。
だいたい英語OK。


5.買い物
・Novaplaza 、Market Trujillo
最も一般的な"スーパー"がこの2つです。私は主に前者を利用していました。食品日用品ほぼオールジャンルあり。このほかにも個人商店が点在していますがスーパーと値段は同じです。

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リマでは水650mのペットボトル1本s/2だがこの街ではs/1。


・Mercado Central(メルカドセントラル)

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いわゆるマーケットです。沖縄の牧志公設市場みたいな巨大な屋内施設があり、肉、魚、野菜、果物、服や靴、その他日用品なんでもあります。巨大な豚を肩に担いで狭い通路を歩く人、解体ショー(ショーじゃないんだけど)してるひと、沢山の鶏をぶら下げたお店、屋台スタイルの食堂、野良犬と、歩くだけで楽しいところです。
安いですよ!

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私は今回全然自炊しなかった(ペルー料理が食べたかったので)のですが、ここで買った食材で料理とかも楽しいのではないでしょうか。

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お買い物ってか観光としても行くべき。


6.食事
屋台なら1食50円〜200円、食堂ならだいたい1食250円でおなかいっぱいです(s/1=32円)。観光客メインのカフェやレストランも沢山あります。それでもちゃんとしたディナーにお酒まで飲んで3000円台でした(マチュピチュやリマ、クスコじゃそうはいかない)。
それでは私が食べたものの一部をご紹介!

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路上でおねえさんが「タマーレース!」と叫んでいるまわりに人が集まっており、みんななにやら美味しそうな黄色いモノを食べている。


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私も買って食べてみると、トウモロコシを固めたモノっぽい感じがした。中に鶏肉やオリーブが入っていた。調べてみるとtamalがトウモロコシって意味なので合ってるかも?1皿s/1.5。


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食堂のアンティクーチョ(牛ハツの串焼き)s/8。通常イモとセットで供される。屋台のは半分くらいの値段で、串の先にイモが刺さったものが供される(笑)。どちらも肉は柔らかくジューシーでとても美味しい。必食ペルー料理だが、西洋人には「心臓なんて!」と引かれる。


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屋台料理は格安なうえ一人にはちょうどいい量なので気軽に食べられる。上はチチャロン(豚角煮揚げ)の屋台。
下はセビーチェ(生魚のピリ辛ライムマリネ)の屋台。ここは山岳地域Sierraなので、魚介はリマとか沿岸部で食べるのが良いに決まってる。でもあまりにたくさん屋台や店があるので我慢できなくなって食べた。もちろん美味しい。1皿s/5。


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こちらはある日のお昼ご飯、量も質もより本格的な屋台セビーチェs/6。食堂で食べられるのとほぼ同じクオリティ。

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力一杯ライムを絞るおばさん。絶対にお腹を壊したくない人はやめておいた方が良いのかもしれない。でもお魚は新鮮でとても美味しかった。ちなみに私は数日後、リマに戻ってから急に体調を崩したが、なにが原因だったかは未だ不明(思い当たることがありすぎて)。


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ヒネブラ公園にあるPashtaというオシャレなサンドイッチ屋さんにて、チチャロンサンド。ここのは特別ジューシーでボリューミーでがっついてしまったけど、その後がっつりもたれた(笑)。


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こちらはペルーに来たら必ず飲むべしピスコサワー。ピスコというブドウの蒸留酒にライムジュースとメレンゲを加えた人気カクテル。お店は、プラサデアルマスの向かいにあるBistro de los Andesという人気店。2回ほど行きました。ちなみに、一度ココで飲食すれば、その後はいつでもプラサデアルマスで日向ぼっこしながらWifiが出来る(笑)。


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こちらも老舗の人気店Creperie Patrick. 主人はフランス人だそう。で、こちらはクイ料理。クイとはペルーの家畜として飼われているモルモット。現地では高級食材としてお祝いの時などに食べられているんだとか。高タンパク低脂肪でヘルシー食材としても人気が高い。でもジューシーで美味しかったです。


ちなみに普通の女性は1品でも食べ切れないと思います。定食なんかだと自動的にセットで出てくるのでそれはもうスゴイ量です。私はお昼に食べたものが夕方までもたれて結局夕食を食べ逃す(で朝はめっちゃ空腹)、というあやまちを何度も繰り返していました(笑)。
食べ切れないときは大抵持ち帰りが可能!"パラジェバール、ポルファボール"と念仏のように唱えましょう。ちなみにスペイン語はカタカナ発音でオーケーです!


7.宿泊
宿はドミトリーからホテルまで様々あります。
設備と価格帯を見るにつけ、全体的にリマのワンランク下、といった感じでしょうか。
たとえば・・

リマ:1泊$70くらいのホテル=日本:東横イン>>ワラス:1泊US$50くらいのホテル>=リマ:1泊$19くらいのドミトリー>ワラス:1泊$13くらいのホステル(シャワーお湯出ない)

こんな雰囲気でした。
最近バイトでよくビジネスホテルに泊まりますが、日本のビジネスホテルの質の高さは改めてすごいです。


と、なんだかまとまりのない文章になってしまいましたがワラスは居心地の良い街です。
次の記事では、ワラスから日帰り可能なオススメの観光スポットをご紹介します!

2019/08/15-16 Quilcayhuanca -Cojup trek 〜2019 ペルー旅行記その10〜

8/15 朝6時半にHuarazの宿を出ます。
colectivoに乗って目指すはPitecという名の登山口です。


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乗り場はiPeru(観光案内所)のおばさんに教えてもらいましたが、その情報を元に見てみると、Google Mapにもちゃんと乗り場の表示がありました(Llupa/Pitec/Churup行き)。

バスの始発はおそらく7時半ころ。トレッカー風の西洋人たちでいっぱいになったところでバスは出発しました。


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Pitecには45分ほどで到着しました。Huarazからアプローチが近いのも良いですね。
バスを降りるとNPの係員がいて、名前やパスポートナンバーを記入するよう言われます。ここで入園料の支払いもします。


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私はHuarazで購入済の1ヶ月有効チケットを提示すればOKでした。


殆どのひとがChurup湖へと向かうトレイルを登っていきました。コチラは日帰りで行けます。


これから歩くQuilcayhuanca-Cojup trekは、標高3850mのここPitecを出発し、標高5050mの峠を挟んで隣合う2つの谷を巡ります。キャンプサイトはトレイル沿いにいくつもあって、2〜3日で歩くのが一般的なようです。


私はなるべくゆっくりして2泊ぐらいするつもりで35Lザックに準備しました。
はじめはしばらく車道を歩いていきます。


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道沿いに藁?葺きの民家と羊たちが見下ろせました。


数キロ歩くと舗装道が終わり、ゲートが現れます。ここからがNPの敷地内となるようです。ゲートは閉められていましたが、おじさんがいて塀の登り口を教えてくれました。


塀を乗り越えたその先には、清流と大平原が広がっていました!

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とにかく水が綺麗です。
馬や牛もいます。豊かです。


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しばらく歩いていると、後ろからトレッカー2人組が追い付いてきました。エクアドル人女性とスペイン人男性のペアです。

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「こんにちは!どこまで?」
「えっとキルカ・・イウァン・・か?こふっ・・ぷ?」(まだちゃんと覚えてない)
「ああ、私たちも同じよ!2日?」
「分からない。3日かな?」
「そうなの!私たちは2 daysよ!」


彼らは2週間くらいでペルーに来ていて、他にサンタクルストレイルも踏破したとのことでした。


このほか、反対側から歩いてくる人と一度すれ違った以外は人にもロバにも全く出会わないという、とても静かでいいトレイルでした。


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点在する気持ちのいいキャンプサイトでゆっくり休憩しながら進みます。


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「500m先キャンプサイト」の看板がしっかり建てられていたので、たぶん指定地以外は張らないほうがいいのだと思われます。


初日は標高を4870mまで上げ、ふたつの小さな池のあるキャンプサイトに張りました。


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ここが今夜のお宿!


この一つ手前のサイトは水量豊富な沢沿いでしたが、ここは沢筋から外れて久しく、池から水を得るしかありません。手前側の池の方が水が澄んでいたので、そちらから水をとりました。やはり海外のトレッキング、浄水器は必携です。


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カレーヌードル!!至福のとき。


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究極のプライベート空間。


夕飯を終えてテントの中でゴロゴロしていると、なにやら「カポカポ」という音が聞こえてきました。重量感のあるその音たちはゆっくりと移動していて、テントのかなり近くまで来ている様子です。そーっと外をのぞいてみると・・!


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なるほど、きみたち来たのね!


今いるテンバはもうこのルートの半分まで来ているので、私も1泊で明日下ることになりそうです。
翌朝は今まで通りの感じで起きて、またカレーヌードルを食べて出発しました。


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おっはよー!


余った食料の消費もしたいのでお昼ご飯用にα米も作り、ポタージュごま塩ご飯にしました。


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お先にー。またねー!


今日は標高5050mの峠までまず200m強の登りです。トレイルが少しずつわかりにくくなってきていて、ケルンを遠望しながらゆっくりと進みました。


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峠はガレ歩き。


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峠を越えると、はるか下にcojup谷が見えてきました。

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ここで少し休憩してケルンを辿り始めますが、すぐに明瞭な道が分からなくなってしまいます。この傾斜ならどこでも下れそうではあるものの、きっとどこかに踏み跡があるハズです。
しかし道は非常にわかりにくかったです。ほとんどを適当に下って、なんとなく谷に下りました。

渡渉点もとくにケルンがあるわけでなく、渡れそうなところを飛び石しました。

Cojup谷側のトレイルは上から見えていて、沢の対岸の斜面沿いにかなりしっかりとした道があるはずでした。とにかくその道に上がってしまいさえすればあとは迷うところはナシです。
適当に歩けそうなところを上がって、その道に出ました。


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やはりかなり道幅のある未舗装の車道でした。あとはこれをひたすら下るだけでしょう。


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またのどかな景色が続く。


歩き始めてから1時間半ほどして、ゴーーという音が近付いてきました。振り返るとやはり車が二台、コチラに向かってきています。白いRV車とトレーラー。このトレイルの奥には建物があったので、そこから来たものと思われます。


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するとそのうちの1台、白いRVの後部座席の窓から、見たことのある女性が顔をのぞかせました。今朝テンバで別れたあのエクアドル女性でした!

長い髪をなびかせて
「あなたも乗ってくー?」
とか言ってます。え、どういうこと?あなたの車なの?


そうこうしているうちに車は走り去って行きました。どういうアレなんでしょう・・。車を予めいれていたんでしょうか。トレッキング慣れしてそうだったし、エクアドルからなら自家用車でも来られそうですね。

つまり彼らのQuilcayhuanca-Cojupは峠越えして終了ってことなのね・・・


彼らを見送って少し歩くとお腹も空いてきました。11時半を回っています。ここらでお弁当の時間としましょう。

何もかもがマイペース。気ままなお散歩。自由です!


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最後はやっぱりアブの応酬。


Cojup谷を下っていくと、最終的にまたNPのゲートを通過します。ここにもおじさんがいて、「日本人?ひとり?いいね」と笑っていました。

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ゲートを出たあとは二股を左へ進み、colectivoに拾ってもらえる場所まで舗装道を歩いていきます。でもPitecの登山口まで戻る必要はありません。途中でPitecへと向かう道にぶつかるので、その交差点で待っていれば、いずれcolectivoがそこを通ります。最終は14時か15時くらいと聞いていました。ギリ間に合いそうです。


その交差点には13時過ぎころ着きました。残り少なくなった水を飲みながら、炎天下で待ちぼうけです。

本当に通るのかちょっと心配になってきたころ、colectivoはやってきました。ちょうど14時くらいでした。


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手を挙げて車を止め乗車、無事Huarazへと帰りました。


高峰登山前の順化にもよく使われるというこのトレイル。雄大な景色を静かに楽しむことが出来ます。Huarazで時間が余ったら、是非歩いてみてください!

2019/08/12 アルパマヨ 登山記録 〜 下山とCarazでの日々〜 2019 ペルー旅行記その9 〜 12/08/2019 El descanso en Caraz.

ロバと馬の鳴き声に包まれて眠ったかと思ったら、ロバと馬の鳴き声で目が覚めた。
時刻は朝4時。まだ眠いけどもう起きて準備しよう。


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これ病みつきになってません?


起き上がってみると、足全体が猛烈な筋肉痛だ。こんなことはこの7日間で一度もなかった。昨日の下山がよほどこたえたらしい。更には足の裏まで筋肉痛になっている。
荷物の重さ的に、このトレランシューズでは無理があるなと途中から気付いていた。とくにガレ場など、靴底がしなってしまい歩きにくい場面は多々あった。


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標高3900mには順化した様子(笑)。


朝ごはんはミルクティーのみで5時半に歩き始めた。
荷物は相変わらず重いとはいえ、もう急ぐ必要はない。行きにほぼ景色を見ず通り過ぎてしまったサンタクルストレイルを出来るだけ楽しみながら歩いた。


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オアシスがずっと続く。岩に生えたコケも南米風味。


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どこまでもオアシス。


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仔馬を隠そうとする親馬(笑)。



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野生なのか家畜なのかはもうどうでもいいね!


途中で犬がついてきた。


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同じく野生なのか飼われているのかは謎。


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勝手についてくるのでいつぞやのビーグル犬を思い出し、"六郎"と名付けて仲間にしてやった(笑)。


トレッカーで賑わう懐かしのllamacorralには9時到着。ポーターっぽい人たちに”¡Hola!” 、“¡Hola!”とアピるものの、誰一人として"ロバ使うかい?"とは言ってくれない(笑)。


事前にとある友人から、どうやら"現地ではスペイン語すら通じないかも"と聞いていたので、それって「"Quechua"語のことかー!」(インカ時代の公用語で、今もSierra(山岳地域)の人々が使っている言語)と思い、挨拶くらいは調べていた。
しかし今回の登山中、スペイン語は必要でもケチュア語に遭遇する場面は一度もなかったので助かった。


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このくらいの時間帯になるともう谷は灼熱!街が見えてきてホッとする。


無事12時半くらいには登山口Cashapampaに到着した。さすがに下りは早かった。行きに無人で素通りしたNPのキオスクにはこの日ちゃんとおじさんがいた。Huarazで買ったチケットを見せた。


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“¿Puedo tomar fotos?” (写真撮っていい?)と聞くとみんな快くオーケーしてくれる。


一応聞いてみたらやはりcolectivoの最終は14時だそうだ。


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お疲れ様ー!最後の気力を振り絞って取り出した自撮り棒!!


売店がある広場へ行くと、ちょうどcolectivoが停まっていた。そして昨日おもてなししてくれたトレッキングガイドのおじさんも何故か居た(笑)。


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彼は「彼女、めっちゃでっかい荷物背負って、もう暗くなるのにまだ歩いて行こうとするし、夕食に誘ったらテント2分でたてるんだもん、ビックリしたよ!」と盛り盛りでみんなを笑わせていた。


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アルパマヨのイラストが可愛い。このイケスには何故か魚がいっぱい!


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ニューヨーカーやらオーストラリア人やらの世界中を旅する人々の"るつぼ"に混じってcolectivo乗車。こうしてアルパマヨ登山は終了した。

みんな人生楽しんでて最高だね!


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お世話になりました!¡Hasta luego!


14時過ぎくらいにCarazの街に着いた。Huarazの70km北にあり、Corderrilla Blanca登山の玄関口。行きは colectivoの乗り継ぎでモトタクシーに連れ去られたため、その地をほぼ踏むことなくして通り過ぎた街だ。


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街の中心地"プラサデアルマス"を通り過ぎ・・


「冷たくないシャワーを浴びたい」一心から、ホステルやドミトリーでなくホテルを求めて歩いていたところ、呼び込みのおっさんに声をかけられた。「ハイハイ怪しい怪しい」とあしらいながら歩いていたら、彼が案内するのは一度泊まろうとして調べたこともあった"Patrick’s Adventure"というホステルだった。荷物も重かったし、セキュリティもしっかりしてそうだったので「ならここでいっか」と決めてしまった。

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構って欲しくて寄ってくる中型犬と敵意むき出しで吠え立ててくる小型犬がいた。宿は4回建くらいで眺めも最高!


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可愛らしい宿。シャワーは30分くらい粘っていたらお湯になった。感激!
マイカップを失ったので今や大事な唯一の食器となったα米の袋を洗って乾かす。


wifiもサクサクで、英語が通じない以外はとても快適な宿だった。

これからとりあえず2泊ここで休養して、その間に次なるプランを練る。
10泊+予備日のつもりで食料燃料と日程を組んでいたのが計7日で終わってしまったため、装備的にも日数的にもまだ最長3泊4日くらいで何かする余裕があるからだ。

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めちゃ余った。とくに行動食・・


同時にCarazの観光も。日用品はMercado(メルカド)と呼ばれるマーケットで調達。

水650ml、s/1(1ソル=33円)。水道水は飲めないので毎晩2本ずつくらい購入。
ほかにも1回使い切りのシャンプーリンス試供品セットが20円くらい(日本だとたいてい100円)で売っていたり。

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「値切る」をやりたかったのと、シューズが砂過ぎてサンダルが欲しかったのとでお買い物チャレンジ!

ビーサン言い値s/15→s/12になった。けど正直もっと値切れたと思う・・。


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ペルー 上陸後初のアルコール!ビールも飲んだー!


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メルカドで調達したある日の朝ごはん。巨大なパン(スペイン語でもpan)s/1、謎のメロンのような果物60センティモス(20円!)、チチャロン(豚の皮のカリカリ、バリ硬もといハリガネ。これもチチャロン)s/2.5。


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Helado(アイス)!ペルー人はアイス好き??なのかアイス屋さんHeladeríaは沢山ある。聞いたことのないフレーバーが沢山あって楽しい。


のんびりしていていい街だけど、やっぱりHuarazの方が居心地がいいな。


本当は、もう一度白い峰に登りたかった。しかし色々調べていたら、Piscoという技術的にさほど難しくない山でさえ"Alpine clubカード"がなければガイドレスは無理などと書いてある。入山口近くでとめられると。(※後日確認したところ「その必要はなし。ガイドレスで登山可能」とWilder談)


それならトレッカーの"振り"をしていけばどうか?アタックザックにアックス含め装備を全て外付けなしでパッキングしてみる。明らかに怪しいけど何とか収まるな(笑)。

とかやってみたり・・。


もう諦めて大人しくトレッキングかな・・。

と、インフォメーションに行ってみるけれど、Caraz発の2大人気トレイルは通常日帰り。
キャンプしたいな。かといってそのために時間を持て余すのもつまらないし。


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“Pony’s Expedition”。宿泊所兼ツアー施行、旅行者情報提供所。英語通じるけどあんまり感じ良くなかった・・。


むしろHuarazに戻っちゃった方が選択肢あるのかなあ・・。


行き詰まってWilderに聞いてみた。するとHuaraz発の、3日くらいの行程のおススメルートがあるという!

その名も、

“Quilcayhuanca-Cojup circuit”!

な、長い!
スペイン語読みすると・・キルカイウァンカ-コフップ??

ググってみたらツアーの情報がいろいろ出てきた。
なるほど、峠をこえて2つの沢をめぐるround tripのようだ。たしかに楽しそう!


8/15に出発することとし、8/14にCarazからHuarazへ戻ることにした。


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定食屋さんのランチは、どこも大抵、値段の決まった”menú”と呼ばれるスープとメインと飲み物のセット1択のみ。


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メインは日替わりで数種類から選べる。しかし紙のメニューの用意がないことが多く、口頭で聞かれるためスペイン語初心者にはハイレベルだ(笑)。当然知っている単語しか聞こえてこないが、それだと毎度同じものしか食べられないので、ドキドキしながら聞いたことのないメニューを選ぶ(笑)。
店の前にはブラックボードが出ていることが多いので、事前にそれを見て決めておくのが正解ムーブだ。


Carazの宿を出る前夜、突如として英語を話すおばさんが現れた。明日チェックアウトなので何時に出るか確認しに来たらしい。Huarazに戻ると言うと、そのおばさん、麗しのArtesonrajuの麓にあり大人気の湖であるParon湖のことを指して、“ぱろん!ぱろん!行かないの?もったいない!行ったことある?絶対行くべき!え、行ったの?行ってないでしょ?絶対行くべき!"とものすごい勢いで推してきた。パロン推しなんですねww


本当に行かなくていいか心配になってくる剣幕だったけど、どうせ観光地だし。Jatuncochaも充分綺麗だったし。ま、またArtesonraju登りに来るからその時でいいや。


8/14、朝。アルパマヨの疲労もすっかり癒えて気分爽快!もうすっかり慣れっこのcolectivoに乗りHuarazへ向け出発した。久しぶりのHuarazの街への帰還と、また次なるトレッキングとに心躍らせながら・・。


〜アルパマヨ登山記録2019完結!〜

2019/08/11 アルパマヨ 登山記録 〜 2019 ペルー旅行記その8 〜 11/08/2019 ¡Vamos a bajar!

4時半起床。
さあ、降りましょう。
用を足しに表へ出ると、南西壁の上の方にヘッドライトが光っていた。
体調は問題なし。起きて炊事などしてから測定すると、SpO2は80台前半だった。
ま、もうどうでもいいや。
ゆっくり支度して7時に下山を開始した。

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今日どこまで行けるか分からないが、BCまでは荷物1つで、BCからは前後ザックで降りることにする。


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アディオース!アルパマヨ!


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アディオ〜スみなさん!


まずは懸垂3回。

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細引きは絡みやすいのでその都度丁寧にスタフバッグへ仕舞う。


最後の屈曲したピッチでロープがひけなくなり、2度ほどプチ登り返し。

懸垂が終わる頃には9時を回っていた。
フレッシュな身体で、ひとり静かに作業が出来たので良かった。

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バーを1本食べて、ここからは歩き。雪はまだ硬く歩きやすい。クレバスも問題なく通過した。


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また新たなパーティが登ってくる。上から見下ろすとルートを横切るクレバスが見通せる。

例年Cordillera BlancaもHuayhuashも8月中は問題なく登れることが多く、9月に入っても登れるそうだ。本格的な雨季が始まるのは10月からという人もいた。


MCには10時半頃等到着。私が張っていて荷物をデポしたサイトには立派なテントがたっていた。

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危険地帯は通過。あとは頑張るだけか!


近づいてみると、現地ガイドとスタッフのテントで、ガイドだけは英語が話せた。どうもお客さんが具合悪くなってしまったらしく、予備日がもう無いから、明日はHCまで行けたとしても山を見るだけで降りるしかないという。


やはり6日の行程だそうだ。弾丸だなあ。
高いお金を払って高山病で登れなかったら悲しいだろう。ガイド登山も大変だ。


私の装備を見ると皆、「ソロなの?登ったの?」と聞いてくる。説明が面倒だから、山を知ってそうな人にはちゃんと答え、ただ興味本位っぽい人には「登ったよ」とだけ答えた。


MCのデポをまとめると、外付けを駆使しなければパッキング出来なくなった。

MCからBCまでの600mの下りは砂砂のザレ道。ザックの重みで後ろ体重なのでよく滑る。スピードも出せず、ブレーキを利かせて降り続けたから疲れた。たぶんこれが原因となって、下山後はひどい筋肉痛が待っていた。


13時少し前にBCに到着。荷物を放り出してデポを取りに行った。袋は無事だった。ここまできたら湯を沸かしてリフィルヌードルを食べると、それだけを楽しみに歩いてきた(笑)。


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この掘っ建て小屋でビールを売っているというが本当だろうか?


パッキングも2つ体制にするのでいったん全ての荷物を広げる。デポの中身を整理していると、あれ?何かがおかしいな、と気付く。ゴミ袋にしていたジップロックの口があいている。空気を抜いて閉めた記憶がある。
そして、なくなっているものがあることに気づいた。そういえばお気に入りの折りたたみのカップは?あれ、エアマットは??


アルパマヨBase Campにはトレッキングの人も含め不特定多数がやってくる。
やはり盗られて本当に困るものは置いて行かず正解だった(ソーラーパネルとか、MCまであげていなかったら盗られていたかも)。


どん兵衛を美味しく頂いてからパッキングを済ませると14時過ぎくらいだった。今日ここに泊まるのはまだもったいない。もうちょっと降りよう。


前後ザックで軽快に下り、サンタクルストレイルとの合流点には15時半着。

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クマかと思ってドキッとした。そこ、道ね。


カタディン浄水器を取り出して清流を頂く。かーっ美味い!というかやっと自撮り棒登場!orz

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アンデスの天然水!サイコー!


その後砂浜でアブの大群に襲われながら、どうせ歩くだけだからllamacorral(初日のキャンプ地)を目指してみるかー、と思い始める。サンタクルストレイルはオアシスをずっと歩く感じなので、寝ようと思えばどこでも寝られる安心設計。


そんなこんなで17時頃、大きな湖であるJatuncochaの横を通り過ぎた。なにやらテントが沢山あって、白人たちが楽しそうにしている。おーおー、いいねえ。楽しそうだねぇ。
そしてllamacorralにつくのは19時半くらいかな?
なんて思いつつ通り過ぎようとしていたら、ペルー人のおじさんがこちらに手を振っていた。


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私も振り返した。
知り合い?違った(笑)。
彼は英語が話せた。ガイドだ。

「どこまで行くの?」
「えーっと、ジャマコラール?」
「もう暗くなるよ!」
「そだね」
「ココこんなに気持ちがいいのに!ココに泊まればいいのに」
「そだねー」
「絶対それがいいよ。よければお茶やスープもあるよ?」
「泊まります!ココに決めた!!」

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というわけで、今度はトレッキングガイドのおっちゃんから施しを受けることになったのでした(笑)。


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急いでテントを張り、キッチンテントへ向かうと、コックさんがにゅうめんみたいなものの入ったスープと甘いお茶、ワンタンの皮を揚げたやつ(tequeño)を恵んでくれました。ありがたやー!

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無銭飲食が板についてきた!?


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ソパ!あったまる〜


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これは何?ってきいたら、「わんたん」って言われてビックリした(笑)。


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水を取りに行ったらさっきのおじさん食器洗ってた。


何故こんなにもみな親切なのだろう。チップとか渡すべきだったのかしら・・。文化がわからない。。


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サンタクルストレイルは常に足元注意!テント張る場所も注意!


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コッチはただのおばけ松ぼっくり。


今夜これで終わったじゃん!めっちゃラッキー!と思いながらテントで歯を磨いていると、さきほどのおじさんがまた声をかけてくれました。


「スープ美味しかった?いまから焚火やるからジョインしなよ!」

マジスカー!


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サンタクルストレイルはどこでも焚火が出来るわけではないようで、このサイトだから出来たそうだ。トレッキングツアーの他のお客さんたちに混じって焚火の周りに腰かけた。するとまたスープが出てきた。それで終わりかと思いきや、なんとロモサルタード(牛肉と玉ねぎトマトなどを炒めたMust Tryのペルー料理)まで出てきた!なんて豪華なの!


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タンパク質だーい!


お客さんたちはカナダ人とフランス人のごちゃ混ぜだったようだが、盛り上がってくるとフランス語が飛び交い始めた。いよいよわけが分からなくなってきたところで、先に寝た(笑)。


ここまできたら明日は街に降りたい。
colectivoの最終がたぶん14時くらい。ここを何時に出ればいいかな?
でも早起きは頑張りたくなかった。バスに間に合わなくても登山口ビバークすればいっか。
もうここから先はどうにでもなる。
ひさびさに寒さに震えない一夜を過ごした。


2019/08/10 アルパマヨ 登山記録 〜Summit Day 〜2019 ペルー旅行記その7 〜 10/08/2019 Cumbre del Alpamayo 5947m

Summit Day

23:45に目覚ましをかけていたけれど、寒くて寝ていられなかった。23:30には起き出した。
夜間もAZAのせいかトイレに行きすぎだった。そのおかげか否か、高度障害は出ていない。たぶん多少無理のある今回の行程を考えれば、それだけで充分過ぎる位だ。

スープご飯とミルクティーの朝食を済ませてペコマから天気情報を聞き(快晴ほぼ無風!)、1:17頃歩き始めた。

背中のザックには細引き60mと60mダブルロープ1本、スクリュー5本、テルモス1L。ここまでの残置の感じからスノーバーは1本に減らした。でも懸垂回収でトラブったりすると嫌だから、捨て縄は持ってきた8本、全部持った。バーは5本、1000kcal。

それ以外のギアは全て腰についてるし、アイゼンもつけちゃってるし、これまでと比べるとだいぶ軽く感じる。昨日の疲労もそれほど残っていない様だ。
寒くてビレイジャケットは脱げないけれど、動き続けていればなんとかなりそうだ。

で結局、自撮り棒はテントに残置・・(笑)。

BCは下から見れば、巨大アイスフォールの上にちょこんと広がっている平らな雪原だ。昨日、ルート取り付きへと下る降り口は確認してあった。

Wilderたちはもう出た様子。となりのパーティはテントの外に集合しているがまだ準備中と見える。

アプローチで遠くから見ていたデブリ帯を通過したとき、デブリの巨大さにたじろいだ。右上の斜面が崩れてここまで流れてきた跡だ。暗いからより恐ろしく見えるのだろう。足早に通過した。怖い怖い。

取り付きに近づくにつれ、Wilder/Yさんペアとの距離も縮まり、後続も迫ってきた。最後は固く締まった急な雪壁の登り。やはり息がきれてペースが落ちた。

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取り付きには3、4人が立てるほどのスペースがあったが、そこにWilder、Yさん、私の順番で滑り込んだ。後続はその下の雪壁に支点を作って待つことになった。

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後続のガイドはかなり煽ってくる感がある。先頭の2人が出たあとに出るのがいいか。それともロープを出さないなら、Yさんが出る前に出てしまったほうが良いのか?


様子を見つつ、Wilderのリード開始後少しして、登り始めることにした。
やはり遠くから見たベルクシュルントのところは壁と離れていた。取り付く先の壁は部分的にしっかりした氷壁。アックスをきめたらそちらへ軽く飛び移る形になる。アックスはバチ効き。でも足元は奈落の底。スクリューをきめて、ワンポイント死なない程度の確保を試みた。


その間にYさんがフォローを開始した。待たせてしまっている。やはりYさんの後の方が良かったか・・。

核心と思われるそのパートを抜けると、はるか遠く暗闇へと続く雪壁があらわれた。ひたすらダブルアックス。途中、残置スノーバーでYさんをビレイ中のWilderの横を通り過ぎた。しばし休憩したかったけどスペースもないし、そのまま通過する。


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“¿Cómo estás? だったか、”How are you?”だったか忘れたけど、Wilderが声をかけてくる。"Very good.”とかなんとか朝の挨拶を交わして通り過ぎた。


息が上がらないペースで登っているが、ふくらはぎの乳酸感が強い。やはりSpO2は低いのだろう。だが、昨日までの感覚からすれば、硬雪にスノーバーを打ち込んで支点を作るだけでも一苦労。このままたぶん60m上にはあるであろう残置まで行ってしまった方が楽なのは明らかだ。


と、ほどなくして猛烈な勢いでWilderが上がってきた。くそー、さすが速いな、と悔し紛れに関心する。
まあ現地ガイドと速さを競い合っても仕方ない。そこにありがたくスノーバーの残置があったのでしばしレストすることにする。


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すると「そこで止まって」と彼が言っている。「ああ、大丈夫。ちょっと休みたかったからここで止まる」と言うと、私を追い越しざまに、珍しく息切れした途切れ途切れの感じで彼は言った。


「Chiaki-san、Yさんの、後ろから来なさい。それで、あなたの、安全のために、ロープを繋ぎなさい」


その刹那、記憶の中の複数の場面や思考が一気に去来した。
その場では相槌をうつ位しか出来ない一瞬のうちに、彼はまたザクザクと登って行ってしまった。


ロープ繋げって言ったかな。


ソロで登るなっていう、あのことかな?


でもつい今しがた楽しげに挨拶を交わしたときの彼とは雰囲気が明らかに変わっていた。


現地ガイドと揉めるのは一番良くない。日本人の印象も私のせいで悪くなったら不本意だ。何より、私はその時点ですでにWilderという人の人柄を信頼していた。


下からフォローを開始したYさんが上がってきた。とりあえずここでYさんが行き過ぎるのを待とう。オーダー的にもその方が良さそうだ。かなり間を詰めてくる後続のガイドが気になるが、まあお客さん自体はそれほど早くないようだしいいだろう・・。


Yさんの通過と同時に私も登り出す。


次の支点でビレイしていたWilderと合流。すると彼は言った。


「そのロープをください、彼と繋ぐから。4mくらいあれば安全。」


やっぱり、聞き違いではなかったのか・・・


私は反論しなかった。即OKと答えた。今では、その判断は正しかったと思える。


そこから先は怒涛のクライミングだった。
ひたすらダブルアックス。分かっちゃいたけど、モノポイントアイゼンのふくらはぎはパンプ。でも彼らとペースを合わせるしかない。足を引っ張ってはいけない。


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ちなみに、バツーラと合わせるとキックしてるうちに外れることが判明した恐ろしいスティンガー。シャモニで新調したダートはアラスカであっという間に行方不明となってしまったため、今回また引っ張り出してくることになった。メーカーに問い合わせたところ、ナットで留めるなどして対処するしかない様だったが、DIYが苦手だし重くなるしで放置していたのだ。今回、解決策として、プレートのところをダクトテープでガチガチに巻いて使ってみた。
これがとても調子が良かった。


もちろん、何やってんだろ、私、なんて考えも浮かんだ。はぁはぁしながら。"誰もいないときに登る"・・。どうしても単独で完登したかったなら、こんな混戦状況で登ろうとすること自体間違いだったのだろうか?でも、その"ルール"さえなければ、遅いパーティがいて順番待ちをくらったり、そうでなければ追い越しをしたりしてもらったり、そういうのは良くある話だ。
こと、このような人気ルートなら。


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ガンガン登るWilder。


とにもかくにも高度はグングン上がった。しかしビレイの時間があるのもあって、いくら頑張って登っても身体の震えが止まらない。おそらくこの激しいシバリングが最も私の体力を奪う原因となった。


後続のガイドとは度々ビレイ点で一緒になった。
"君たち名前は?"なんて聞かれたりしたが、独りで登っていたかと思いきや急にWilderたちと登り始めたこの奇妙な状況を、彼はどう思っているのだろう?


山頂まであと3、4ピッチを残したところで、やっと夜が明けてきた。


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昇ったねー!と沸き立つ。


やったー、太陽カモン!て思ったけど、私はただのこの時までずっと勘違いをしていた。


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キタラフ北壁に日が当たっている・・・。


って、当たり前じゃん!ここは南半球!!


しかもこの壁は南西向きだから午前中はほぼ日陰ですorz
当たり前じゃん・・そもそも8月なのにいま冬だし、ここ(笑)。
やっぱり酸素薄くてボケてる?(違うか)


頂上稜線上に出たのは8時頃だった。ここから15mくらい、スノーマッシュルームを登って終了。

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下から見てよくわからなかった最上部は、右から東側を回り込んで登るラインになっていた。ここら辺は年によって雪の形が変わるから、ラインも微妙に変わるらしい。
ちゃんと状態を見て登らないと、この最後のひと登りで壁が崩れて死んでいる人もいる。


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空飛ぶYさん!


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空飛ぶYさんその2!


08:30、頂上に立った。


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5947m。


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稜線上、ここより高いところはない。


快晴。雲海と見渡す限りの青空。天気のことはよくわからないが、朝の雲海は大気が安定している証拠と聞く。とにかく凄い眺めなのは間違いない!


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でも正直なところ、この時の私の心の中には濃い靄が立ち込めていた。入山前から始まり、入山後の日々を振り返る。そして今日、そして今。
この登山の意味はなんだろう。


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Wilderにもだが、Yさんにも申し訳ない。いやむしろいきなり巻き込まれたYさんこそが被害者だ。


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BCから見えていたのは東壁側。Arhuaycochaがよく見える。


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麗しのArtesonrajuさまも間近。


とにもかくにも下山を開始。下降も結局ロープを借りた。Wilderは降りるとロープは引かず「◯×△〜!」ってなにかコールするだけだった。Yさんによれば、日本語で「どうぞ〜!」と言っているらしかった(笑)。

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何ピッチもの懸垂下降。


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アバラコフやらスノーバー。60mおきと言わずそこかしこにある。


取り付きまで降りてきた。すでにモナカになっているところもあって降りずらかった。Wilderはそこら辺分かりきっているようで降りやすいところをサクサク下ってた。


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まだ登っているパーティもいる。おそらく彼らはガイドレスのフランス人たちで、この日登頂できず、翌日再チャレンジのためHCに留まったパーティだ。


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これはいわゆる空元気というやつ(笑)。ほんとはヘトヘト。


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下降終了後ほどなくして壁はガスに包まれた。


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BCへの登り返しは一苦労だった。登攀中も下降中もずっとシバリングが止まらなかったせいか疲労でぐったりしていた。いやな寒気もした。ロープをつないでからは、持ってきた1Lのお湯を飲むタイミングもなく、脱水気味でもあった。ゆっくりゆっくり、一歩一歩を進めた。疲労困憊の体でBCに帰着した。


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それでまた、お茶をいただいた(笑)。
Wilder、Yさん、ありがとう!!


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彼らはこの日下ると言っていて、スタッフがテキパキと下山準備を開始していた。私は当然無理だ。今、すでに12時。暗くなるまでは6時間。少なくとも今から数時間は休憩しないと動き出せないし、荷物も昨日までの倍になる。


このような高所に意味もなく留まるのはあまり良くないとはいえ、今日下ったら事故るな、と思った。


後続のガイドパーティも下山してきた。この日登れたパーティはもれなく今日中に降り始めるようだった。


ガイドレスのフレンチパーティだけが、ここに残ると言った。独りぼっちにならずに済んで少し嬉しかった。ちなみに彼らはキッチンスタッフを雇っている。いい匂いがすでに漂ってきていた。


昼食を済ませたYさんたちは下山していった。私は異様な疲労感で、灼熱のテントのなかに転がっていた。呼吸以外はなにも頑張らずに。
呼吸だけは頑張らないとだめだった。モニター上は、ひどい時でSpO2:60台前半まで低下した。ここで気を抜いて明日ひどい高山病になっても困る。下降ははじめ懸垂もあるし、クレバスの通過もあるから気は抜けない。


数時間、ミルクティーを飲んだり、寝たり起きたりを繰り返して、15時半を過ぎると体調も少し回復してきた。


そこでやっと、今日1日を振り返ることができた。


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北壁側は見ていないけど、南西壁は充分過ぎるくらい美しいよ!


下山後、お茶をもらいながら、私はWilderに聞いた。


「ところで・・ひとつ聞きたいんだけど、なぜあの時、ロープを結べと言ったの?」

すると彼は少し表情を曇らせて答えた。

「後ろのパーティのガイド、彼が言ってきた。"彼女は何をやっている?ソロだぞ。降ろすべきだ"と。私はガイドとしての立場がある。ああするしかなかった」


私は、する必要のない質問をしてしまったかな、と一瞬思った。でも想像の中で自分の良いように解釈するだけでは、きっと何年たっても納得できない登頂となってしまっただろう。


私は答えた。


「なるほど、分かった。よくわかりました。本当にありがとう」


この言葉しかないはずだ。


彼はYさんを安全に山頂に立たせるというとても大事な仕事中だった。このビジネスにおいて正念場だった。それなのに、得体の知れない小娘を、大事なクライアントと繋いでくれ、登らせてくれたのだ。「だから言っただろ。降りてくれ」って一言言えばそれで済んだはずなのに。


まだぼーっとする頭で、その時のことを反芻した。ほんの少しでも「リードさせて」とか言おうと思った瞬間もあった自分を恥じた。そして、アルパマヨの美しい姿を数枚しかまだ写真に収めていないことに気づき、テントを出た。もっと写真を撮らなきゃ、もっとこの壁をよく見なきゃ。


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本当に美しいよ!


ほどなくして、また新たなパーティが2つほど、HCに上がってきてまたサイトが賑やかになった。


呼吸だけを頑張りながら、それ以外はなんにもしないでただただ壁を眺めていた。


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やっと水を作る気力だけ沸いた(笑)。


その後もテントの中で悶々としていた。
食料はなかなか食べられないせいでまだ残っている。燃料もたぶんもつ。天気も、ここから多少崩れる情報はあるが、明日の午後から風が強まる程度のことだ。もう1泊粘ることは出来なくはない。つまり、明日再チャレンジも不可能ではない。
私はこれでこの登山を終わりにして降りて良いのだろうか?


ぼーっとする頭で考えた。悶々とした。
でも、明日また0時に起きてアタック、行けるのか、自分。ペコマにも心配をかけるだろう。否、それよりやれるのかどうかだ。冷静に考えて、やれるのか、自分。どうなんだ。


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それにしてもあそこまで寒かったのはなぜか?順化不良?カロリー不足?気温に比して薄着しすぎだったとは思わないんだけどなぁ・・


私はたぶん無理があるという結論に、はじめから傾いていた。心も体も弱かった。
事故るだろう。5割くらいの確率で。

降りよう、明日。


粉スープを使って白飯を食べやすくする作戦を、残りのスープを使い果たして実行した。食べられる。それだけでホッとする。食べてくれないと身体は回復しない。


19時くらいまでは頑張って起きていたけど、耐えられなくなって寝た。明日も早起きして、ゆっくりかつ安全に下降しよう。

プロフィール

chippe

Author:chippe


肉好きchippeのブログへようこそ!
2006年10月 山歩きを始める。
2007年9月 クライミングを始める。
山岳同人「青鬼」所属。
「メラメラガールズ」所属。
国際認定山岳医。
「カリマーインターナショナル」アンバサダークライマー。
現在は無職、旅人。
旦那さんはpecoma。

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