2024/04/23
受傷後3ヶ月。
1月26日、Winter Climbers Meetingの前夜にちょっとしたハプニングがありました。今となっては気楽な気持ちで語れますが、その時は一時パニックに陥っていたと思います。
近況報告その1:3/18〜22で名張に行きました。イカサマ師登れなかったのでリベンジします。
その日は栃木の足尾で開催されるWCMに夫婦そろって参加するため、仕事がおわったら家族みんなでまず山梨の自宅から東京のペコマ実家へ移動する予定でした。
仕事が長引きそうだったので子供の保育園のお迎えをペコマにお願いし、定時を数十分ほど過ぎて仕事を終えてから帰宅。すると、脱衣所で血まみれで泣き叫ぶ我が子と困り果てた顔をした夫の姿がありました・・・。え?なにこれ!
「何があったの!?」と聞くと、外階段をおりているときに繋いでいた手がすっぽ抜け、そのまま顔から転げ落ちて階段の角におでこを打ちつけたらしいのです。
容易に想像がつきました。そのころちょっとイケイケだった我が子は、建物の2階にある保育園の入り口から地上までのコンクリの外階段を、段差が大きいのに前向きで降りたがり、私の手を引っ張ってぐいぐいいこうとするので、怖くて半身でスポットしながら降りるという感じでした。
(どーーせテキトーーーに繋いでたんでしょう・・!💢)
とぶちぎれそうになるのを必死に抑え(られていたかは記憶がない)、「どうしよう!どうしよう!」と困惑。
とりあえずお風呂場で、そのころレンタルをはじめたReFaファインバブルのミストモードで必死に傷を洗いながら、「状況からして絶対ナート(縫合処置)必要だよなあ・・」と途方に暮れました。
近況報告その2:登山ガイドステージ2検定が全て修了しました。近々、ガイドとしても活動を開始します。先日はクラブツーリズムさんの「あるく春の大説明会」にて山岳医として講演しました。
私は形成外科が専門なので、1歳〜3歳くらいの小さい子の顔の傷を救急外来で縫うという場面がこれまでも幾度もありました。とくにおでこ、まゆ、あごを打ちつけた傷は、皮膚や筋肉が薄くてそのすぐ下に骨があるので、骨との間で激しく挟まれた皮膚と筋肉がいっぺんにパカッといってしまい、大抵が縫合処置を必要とする傷になります。
ぶっちゃけ、治るかどうかでいえば、縫わなくても治ります。顔は血流豊富で感染にも強いし、時間はかかるけど傷はそのうち閉じます。でも、ぱかっといっている傷はそうやって治すと目立つ傷跡が残ります。多くの親御さんは「我が子の顔に傷が残らないようにして欲しい」と祈るような気持ちで救急外来を受診されますから、こどもさんの全身に負担がないよう、局所麻酔だけしてなるべく丁寧に縫合します。少しもじっとしてくれないこどもさんの傷との格闘がはじまります(笑)。
近況報告その3:北杜市での岩登りもシーズンインしました。
私が見た時点ではすでに傷の表面にべったりと血液が固着していて傷の状況がわからなかったので、夫に泣き叫ぶ我が子を抑えてもらいながらミストシャワーを当て続け、どうにか傷をきれいにしてやっとしっかり観察できる状態になりました。
案の定、ぱっくりいって骨膜が見えていました。創縁に多少挫滅はあるものの幸い汚染はほぼなし。傷の幅も1.5cm弱くらいでしたが、縫った方がいい傷ではありました。
すでに時間は18時近くで、もうすぐ私の勤め先にあるほくと診療所は閉まってしまいます。私は1月の時点ではまだほくと診療所での外来診療はしていませんでしたが、職員の方で数名手術を希望される方がいた関係で、たまたま形成外科用の手術器具と、中縫い用、外縫い用の針糸は在庫してある状況でした。
近況報告その4:野猿谷清掃イベントに初参加しました。イベント自体は今年で4度目だそうです。
多くのクライマーが集まり、オオモノ含めゴミたくさん集まりました。
地元の方々に振る舞っていただき、ほうとうや漬物などなどたらふくいただきました。野外ライブもありました!
しかし、小児の顔を縫いような細い糸はなく、一番細いので4-0モノスティンガー(吸収糸)と5-0黒ナイロンしかありませんでした。迷いました。縫わずにデュオアクティブとステリストリップを使って寄せる方法もあります。また、縫合するなら押さえつける人手が必要ですが、今大人は私と夫しかいません。
そしてもう金曜日の夜なので、病院は夜間休日帯に入ってしまいます。1年間勤務して最近やっと狭北地域(山梨県の北杜市周辺のエリア)の医療事情もわかってきたので、救急外来におねがいしても、私の納得いくような処置をしてもらえる確率はそう高くないでしょう。
今から甲府の病院まで行く?いや・・・それでもやはり夜間帯なので納得のいく治療が受けられるという保証はありません。そもそも傷跡を残したくないというのは私の気持ちで、男の子であるこの子自体はたとえ成長したあとにおでこにちょこっと傷があったとてどうでも良いことかも知れず、今のこの子にしたら縫われる方が嫌なことでしょうし、結局は私自身の親心が納得するかどうかが問題なのですね・・。
近況報告その5:北杜市も行楽シーズンとなりました。土日は観光客も増えてきました。
色々悩んだ挙句、とりあえず急いで服を着て、診療所に戻りました。幸い車で数分の距離です。診療時間終了ぎりぎりでしたがすべりこみ、スタッフさんに事情を説明して、局所麻酔薬、針糸、手術器具などなどを調達し、自宅に持ち帰りました。
まずはペコマと2人でなんとかしようと思いました。ペコマに抑えてもらって、私が縫います。それで無理そうならガーゼだけあてて東京へ移動し、おじいちゃんとおばあちゃんの手を借りようと思いました。
こどもさんの縫合をするときは「すまき」をします。
Mimiの"すまき"
暴れているうちに手が出てきてしまわないよう、バスタオルでしっかりとぐるぐる巻きです。その状態でさらに顔が動かないよう、ペコマにしっかり抑えてもらいます。
子供ははじめ泣いて暴れていましたが、局所麻酔が効いてしばらくすると暴れるのはおさまりました。ただ、「うー、うー、」と抗議するような声をだし、涙目で見つめられ続けながらの縫合処置でした。胸が痛み、すごいプレッシャーでした。
近況報告その6:毎年恒例(?)裏山(茅ヶ岳千本桜公園)でのお花見。今年ははじめて家族3人で行けました。
太すぎる4-0吸収糸で中縫いを1、2針、それで傷は閉じたので、あとはささっと太すぎる5-0ナイロンで少し挫滅した皮膚どうしをなるべく整えて終了。デュオアクティブを貼ってガーゼで圧迫。お夕飯を食べさせてから、無事東京へ移動できました。
もりもり。
これまでは勤めている病院に専用の器具があったのでそれを使っていましたが、ほくとで働くにあたり自費購入しました。嬉しくはないけど、早速の活躍でした。
階段を数段転げおちたようだったので、傷もですが一応意識レベルの変化は一晩中気にしていました。幸い元気で問題ありませんでした。
受傷後3ヶ月
というわけで、受傷から3ヶ月が経ちました。抜糸を終えたあともマイクロポアテープのテーピングを根気よく続けていましたが、最近自分で剥がしてしまうので諦めかけています。そして恐れていた事態が起きています。中を縫った4-0吸収糸が異物反応を起こしているようで「ぷくっ」と浮き出ています。
とりたい。
飛び出してくれればまたすまきにして抜糸してしまいたいのですが、まだ皮膚を突き破ってはきていないのでそのままにしています。小さい炎症反応でも長く続くとやはり傷跡が残るので、早く除去したいですが、すまきにしたときのあの恨めしそうな眼差しを思い返すとなかなか勇気が出ません。まさか自分の子供の縫合処置をすることになるとは、以前の自分には想像もつかないことでした。当事者になると親御さんの辛い気持ちがよく分かりますね・・。
今年4月から、ほくと診療所で外来診療をはじめさせていただきました。現在はこどもさんの傷を縫えるような細い糸も在庫しています。発熱外来、一般内科、一般皮膚科、形成外科診療をしています。お困りの際はお気軽に受診してください(^^)
↓イカサマ師奮闘記動画(笑)↓